第12話 入学試験〜筆記試験〜





 はっきり言おう。ほぼ絶対に自分のことを知っている奴等が企んでいる!

 ソロンはそう思った。いや、思わざるを得ない状況になった。何故なら筆記試験の問題の殆どが手を抜きたくない問題構成なのだ。つまり魔導理論系が多いということだ。そもそも、これは自分達に向けた挑戦状のようなものだろう。問題冊子の表紙にデカデカとこう書かれているから。



〜筆記試験の注意事項〜

 本試験は例年の問題と大幅に変更されております。急な変更でありますので、この筆記試験に関して入学の及第点を定めません。なお、今回の筆記試験で7割以上正解した成績優秀者には『国からの報奨金』と『Sクラス入りの権利』が得られます。


※成績優秀者の人数に上限はございません。

※今回受ける第三皇女殿下には誠に申し訳ございませんが、もし成績優秀者に入っても報奨金の方は得られません。



 これは最後の注意文と問題の難易度を見れば皇族のためではないことが分かる。なので、大抵の者達は『学園側からの挑戦状挑発なのでは?』と思うだろう。しかし、この問題内容は自分が手を抜きたくない問題ばかりだ。流石に全部をそんな問題にすることは各方面から抗議が来ると思われるのでやらなかったみたいだが――それでもソロンが手を抜けない問題が7割以上ある――。


(しかし、これは確実にあの年齢詐欺師が好みそうな問題ばかりだ。あの人が関わっているのか。いや、教会系の問題も一部あるから法皇様も関わっているのだろうけど。後で関係者全員に使問い質そう!)


 ソロンの役職は『シエル第三皇女専属執事』だけなので『あらゆる権限』と言ってもシエルの命でしか動けない。しかし、これは表向きの役職であり、実際には色々な役職を持っている。その最たるものが『尋問・詰問権interrogation authority』。これはどんな身分でも関係なしに尋問または詰問できる権限である。つまり、皇帝陛下にも平気で使える権限だ。他にも有事の際の統帥権も有する。しかし、これは公には公表されていないので、他に知っているのはあるじのシエルとその母ノエル、そしてこの権限を与えた現皇帝であるクライド、そしてクライドの専属使用人達の計五名だけである。

 ちなみに、ソロンは他にもたくさんの権限を持っている。中には彼らも知らない権限もある。しかし、ソロンはあまりの多さに主要な権限以外は思い出すのにかなりの時間がかかる――機密保持の為、本などには記録できない――。



(え〜と、第一問と第二問は基礎問題だから飛ばすとして・・・・・・第三問は独自の『魔法強化・発展方法』だからこれは自分の初級魔法をベースに創った生活魔法の理論を書いて、第四問は『実現不可能の魔導理論――重力による浮遊魔法――の欠点または解決法』を書く問題だから・・・・・・・・・そして第五問は・・・・・・これは出題しても良い問題なのか?まぁ、いいや。気にせず答えを書くか。クッ、これで7割以上は確定になったな。あまり貴族達とのいざこざを起こさないためにしようとしていたのに!)


 筆記試験は魔法帝国メイザースが誇る宮廷魔導師エルフィとエルサレム法皇国の法皇ローズによって作成された高難易度問題によって全体の平均点は歴代最低になったが、一位はシエル、二位はソロン、三位はメアリー、四位はアリア、五位はサムと主席は皇族だが、その下に平民が続くという前代未聞の結果となった。更に言えば、このトップ五人は得点が七割超え、一位と二位はほぼ満点に近く、たった一点という僅差であり、教師陣営を悩ませ、かつ、採点時及び結果掲示後に不正疑惑騒動が起きるほどであった。ちなみに不正疑惑騒動の結果はどちらも『不正無し』である!




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