第9話 それぞれの想(思)い




 『( ◯◯ SIDE)』の『◯◯』に入る名前から次のそれまでがその名前の心の中の考えや想(思)っていることなどです。


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(ソロン SIDE)


 さて、手抜きをすると言いましたが、どうしましょうかねぇ〜。シエルの皇位継承順位を少しでも上げるために、彼女にはこの入試を主席で合格して欲しいところなのですが・・・・・・。

 筆記試験は一部を除き、難易度によって調整すれば良いでしょう。

 実技の一次試験は例年通り、『魔物の森』に行き、指定された魔物を時間内に討伐する程度のはずなので、適当に時間をかけ、討伐し、提出すれば大丈夫でしょうね。

 問題は実技の二次試験なんだよなぁ〜。あれは実戦形式で行う模擬戦だから、実力者が試験監督をしていると手抜きがバレそうなんだよなぁ〜。学園内はいかなる権力も通用しないことが不文律になっているから、こっちの都合の良いようには出来ないだろうし。まぁ、ここは最初から第一層封印を開門して、平民にしてはそこそこの魔力量があると思わせておくか、身体強化を使って不意打ちを決めるか・・・・・・。

 まぁ、私が受けるのは『使用人コース』なので、試験ではダンスのリードや楽器の演奏などもやりますが、こちらは大丈夫ですね。何しろ、今までシエルのお世話係としてやってきたことしか出てこないから。強いて言えば、楽器の演奏は単調な音楽だと華の無さが分かってしまうんだよなぁ〜。技巧曲などであれば小細工をして華のある演奏ができるけど・・・・・・。

 どのようにシエルを説得し、試験で本気を出してもらおうかなぁ〜?


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(シエル SIDE)


 きっとソロンは私をどうやって主席にしようか企てているところでしょうねぇ〜。恐らく、筆記試験では適当に答えたりして点数を調整し、実技の一次試験では、ソロン曰く『指定された魔物の討伐』と言っていたから、適当に時間を潰して、平凡的な時間で倒すんでしょうねぇ〜。提出時間は平凡でも戦闘時間が秒殺、いえ、文字通り瞬殺するのだろうけど。クッ、映像宝珠を使って記録することができれば良いのだけど・・・・・・。実技の二次試験は相当の実力者が来てくれれば・・・・・・いえ、法皇様が試験監督をしてくれれば良いのかしら?まだ、お父様の執務室で話し合っているはず!

 それにしても、私が受ける『貴族コース』とソロンが受ける『使用人コース』の追加試験は大体が同じだけど、私の方は『貴族の礼儀作法』や『ダンスの踊り方』、ソロンの方は『使用人の礼儀作法』や『ダンスのリード』と細かく見れば違うところが何個かあるのよね〜。ただ、これらは入学試験全体の得点の1〜2割くらいしかないのよね。逆に魔法を使う実技試験では5割以上、そして主に様々な魔導理論などが出題される筆記試験が3〜4割くらいもある。流石は名門とも言われる魔法学園といったところかしら。さて、私は早速、法皇様にお願いしに行くとしましょう。


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(クライド SIDE)


 ソロンがシエルと一緒に魔法学園へ入学する決意をしてくれたことを喜ぶべきか、嘆くべきか、怒るべきか。あぁ、多分シエルのことを侮辱する輩がいればソロンが問題を起こすから嘆くだろうな。それに、入学する理由が契約のためだと言っておった時には殴りたいくらい怒りを抱いたわ。シエルが可哀想に思えてくるぞ。

 それにしても、ローズ様と以前より繋がりがあったとは。はっきり言って、その事実だけでこの国を、特に皇位継承順位を揺るがすのには十分な材料だぞ?その繋がりを使えばシエルを今すぐに皇帝の地位に就けさせることぐらい容易いものを。まぁ、その後の事後処理は大変だろうがな。だからといって使わないことを簡単に選択するのもどうかと思うが。

 ソロンに何かしらの意趣返しをこちらからしてやりたいものだ。さて、何が良いだろうか?


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(ローズ SIDE)


 あぁ〜、つまらん!何か面白いことをしたい!だが、やりすぎるとソロンが怒るだろうし、かといってやりすぎないように制御できる自信はないし。ソロンに封印をかけてもらおうかな〜。いや、周囲の空間や物などを補強してもらった方がいいか?それよりも、ソロンとをした方が楽か!でも、やれる場所がないし、何よりソロンが嫌がるだろうからな〜。面と向かってやるのではなく、ドッキリ、かつ、拒否権がない場面であれば可能だろうけど・・・・・・。クライド殿にそれとなく話題に出して相談してみるか?


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(ヨランダ SIDE)


 クソッ!何であいつが、出自も経歴も一切不明だから平民のはずの、そして何よりあのシエルを助けたというだけでこの皇城に入れた者なのに!そんなやつに私の企みをすべて妨害され、今までの計画を狂わせられた!それだけでも心底、忌々しいというのに、あの法皇ローズと知り合いですって?もしや、あの女を使ってシエルを皇帝にするのかと思えば、ただ事後処理が面倒だというだけで悩みもせず、簡単に却下する。あぁ、あの女と知り合い関係にあるという強力な切り札カードを持っているから、今まであんな態度を、そしてあのような言動をしていたのね。内心、私達のことをバカにして、愉悦感に浸っていたに違いないわ。そう思っていたからこそ、私の企みを、私の計画を、妨害し阻止するような行動を取り続けたのでしょう。

 シエルを亡き者にすることはすべてソロンによって未遂もしくは未然に防がれていた。だから今回はやり方を変えてみましょうか。


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 かくして、ソロンはシエルを主席にさせるための、シエルはソロンが活躍させるための、クライドはソロンへ意趣返しをするための、ローズはソロンと実戦形式での模擬戦を行うための、ヨランダはソロンやシエルを消すための、各々がそれぞれの方法を考え、その思惑が交錯し、今回行われる入学試験に波乱をもたらすのであった。





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