第5話 ソロンの過去・回想①




ここから先はしばらく、ソロンの過去・回想編となります。

目線も第三者目線だったり、ソロン目線だったり、様々な目線で進行していた今までと違い、ここは基本的にソロン目線で統一します。

『その他の登場人物たち』に関しては誰が当てはまるのか想像して読んで下さい。

多分、当たっていると思います。誰が当てはまるのか知りたければ応援コメントや近状ノートなどで聞いて下さい。暇な時間に作って、なるべく早めに出すようにはします。(多分、要らないだろうと思っているので今の所、作っていません。)


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 私がシエルと出会ったのは本当に偶然でした。

 貴方あなたも知っている通り、私はで当時は5歳でしたが、精神がすでに発達しており、今とあまり変わらない思考回路を持っていました。

 なので、私は『この帝国で産まれたなら、帝都を見て回りたい』と思ったのです。私がいたのはちょうど帝都近くのスラム街だったので、お金を稼ぐために仕事をしに帝都へ入ることは簡単でした。それからしばらくして、暗部というのはどこにでもあるもので、帝都内にも広大ゆえにいくつかの暗部があることに気付きました。暗部といってもこの帝都では悪い暗部というものは少なく、どちらかというと対暗部用の暗部と言うべきなのでしょうか?やはり、暗部というのはその国や地域の闇であり、その場の統治によって変わるものですね。現皇帝は善人に近く、暗部もあえて危ない所に住み着き、怖い人達をその入り口にいさせることでそのエリアに近づけないようにしたり、迷子の人がいればそれとなく道を教えたりするような良い人達が多かったですね。また、たとえ物を奪うとしても不正貴族や悪徳商人を狙うようにしていて、どうしてもという場合は闇ギルドや仲間たちから貸し借りや融通してもらったりしているようでした。闇ギルドも民のための闇ギルドであり、貴族の不正や商人の悪徳に関する証拠を集めたり、ときには表立って暴いたりしている所でした。国が悪政を敷いていればそれを摘発し、正そうとする。正統(正当)な後継者がクーデターにより暗殺されそうになれば裏で助け、匿い、ときには信頼や信用ができる他の闇ギルドや協力者と連絡を取り合い、亡命の手助けをする。今まで見てきた闇ギルドよりも良い所です。自分もスラム街にある闇ギルドに入っていたので、ある程度は暗部の者達とも交流を持っていました。そもそも彼ら暗部や帝都の統治状況などの監視が任務でもありましたからね。あぁ、いくら貴方でも闇ギルドの本拠地は教えられませんよ。付けようとしたりしても無駄ですからね。魔導具に頼ろうとしてもいくつかの反魔法アンチマジックエリアを通って行きますし。とにかく、その任務遂行のために暗部を転々としていた時でした。

 もう一度言わせてもらいますが、私がシエルと出会ったのは本当に偶然でした。

 暗部の通路を通っていたら、何人かの男たちに囲まれた女の子に会ったのです。彼女は家族にも言わずに、つまり完全なるお忍びで帝都の街を散策していたようで、護衛も付き人もおらず、迷子になったのでしょう。私が見たのはそこを運悪く、悪人の目に付き、連れ去られようとしていた現場でした。また、いくら暗部が全体的には良くても、細かく見ると悪い奴らもいて、そういった者達を見つけ次第、束縛し、必要があればその場で裁くのが私の任務の一つにありました。といっても勘違いであればこちらに非があるので、最初は確認のために声をかけました。


「おい、そこで何をしているんだ?」

「あぁ、テメェには関係ねぇことだろ?それとも何だ?お前もこいつを狙っていたのか?なら残念だが、こいつはだ。ガキはあっち行きな!・・・・・・いや、テメエも顔つきは良いから奴隷にして売り付けるのも良い手か。」


 そうニヤリとして言ってきたので、私は悪人指定で決まりだと思いました。


「一応、奴隷として売り捌いたりするのは帝都の暗部にとっては暗黙の了解であり、そもそも、帝国法で禁止されていたはずだが?」

「あ?そんなもんうちらには関係ないね。それにこの国で禁止されているなら他国で売り捌けばいい話じゃねぇか。それにどっちみちテメェにはどうすることもできないだろ?」

「ん?あぁ、そうだね。確かにこの外見では強そうには見えないだろうし、実際に単純な力技では大人と子供の差がありすぎるから、勝負にすらならないだろう。でも、それ以外ならどうだい?」

「はぁ?・・・・・・いや、まさか、テメェは魔法を使えるのか!?ヤバい、そいつを連れてさっさと逃げるぞ!」

「え?何でですか?」

「そいつは魔法使いだ。いや、魔術使いの可能性もあるが。とにかく、俺らにとってはだ。」 

「「「な!!」」」

「兄貴んとこに着ければ大丈夫だ。急げ!!」


 流石に大の大人が、それも男がそう言って逃げていったことには、自分も少し呆然としたよ。しかし、それが悪かったね。逃走を許してしまった。流石に、素の身体能力では彼らの中に獣人がいて、そいつが彼女を連れて行ったから追いつけなかった。彼が言っていた『兄貴』という言葉が気になるから、体力温存のために、身体強化をフルで使うわけにはいかなかった事もあったからね。結局、彼らに追いついたのは彼らが『兄貴』という男のいる所であり、彼女もその男の前に縛られていたんだ。


「困るな〜。人様の獲物を横取りにしようとして。」

「何を馬鹿なことを。ルール違反しているのはそっちじゃねぇのか?」

「おいおい、俺たちは暗部の住人だ。この弱肉強食の世界において強き者がルールを定める。ゆえにここでは俺がルールだ!!」

「流石ですわ、兄貴!」「兄貴、かっけ~!」

「それにお前は多少なりとも魔法か魔術を使えるようだが、俺様には敵うまい。」


 いや〜、彼らの言い分を落ち着いて聞いていた自分を褒めてほしかったよね〜。本当に腹立たしかった。相手との力量も考えず、見た目だけで判断している相手を見下すあの視線。そして、欲に汚れたあの眼。だけど、流石に耐え切れなかったね。ついうっかり、素が出てしまうほどにね。


「はぁ〜、言いたいことはそれだけか?はっきり言って、お前ではに勝つことは不可能だよ。」

「「「な!貴様!」」」

「何、だ、と・・・・・・。テメェ、よっぽど死にたいようだなぁ?」

「だから、言っただろ?お前では俺に勝てない。つまり、殺すことも不可能だ。」

「そうかよ!だったら、死んで後悔しな!!

【炎よ!全てを焼き尽くす炎よ】

【我が憎しみ、我が悪意を乗せ】

【我が敵を焼き尽くせ!】

【炎魔法『憎悪の炎』】

宝石型魔導具『火炎結晶』を装備して放つこの技は本来なら下級低位の魔法だが、中級中位にも匹敵する火力を誇る魔法になるんだぜ!そのまま焼かれて死ね!」

「あぁ、つまらない。そして醜く、汚い魔法だ。」


 自分がやったのは虫を払うように手を動かしただけ。たったそれだけで彼が放った魔法が消えた。


「な、な、何をした!」

「単純なことだよ。君が放った炎を水でだけだ。」

「はぁ?嘘つけ!貴様が水を出したのが見えなかったぞ!」

「それはそうだろう。だってこれはなのだから。見えるはずがない。」


 今にして思えば、あれは失態だった。彼女の前で見せつけちゃったんだから。今では天才だとか言われているけど、当時の彼女は血統ゆえに魔力量が常人以上だったんだけど、魔力制御が追いついていなくて、魔法や魔術の失敗を常にしてしまうから、無能の烙印を押されていたんだ。そんな彼女から見たら、自分のことを羨ましく思っていたんだろうね。皇族でも貴族でもないただの庶民である自分が精緻な魔術を使ってあの怖い男を圧倒してみせたのだから。その後も彼女曰く『キレイな魔法』を使っていたからね。




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