第4話 朝の騒動③
「ソロンよ、どういうことだ?いつの間に通信宝珠が完成したのだ?」
「どういうこと、ソロン!はっ、まさか、法皇様の知り合いというコネを使って、シエルを次期皇帝にするつもりなの!!」
「皇帝陛下、通信宝珠に関しては未だに完成してはございません。確かに遠隔通信での会話はできたのですが、膨大な魔力量を必要としてしまい、常人には扱えないものとなっています。現状、使えるのは私と法皇様くらいでしょうか。あと、ヨランダ第二皇妃様、ご安心下さい。そのような手は使いませんよ。というか死んでも使いたくありません。後始末、いえ、事後処理が大変なので。」
クライドの質問には優しく、恭しく答え、ヨランダの質問には少し棘を含ませた。特に最後の一言はローズを睨んで言っていた。しかし、知らない者からすれば「事後処理」と言われても意味がわからないだろう。
「はて?そんなに大変だったっけ?私が推薦するだけなのに。」
「・・・・・・。」
ローズが首を傾げて言ってきたこの言葉にソロンはゾッとするような目で睨んだ。
「ソロンよ、どういうことか?」
「皇帝陛下、この老が、ゴホン、法皇様が推薦すれば信者たちも動きます。そこまではよろしいのです。しかし、問題はその後にございます。信者たちの中には熱狂的な者もいまして、その者達が神の声を聞く者の一人である法皇様の推薦に従わない者達をどう考えると思いますか?」
「・・・・・・まさか!・・・・・・」
「えぇ、たかが法皇様の推薦であっても、それは神の言葉に等しいと思う者達もいる。そして、従わない者を邪教徒とし、手段を問わず、消し去るでしょう。全員は守りきれませんし、私の目の届く範囲ならともかく、目の届かないところとなるとそこを探し、処理しなければなりません。となると必然的に即位数年はその事後処理に奔走する羽目になります。法皇様を使うくらいなら、自分一人で動いたほうがマシです。」
「まぁ、そうなるよね〜。」
「そう言えば、法皇様は本日はどのようなご要件でいらっしゃったのでしょうか?」
「あぁ、以前からソロンに打診されていた案件がどうにかなりそうでね〜。その報告に来たんだよ。」
「はて?余は何も頼んでいないような・・・・・・?」
「陛下、私個人の依頼です。詳細は後程お伝えします。」
「ふむ、そうか。ちょうど食事が来たことだし、話はこれでお開きにしよう。」
「では、私は食事が終わるまで皇城を探索するとするか。ソロンを借りていくぞ?」
「「はぁ?」」
「彼でいいならどうぞ。」
「そんな、お父様!」
ローズがお付きの者を、それも異性を選ぶなど前代未聞だろう。
それに加え、シエルの専属執事たるソロンを指名するので、シエルはそのまま、取られるのではないかと心配し、抗議の声を上げた。流石に見ていられないので、
「大丈夫だよ、シエル。後でお前のもとに戻ってくるから。誓いは破らないよ。」
すれ違いざまにボソッと呟いておいた。そして、
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ソロンが紡いだその詠唱はソロンの
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「誓約の内容は『法皇様はソロンを引き抜かない。この帝国に迷惑をかけない。』」
「その誓約を結ぼう!」
その言葉に反応し、幾何学模様の魔法陣が二人を包んだ。
「はぁ〜、えげつないものを創ったものだ。」
「そうでしょうか?それよりも早く行きませんか?朝食が始まりますし。」
「そうだな、では案内してもらおうか?」
「仰せのままに、法皇様。そして自分はこれにて失礼します、皇帝陛下、シエル様。」
「あぁ、失礼の無いようにな。」
「・・・・・・行ってらっしゃい、ソロン。」
そうして、ソロンは食堂を退室した。すぐにローズは口を開く。
「ん〜、やっぱり堅苦しいな〜、ここは。」
「そうですか?こちらは貴方が来たせいでこうなったと思うのですが。」
「えぇ〜、そうかな〜?そう言えば、さっきの会話で『君の目が届かない』って話が出たけど、そもそも封印を解けば良くない?ねぇ〜、そr「その発言、禁則事項に抵触するのでは?」おっと、危ない。」
「ハァ〜、まぁ、いいです。聞かなかったことにしておきます。今は人間であり、あの人に・・・
「へ〜、珍しい。あの君が主人の鞍替えかい?」
「『あの』とは何ですか?あと、不敬なことを言わないで下さい。
「へぇ?君が契約?え?本当に?」
「えぇ、私が交わせる最大限にして最上・最高級とも言える本気の誓いをね。」
ソロンの言葉に絶句したのか、ローズはしばらく唖然とした顔をしていたが、しばらく厳しい顔をしながら俯いていた。
「ねぇ、ソロン。それってまさか・・・・・・。」
「ご安心を。そんな厳しいものではありません。破れば、生きている間、心臓が多少痛くなり、死ぬときにその魂は永劫の苦痛に苛まれるだけです。」
「いや、それはそれで問題なんだが。一体、どんなことを誓ったんだい?」
当然と言えば当然だが、ローズはやはり聞いてきた。それもクライド達に見せていた穏やかな雰囲気や視線ではなく、鋭く、厳しい視線と剣呑な雰囲気で『冗談や嘘偽りは許さない、真面目に答えろ』とでも言いたげな感じだ。なのでソロンは早々に白旗を上げて、白状することにした。彼女の態度も当たり前と言えるだろう。ソロンは大したことではないかのように言っているが、罰則が悪魔との契約じみたものなのだから。はっきり言って、子供同士で交わすものではない。たとえ、ソロンがシエルと交わした誓いを破った場合の罰則を食らうのが、誓った側であるソロンだけにあるとしてもだ。あまりにも重すぎるし、そもそもローズが知るソロンは
「良いですけど、それには8年前まで遡って話をする必要がありますよ。長くなると思いますがよろしいのですか?」
「あぁ、構わない。君が本気で『誓い』をした理由についても知りたいからね。」
「では、話をすることにしましょうか。あれは・・・・・・ 」
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