第44話 悠真の初恋物語 その5


 ピンポーン♪


 「おーっ、ナイスタイミングっ♪」


 そう言ってインターホンのモニターでピザ屋さんを確認して解除ボタンをタッチする。


 『やっぱりピザは熱いウチに食べないと美味しくなくなるからねー♪』なんて言ってるけど、妹さん帰って来てないよ?


 

 「ありがとうございましたー!」


 ピザ屋さんからピザを受け取ってご機嫌で戻って来たマリアさん。なんかよく見たらその格好、オーバーサイズのTシャツだから下履いてない様に見えちゃうよ!


 そんな俺のドキドキなんてまるで気付かないマリアさんは、「冷めない内に食べよ、食べよ! お腹空いちゃったよー!」なんて言って小皿を持って来た。本当に男として見られてないんだな。 ……んっ?


 インターホンの横にある棚の上に、マリアさんと男の人の写真が飾られていた……。


 「いただきまぁーす♡」


 「んー、美味しー♪ 悠真も早く食べなよ!」なんて言ってるけどあの写真が気になってしょうがない。


 「あの……、マッ、マリアさん、あの写真の人は……」


 するとマリアさん、「あっ!」って顔して、


 「…………彼氏。今は遠距離なんだ。ここを出て行く事になったら、付き合いも長いし、その……結婚も考えてるの」




 ……そーだよね、そりゃ居るよね、彼氏。



 だってこんなに可愛いくて魅力的なんだもん。…………あれ?



 「悠真っ? ……どーしたの? 何で泣くのよーっ!」


 オロオロしたマリアさんに言われて気付いた。俺、……涙が勝手に出て来てるよ。


 「すっ、すいませんっ、あれーっ、俺っ、何で泣いてるんだろ?」


 慌ててティシュで涙を拭き、チーンと鼻をかんで無理矢理笑って見せた。


 「早く食べないとピザ冷めちゃうよねー! さっ、どれにしようかなー?」


 明らかに動揺してる俺を見て、マリアさんは優しく俺を抱きしめて……、


 「悠真が私の事、好きでいてくれてるのは分かってたわ。……でも妹と同じ年のアナタは可愛い弟の様にしか思えなくて。

 ……ごめんね、それなのに軽い気持ちで部屋に入れちゃって」


 やべーっ、また涙出て来たよーっ!


 「もーっ、泣かないのっ!

 ……でも、ありがと。私も一生懸命に努力してる悠真の姿、大好きだよ!」


 そう言って優しく頭を撫でてくれた。俺はマリアさんの柔らかい胸に顔を埋めて子供の様に泣いてしまった。



 ※



 いっぱい泣いて、恥ずかしいんだけどなんかスッキリしたよ。


 「ピザ、……冷めちゃいましたね」

 「うん。……あっためよっか?」


 立ちあがろうとしたマリアさんに俺は、最後のわがままを言った。


 「すいません。……あと少しだけこのままでいさせて下さい」


 「もぉー、しょうがないなぁ(笑)」


 ソファーで小柄なマリアさんの胸に顔を埋めている俺は、はたから見たら甘えん坊の大型犬に見えるだろう。……その時、



 ガチャ

 「お姉ちゃんただい…………っ!」



 リビングの扉を開ける音と声が同時に聞こえてきた。


 妹さんだーっ!!



 「ちっ、違うのよ! 朱里紗ありさっ、これはねっ……」


 ん、……んーっ? 朱里紗ぁ?




 ……おそるおそるリビングの扉に顔を向けると…………。



 「ゆっ、……悠真くんっ?

 ……なんで二人がっ? それにお姉ちゃん彼氏いるでしょ? なのにどーしてっ? ……ヒドイっ!」


 バタンッ!!


 勢いよく扉が閉まって高樹さんは出て行ってしまった。


 「どっ、……どうしよう悠真っ!」


 突然の出来事で頭が混乱しているマリアさんに、


 「俺っ、追いかけますっ! マリアさんはそのまま家に居て下さいっ!」

 

 そう言って急いで俺は玄関を飛び出した。



 ※



 エレベーターホールに行くと、四機あるエレベーターの中から一機の扉がすぐに開いた。慌てて乗り込み閉まるボタンを連打した。ほとんどロスなく乗り込めたからそんなに差は無いハズだ! 


 違うんだ高樹さんっ! ん? ……違わないけど、ちゃんと言わなきゃっ!


 エレベーターから降りてエントランスを出て、さぁ、どっちに行った? ぐるっと辺りを見回すと、…………いた! 細身で背の高い、白いワンピースを着た黒髪の女性の走っている後ろ姿が見えた! 俺は人を掻き分け急いで彼女を追う。


 「待ってくれ、高樹さんっ!!」


 人目を気にせず大声で名前を呼ぶと、驚いた様に振り返り、俺の顔を見てまた走って逃げていった。


 ワンピースの女性にTシャツ、ハーフパンツの俺が負ける訳がない! 


 すぐに追いつき肩に手をかけた。


 「待って高樹さんっ、話を聞いてくれっ!」


 「いやっ、離してっ! お姉ちゃんも悠真くんも大嫌いっ!!」 


 ……泣いてる。


 それでもちゃんと話さないと、俺の事はどうでもいいけどマリアさんが誤解されてるのは良くない! 振りほどかれた手で今度は両手をしっかり握って、高樹さんの目を見て言った。


 「誤解してると思うからちゃんと話を聞いて欲しい、頼むよ!」


 高樹さんの強張っていた体から力が抜けた。涙目の高樹さんは下を向き、一言、



 「……うん」



 

 

 つづくー!

 本編はここまでっ♪



 🌸読んで頂きありがとうございました🍒

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 🎸ここから先は補足&雑談コーナー🎸



 マリアさんは朱里紗のお姉さんでした。

 めっちゃうっすら匂わせながら書いてたけど、分かる訳ないよねー♪


 朱里紗ショックです、大好きなお姉ちゃんと悠真がイチャイチャしてる現場を目撃してしまいました。


 悠真、甘ったれです、女々しいです。そして隙あらば胸に顔を埋めます(笑)あんまり調子に乗るなよ!←私、悠真の事嫌いなのかしら?



 今日のおススメ

 SLY & THE FAMILY STONE/ANTHOLOGY


 はい、スライ&ザ・ファミリーストーンのヒット曲盛りだくさんのベスト盤です! ロックもいいけどファンク、ブラックミュージックも良いよね、体が勝手に動いちゃう♪


 Voのスライは、アフロヘアにもみあげ、絵に描いたようなファンキーモンキーベイベーです♡

 『Dance to the music』

 https://youtu.be/1kzyRM0Sjl8?si=5htpaMVR8ryt6b5d

 



 

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