第38話 入学初日の顔合わせ④




※3話分使っても、未だ、新しく顔合わせが出来たのは一人しかいないので、サムとメアリーを探している場面をカットして、再び、教室に戻させます。


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 結論から言うと、メアリーとサムは見つかった。

 メアリーは中々、教室が見つからなかったらしく校舎の入り口付近で待っていた。

 サムはメアリーと一緒にいたのだが、途中からつまらなくなったのか、闘技場や訓練場を見て回っていた。そんな暇があるのなら敷地内を隈なく探し、教室を見つけ出してこい、と言いたくなったが、ソロンは黙っておくことにした。

 そんなことがあったが、ソロン達は教師が来る数分前に教室に戻れた。

 その後はソロンの予想通り、座席について一悶着があったが、ソロンはシエルの専属執事であっても、身分は一応平民である。なので、下手に座席をシエルの近くにすると他の貴族とのイザコザが生まれることが多い。それを極力回避するため、ソロンはアリア達の近くに座ることにした。シエルやリーゼロッテは不満そうな顔をしていたが、ソロンは当然、見て見ぬ振り無視をした。

 卒業まで、最低でも今年中は何事もなく普通の学園生活を送れたらいいな〜、とソロンは期待した。


「やぁ、おはよう、諸君!」

ガン!


 ソロンは頭を机に打ち付けた。シエルは頭に手を当て、頭痛がしたときのような行動をしている。いや、実際に頭が痛いのだろう。

 何故なら、この教室に入ってきたのは、この国の宮廷魔導師筆頭であるエルフィーであったからだ。彼女は帝国大図書館――帝国一の図書館であり、基本的に立入禁止の地下には禁書などが封じられてある――の館長も兼任しており、宮廷魔導師の仕事の一部をソロンにやってもらうほど多忙であるはずなのだ。

 ちなみに何故、多忙なはずなのに冒険者ギルドのギルドマスターをやっていたかというと、『抑止力のため』らしい。冒険者は自由であり、その自由を侵害する勢力に対する抑止力として就任依頼があったらしい。なお、ギルドの実務等は基本的にすべて副ギルドマスターがやっており、エルフィーが来ることはあまりないようだ。


 閑話休題それはさておき


「何故、貴方がここに?貴方は多忙なはずでは??」

「ん〜、確かに多忙ではあるよ。でも、ちょっと気になることがあって、念の為、しばらくの間はここの臨時教師になることになったんだよ。あ、これが証拠ね♪」


 気になること=入学試験で出てきたあの亜竜のことだろう。あれは確かに気になることだろう。ほぼ確実にシエルを狙った犯行だ。そして、監督官達の見回りを掻い潜って、それを起こせるだけの技量を持つ存在であるということ。はっきり言ってシエル個人としてだけでなく、国としても危険極まりない。それが分かっているのか


「・・・・・・皇帝陛下直々の命令書・・・・・・」ボソッ


 エルフィーが取り出した証拠の紙には、皇帝陛下のみが扱える特殊な判子はんこが押された命令書が書かれていた。任期は最低1年、最長でシエルが卒業するまで、そしてその報酬は大量の金貨と『任期期間中及び任務終了後から任期期間分の年月、宮廷の仕事の軽減』である。多分、後者の報酬が狙いだろう。


「内容は確認できましたが、軽減された分の仕事は一体誰がやるのでしょうか?」


 当たり前の疑問だろう。軽減される量にもよるが、学園の教師をやれるだけの時間を持てるということだ。軽減される量も少なくない。寧ろ、多いだろう。


(そんな量を現在の宮廷魔導師達が出来るか、というと・・・・・・他の宮廷人を応援に寄越したとしても、・・・・・・いや、まさか・・・・・・)


 そんなソロンの嫌な予感に対して答えるようにエルフィーは告げる。


「もちろん、ソロン君がやるんですよ。貴方であれば一日かけて終わるか否かという量を半日以内に処理できるでしょう?」

「・・・・・・報酬は?」

「私が教師として貰う給料の半分、いや4分の3と、卒業までにおける遺跡の優先探索権及び全情報請求権、それから所有権をあげる」

「なるほど。ちなみに、その権利範囲は・・・・・・」

「君が認めたメンバー全員には、優先探索権、情報請求権が与えられるが、秘匿されている一部の情報は与えられないし、遺跡から持ち帰ったものの所有権は君にある。あぁ、獲得した本人のみ、所有権の移動は可能だからね」


 遺跡とは、早くても数百年前、遅いと数千年や数万年前の建物の総称である。現在では失われた【消失した魔法ロスト・マジック】と呼ばれる超希少魔法があったり、かなりの値が付く魔導具があったりすると言われている。

 そこに優先的に探索する権利があることはとても嬉しいことだ。


「エルフィー様の話を遮ってしまって、誠に申し訳ないのですが、このような平民に対して、そのような権利を与えることは、如何に御自身の権力が大きくても困難であると思われますが・・・・・・」


 しかし、ディムエルが質問してきたように、幾らエルフィーの権力が大きくても勝手に権利の大盤振る舞いをすることは不可能だ。だが、


「ディムエル殿、ご安心下さい。これに関してはシエル第三皇女殿下の専属執事兼ソロンに対して、皇帝陛下より命令が下っておりますので。正式な命令書は後日となりますが、昨日の軍閥会議にて可決された案件ですので」

「え?きゅ、宮廷司書筆頭だって!!」


 ディムエルは軍閥会議で可決されたことよりもソロンのもう一つの役職に驚いたようだ。他にも一部の者達が驚いている。流石に宮廷の役職を知らない平民のメアリーやサム、やや鎖国的な思想を持った竜人族などは周りの驚きように疑問に思っているようだ。場がやや気まずい雰囲気になった。



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