第39話 宮廷司書とは



 特待生の教室エクストラクラスの座席表を作りました。

 気になる方は下のリンクよりご確認下さい。


 https://kakuyomu.jp/users/tsukahaya/news/16817330656012651437



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「なぁ、アリア、『キュウテイシショヒットウ』って何だ?」

「何で私なのよ?」


 サムは沈黙に耐えきれなかったのか、この場でさっきの言葉について知っていそうな顔をしているアリアに疑問を投げかけた。

 アリアはもう少し耐えてほしかったと思いながら、疑問を逸らすように問いかけに対し、問いかけで答えた。


「だって・・・・・・な〜」

「アリアちゃんが知っていそうな顔をしているもの」


 しかし、友人二人から返ってきた答えは即答かつ逃げられないものであった。

 サムと同じ疑問を持っていた全員が一斉にアリアの方を向いて答えを促すかのように無言の圧力を仕掛けてくる。

 そんな圧力に耐えきれず、仕方がないといった感じのため息を付きながら、アリアは答えることにした。


「いい?『キュウテイ』と名のついた言葉が表すのは大きく分けて4つ!簡単に言うと、今はないが昔はあった帝国のことを表す『旧帝』、今は使われていない屋敷のことを表す『旧邸』。逆に今使われている王城並みかそれ以上の大きさを持つ屋敷または城のことを表す『宮邸』、そして、王城に勤務する役職を表す『宮廷』ね。ここで使われた『キュウテイ』は4つ目の『宮廷』のこと。ここまでは良い?」

「あ、あぁ。なんとなく」

「一応、そこまでは理解できるわ」


 アリアの言う通り――厳密に言えば違う――わかりやすく簡単に言うとすればそうなるだろう。


「そして、『シショ』は図書館などで仕事をしている職員の『司書』であり、主な仕事内容は本の貸出記録や目録作成、本の発注や受け入れなどよ」

「へ〜、でも普通じゃね?」

「うん、聞いている限りでは対して驚く内容ではないと思うけど?」


 何も分からない者は『うんうん』と頷くが、分かっている者達はそんなに呑気にはいられなかった。解説しているアリアも平然と語っているようで、内心はかなり焦っていた。その証拠に徐々に顔が真剣になっていく。


「あんた達は何も知らないから呑気にいられるけど・・・・・・、一つ言っても良い?」

「ん?」「え?どうしたの?」

「もったいぶらず、さっさと言い給え!」

「そうだぞ!それとも何だ?この平民がそれほどの権力を持っているというのか?」


 アリアの言う『あんた達』の中に、サムやメアリーだけでなく、同じような態度をしている自分達も入っている、と気がついた者達はやや怒りを滲ませながら急かす。


「はぁ〜、私は例外として、平民であるサムやメアリーは兎も角、貴方達、王侯貴族も知らないなんて・・・・・・この国が特別なのかしら?」

「いや、他の国も同じようなものだろう。・・・・・・ただし、国王やその側近以外には知らされない最重要機密事項扱いにされている可能性は高いがな」

「あら?それって・・・・・・ここで教えては不味い内容でしょうか?エルフィー先生」


 ここでようやく口を開いたエルフィーに魔法帝国民は驚いたが、それ以外の国の生徒はそれよりも彼女から出た内容について驚いたようだった。


「すみません、エルフィー先生。貴方は先程、最重要機密事項扱いとおっしゃいましたが、たかが司書如きにそれほどの秘密があるのですか?」


 竜人族の男が驚いたように質問した。竜人族は力こそが全てである弱肉強食の掟に従い生きているため、文官の中でも更に地味な官職である司書についてピンとこないのだろう。


「いい質問ですね。ちなみに国王になるなら知っておくべき事柄ですから覚えておいて下さい。では、アリアさん、続きをどうぞ。あぁ、この場にいる生徒の出身国の国王には許可をすでに貰っていますので」

「はぁ、そうですか。(・・・できれば私以外にしてほしかったのですが・・・)」


 アリアは心の底からソロンに目線で助けを求めていたが、見てみぬ振りをした。

 それで、これ以上は時間の無駄だと判断したのか、アリアは諦めたような感じに続ける。


「一般的な司書の主な仕事は図書館に保管された資料の管理。ですが、宮廷司書の場合は少し異なります。それは、各図書館の監査権と立ち入り禁止区域の侵入許可。そして、。そして、筆頭ともなれば、禁書指定権や禁書指定された本の封印処理、それから、それらの本が保管されているもあるわね。まぁ、簡潔に言えば、国内で国王の許可も要らずに禁書を見たり触れたりすることのできる最重要人物。それも、その気になれば、余裕で国内を混乱に包み込み、他国と喧嘩を売れる程の、ね・・・・・・」


 その時、教室内は静寂に包まれた。知らなかった者は驚愕と畏怖を、知っていた者は緊張を、そして、一部の者は尊敬の念を、それぞれ胸に抱くのであった。



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