本との関わりについて

タキコ

本との関わりについて

 私は小学校低学年から読書の習慣が始まりました。

 疎開先の母の実家から自宅に帰ることができたのは昭和23年の春でした。

 そのとき私は小学校2年生でした。まだ本を買う余裕など全くなく、それでも読みたい本が読めたのは、神戸の街に貸本屋が何軒かあったからです。私の旺盛な読書欲は貸本によって満たされていました。

 その頃に読んだものは主に漫画でした。手塚治虫氏の著書『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『海のトリトン』『ブラックジャック』『ジャングル大帝』、長谷川町子氏の『サザエさん』など。少し成長してから少女雑誌『ひまわり』や、女性誌の『それいゆ』、これらの雑誌は作家の挿絵が好きで、毎月楽しみにしていました。

 中学生になり、吉川英治氏の『宮本武蔵』、山岡荘八氏の『徳川家康』『伊達政宗』、源氏鶏太氏の『二十歳の設計』『新・三等重役』『坊ちゃん社員』など、かなり多くの読書を楽しみました。

 初めて自分の蔵書となったのは、クリスマスにプレゼントされた中原中也の詩集とコンサイスの英和辞典です。

 父の仕事は港に到着した船の検査官でしたので、職業柄英語が大切であることが身に染みていたのか、辞書をプレゼントしてくれたのでした。

 それと幼馴染の友人が、亀井勝一郎氏の『人生論』をプレゼントしてくれました。詩集と『人生論』は、まだ幼い私が読み解くには難しかったのですが、この2冊は後々私にとって大切な本になったのです。

 そして私の読書遍歴の中で、自身の理解能力をはるかに超える本に出会いました。それはドストエフスキー氏の『カラマーゾフの兄弟』と、五味川純平氏の『人間の條件』です。自分の理解の範疇を超えた、難解かつ読み応えある長いストーリーを闘志満々でクリアーしました。

 この五味川氏の『人間の條件』は、のちに私が成人してからの父とのいきさつに大きく関係する出来事と相成りました。五味川氏が作家になるまでの経歴と、父の過ごした人生が不思議なほど重なっていたことが、後年、再度読んだときにわかったのです。

 成人してからは仕事や家庭生活に追われて、読書に心が傾く時間が少なくなったと思います。家庭画報や主婦向け雑誌は、年初からの家計簿の付録があり、この年齢まで愛用し続けています。

 60歳を超えて起業してからは、仕事に関係している本ばかり購入するようになりました。健康に関する月刊誌や食事関係、介護保険の法令集などの本です。一般家庭の主婦に比べると、偏った蔵書を収納している本棚になっています。

 今はシニアグラスのおかげで本が簡単に読めることが喜びである一方、仕事関係の本に偏重している自覚はあります。それでも、どんなに忙しくても活字から離れることはないでしょう。

 最近の作家の本にも興味はあります。しかしながら介護職に専従していますので、仕事上必須である傾聴、見守り、指示に明け暮れている毎日。ですが、それはきっと今までの読書経験が生きている結果で、今後も貪欲に活字を求めていく人生だと思います。


2018年7月20日

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