第43話




「ソ〜ロ〜ン〜!ど・う・し・て、あのトラウマを思い出させるのかな〜!」

「仕方がありません。あのままではシエル様の生命に関わる危険性があったのですから。あの短時間でやるにはランダムでやった方が確実ですし、それに、幻惑の内容をランダムにした方がどちらかと言えば良いんです。他の術式は、負傷させたり、副作用を起こしたりするものが多く、全体でのランダムだとシエル様に傷をつけてしまう恐れがありましたので」


 ソロンは緊急時なのだ、仕方がないことなのだ、などと何度も言いながら説明をしたが、サラリとヤバいことを言っていた。


「・・・・・・ねぇ、ソロン、敢えて聞くわ。正直に答えてちょうだいね」

「え?いや、私は平民であり、シエル様の専属執事なので、シエル様のめいとあらば何でもお答えしますし、願いを叶えて差し上げますが?」

「ハァ〜、よく言うわ。今まで先のことを学びたいと言っても拒否したくせに・・・「いえ、それは皇帝陛下から止められて・・・」言い訳無用!「・・・ハイ・・・」」


 ソロンとシエルのやり取りは、皇城に出入りしている者王侯貴族やその子息令嬢達からすれば、もの凄くシュールな光景であった。何せ、執事であるソロンは時々、主従関係から見るとおかしな言動をするし、あるじであるシエルはそれを黙認しているどころか、楽しんでいるところもある。シエルにとって皇城の中は狭く、苦しいものだった。何故なら、皇位継承権などの問題があり、異母兄弟姉妹きょうだいの仲はあまり良くなかった。

 なので、皇城の中でよく話し相手などになっていたのは、実弟のアベルか、幼すぎるが故に現状、皇位継承争いには参加できず、かといって、他派閥の者と気軽に接触できない末の妹であるレネイか、シエルの母親であるノエルと昔から親しいと言う第一皇妃のマリーゴールド、そして母と同じようにシエルにも親しくしてくれた彼女の家族くらいであった。

 だからこそ、皆が皆、忘れていないだろうか?


「何で、無力化用以外の拘束術式を大量に保持セットしているのかしら?」

「「「(あ!そういえば、そのような事も言っていたな!)」」」


 そう、ソロンは先程こう発言したのだ。『他の術式は、負傷させたり、副作用を起こしたりするものが多い』と。つまり、『犯罪者や魔獣などの動きを封じるために使う拘束術式ならたくさん持っている』ということ。それが意味することは即ち、


「シエル様のいのちを狙う愚か者共がいないとは限りませんので、いつでも対処できるようにというのが一番の理由ですね」

「では、一番ではない理由は?」

「・・・・・・よくそういった捕縛依頼が来たり、城下でスリや窃盗などの犯罪行為をしている者を見かけるので、その確保用です。ちなみに、成人していない十五歳以下の者と成人していても肉付きが悪い者には、基本的に幻惑魔術か短距離転移魔法テレポートを、成人していて、多少手荒な真似をしても大丈夫な者には、殺さないが逃げられないくらいの拘束術式を、それぞれ分けて使っているのでご安心下さい」


 エルフィーも当然だというかのような態度を取っているが、アリア達は違った。

 特に最後の部分なんかは『そういうことが言いたいんじゃない(のよ/んだ/んだぞ)!』とツッコミを入れたい程であった。


「ならば、すぐに発動できる最強の拘束術式を最後に実践してもらえる?」

「別に構いませんが・・・・・・、実践するのは悪い方の最強ですか?それとも強い方の最強ですか、エルフィー先生?」

「え〜と、両方可?出来るのであればでいいけど」

「一応出来ますよ。一日3回分は常にストックしていましたので」


 エルフィーは久々にソロンの術式を見たいと思った。それも入学式のときのような事前に仕掛けておくタイプのものではなく、すぐに出せるものを。

 それに対するソロンの解答は『ストックしていた魔術の行使』だった。一応、事前に仕込んでいたものではなく、毎日3回ストックしていたものなので問題はない。正確に言うならば、ので、念の為にと今まで溜めてきた魔術である。


「そう、ならば行きましょうか。【世界最巧】が行使する魔術の一端を見るために」


 その声はどこか楽しそうでも、嬉しそうでもあった。











 しかし、後に知ることになる。【世界最巧】の力を持ってしても、一日3回までしかストックできない理由を。



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(あとがき)


 さて、困った。人名をどうしようか・・・・・・。

 日系の名前なら幾らでも書けそうな気がするが、それ以外の名前はな〜。

 (人名を考えることが)難しい!ガチ目にHELP ME!

 主にイギリスやフランスなど王侯貴族がいた国の名前が載っているサイトでも何でも良いので、助けて下さい!・・・・・・無計画で進めていたのが仇となった・・・・・・

 自分の方でも探してみますが、今までは思いついた名前を使っていたので、恐らく執筆に追いつけなくなるでしょう。そうすると第二編か、第三編辺りで休載の危機に瀕します。どうか、皆様の御智慧をお貸しいただけないでしょうか?


 ・・・・・・カタカナの名前をたくさん使えている作家さん達って毎回、『凄いな〜』と驚き尊敬していたのですが、改めて痛感しました。カタカナの名前を多用できる作家さん達は本当にスゲェ〜な〜!・・・・・・

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