第29話 試験報告会議




 ローズの依頼または命令により試験を免除され、帝都散策という形でソロンとシエルが暇をつぶした入学試験三日目が過ぎ去った。

 その入学試験結果を元にここ、ラメド魔法学園では各試験官達と学年主任、そして校長が集まり、誰を入学させるのか、そして受験生達のランキング序列を話し合っていた。


「では、今回の主席はシエル第三皇女殿下で良いですね?」

「私としては良いのですが、三日目の試験を受けていないということに関して問題視する意見も出てくるのでは?」


 身分的な関係もあり、この場にいる全員がシエルを主席にすることに賛同した。

 同時に三日目の試験を受けていないという点で何か文句を言われないか心配する意見もあがる。


「その点に関しては既にエルサレム法皇国の法皇ローズ様より提案がございまして、


 その懸念をローズには既に予測できていたので事前に話を通し、本人達には内密に試験を受けさせていたのだ。試験と言っても日頃のレッスン教育を見せてもらっただけなのだが。


「それは本当ですか?にわかに信じがたいことなのですが・・・・・・」


 その通りで、たとえ内密に試験を受けていたとしても、通用するか分からない。


「それは私も立ち会いましたので大丈夫です。寧ろ納得しましたね。あれを試験当日にやられると他の受験生達の心が砕かれそうな程、完璧なものでした。特に彼女の専属執事であるソロン君が恐ろしいですね。シエル皇女殿下の教育も全て行っていたというのですから」

「「「なっ!!」」」


 しかし、突如入ってきた人物の発言により一同騒然とした。何故なら、その人物がこのラメド魔法学園の最高権力者たる理事長であったからだ。

 そして、王侯貴族であっても採点には厳しいことで言われているあの理事長にこれだけの褒め言葉を告げることはあまりない。それだけ彼等が、特にソロンというシエル第三皇女殿下の専属執事となった者が異常であるということが分かる。


「そのソロン君についてですが・・・その〜、なんと言えばよいのでしょうか・・・・・・」


 そう発言したのは筆記試験の試験監督官を務めた男性だった。


「む?おぬしにしては珍しく歯切れが悪いのう。どうかしたのか?」

「それがですね、オーフェン理事長。こちらを見てください。そのソロン君の筆記試験の試験結果なのですが・・・・・・」

「ふむ、・・・・・・第三問以降の難関問題は全問正解じゃと?」

「えぇ、また試験時間的にはまだ余裕があったにもかかわらず中断していました。なので本来ならば満点を取っていたかと」

「そして、皇女殿下の方は一点という僅差・・・・・・ですか。これはギリギリ、いや、わざと第二問までを解かず、自らのあるじの点数より上になることを防いだ、ということか?」

「恐らくはその通りかと・・・・・・」


 その瞬間、会議室が重い沈黙に包まれた。


「では、ソロン君を今年の次席にするということで良いでしょうか?」


 その沈黙を先に破ったのは校長だった。

 それはこの場にいる全員が助かるような発言であり、妥当とも言える内容であった。


「あとはどうやってソロン君が次席になることを王侯貴族達に認めさせるか、じゃな。何せ、平民が次席になることはたとえ、皇族の専属執事であっても前例がないことじゃからな。いや、そもそも皇族の専属執事に平民がなること自体が前例のないことか・・・・・・」


 既に合格者は決定しているので、残る課題となる『ソロンの次席入学について、王侯貴族から文句が出た場合の対策』を考えるだけとなった。


「ならば、実技試験で見せた実力を提示すればどうですか?」

「いやいや、それなら筆記試験の問題を見せるのはどうでしょうか?流石にソロン君の解答を提示するわけにはいきませんが、問題内容とソロン君の成績だけなら提示できるのでは?」

「それならその両方を提示させる方が早そうな気がしますぞ!」

「いえいえ、それではかえってソロン君が血統主義や魔法階級主義の大半腐った連中に対し、悪い意味で目立ちます!最悪、裏で何かされるかもしれません。開示する情報は減らすべきかと・・・・・・」


 これはかなり頭を悩ます案件ではあるが、この場にいる全員が実力主義か無派閥主義であり、血統主義や魔法階級主義がいないため、真面目に考えるのであった。







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