第42話
「一番の耐久力を持っている第十訓練場だって、神竜が放つ『
エルフィーは自信なさげにそう言うが、神竜とは文字通り神の
「あれ〜、みんなどうしたの?そんなに黙っちゃって?」
「はぁ〜、あれを知らない者達からすれば、はっきり言って困惑しますよ。まぁ、知らないのは無理もない話なのですが・・・・・・」
「え?あ〜、う〜ん、そう言えばそうだったわね。ゴメンゴメン」
ソロンは知っている、というか現人神の
「ソロン、知ってたの?知ってて私に黙っていたの?学園の建物についての説明には無かったんだけど。ねぇ、どういうことなの・・・・・・?」
ただし、ソロンは失念していたことがある。それはシエルに話していないということ。訓練施設の秘密も説明しなければならなくなるので、以前した説明には入れていなかったのである。強いて言えば、シエルにあげた神級魔法に匹敵する魔法では最も耐久力のある訓練施設でも耐えきれない可能性が高い、と指摘しただけであるが。
「え〜と、シエル様、そんなに怒らないでくださいませんか?魔力が漏れ出ていますから、って魔力暴走!魔力暴走を起こしかけていますので、早く抑えて下さい!!」
「うわ、ソロン!吸魔の魔導具は!というか、君の吸収魔法は!」
「ありますけど、魔法も魔導具も使用者に還元されるので、シエル様は吸収された分だけの魔力を回復するのに時間がかかります。シエル様に渡した吸魔の魔導具は既に起動済みですが、還元対象はシエル様なので、半永久的に循環しているんです!」
「なら、キスでも何でも良いから、気を紛らわせたら!?」
「ん〜、あ!【
ソロンはエルフィーと言い合いをしているうちに、記憶の中――主に【
「何で【幻惑魔術】・・・って、そうか、幻!強い者なら幻に引っかからずに行動したり、無理やり壊したりして突破するやつが多いから、使えないものだと思ってすっかり忘れていた。いや〜、日頃の仕事のせいなのかね〜。強い相手との対策しか思いつけないのは・・・・・・」
「・・・・・・貴方の場合は歳のせいでは?老いたという可能性もあるのでしょう?」
「フフフ、女性に対して年齢に関することを言うとはマナーがなっていないね、性格が悪い
「ハハハ、言ってくれますね、万年二十歳とか
幻惑にかかったシエルをそっちのけで宮廷では恒例行事となっていた
「う〜ん、う〜ん、もう勘弁して下さ〜い。本当に死んじゃいます〜」
と唸っていた。これにはソロンもエルフィーもギョッとして、言い合いを止めた。
「え?ソロン・・・・・・貴方、どんな幻惑を見せたの?」
「あれ?時間がなかったので、適当にやったのですが・・・・・・、あ、トラウマになっていますね。・・・・・・てことは・・・・・・・・・」
「うん・・・多分だけど・・・・・・、というかどうやったらこんなトラウマになるの?普通は発狂すると思うんだけど・・・・・・」
ソロンは冷や汗をかきながら魔術を解除し、エルフィーは少し引きながらも回復魔法をかける準備をした。
「いや〜、恐らく魔力量の増量のためにやった訓練でしょうね〜。あれは数年間、毎日続けてやらない限りは慣れないものですから」
「まさか、“あれ”をやったのかい!プライドが無駄に高い
エルフィーは顔を最大限、引き攣らせながら、ありえないものを見るかのようにソロンのことを見た。対するソロンは、
「・・・・・・仕方がないでしょう。それが一番良い方法なのですから・・・・・・」
と言って、目を逸らすかのようにそっぽを向き始めた。
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