第42話 悠真の初恋物語 その3
未来姉のは見慣れてたから何とも思わなったけど、高樹さんのヘソ出し生足は夏だからって露出激しいんじゃないの? せめて普通のTシャツにしてもらう様に言っとかないと!
さてと、その先の重い扉を開けると既にチラホラ客が入っている。俺はカウンターに立ち、ドリンクのチケットを持って来た客に飲み物を渡す。ここからライブが始まる迄が俺の最も忙しい時間だ。
今日の演者さんはロックではなく、お洒落なシティーポップバンドなので客層も荒々しい兄さん姉さん達ではなく、少し年齢層が高めの落ち着いた感じの人が多い。雰囲気の良い時間が流れる中、演奏が始まった。
ここからはドリンクもそんなに注文が来ないので、俺も勉強を兼ねてカウンター越しに演奏を見る。すると、何故か隣のフロアから高樹さんがやって来て、
「こっちも暇になったからみっくさんが『見学して来れば?』って!」
そう言ってはにかんだ笑顔を見せ、向かい側のカウンターチェアに座って来た。いつもと雰囲気違うからなんかドキドキするな。
しばらく二人で演奏を観ていたら、高樹さんが何か言ってる。音が大きくてよく聞こえないや。
「…………!」
「えっ? 何っ?」
高樹さんに顔を近づけられ耳に手を添えられて、
「みっくさんに『ナンパとかして来る奴が居たら彼氏も一緒に働いてるって言いなよ!』って!」
なっ、何言ってんだ未来姉っ!! 俺も高樹さんの耳に顔を近づけて、
「そんなのすぐ嘘ってバレちゃうよ! それに俺なんかじゃ高樹さんが迷惑だろっ?」
そしたら高樹さん、ほっぺをぷぅーっと膨らませて、
「そー言って遠回しに断るの傷つくっ! 『フリ』位してくれてもいーでしょ? ばかっ!」
あっかんべーをされてまたカフェスペースに戻っていった。……何で怒ってんだ?
※
ライブが終わり照明が明るくなり一瞬目が眩む。満足そうに帰って行く客に頭を下げながら俺達は掃除を始める。カフェスペースの方はもう閉店していて後片付けも終わっている。通しでやってたから高樹さん疲れただろうなぁ。
※
「お疲れ様ー、お先でーす!」
時刻は午後九時、俺は他のスタッフ達に挨拶をして店を出る。明日はライブもないし、マリアさん家に行くから休みだ!
店の階段を登り、更に家に続く階段を登って玄関に辿り着く。本当に通勤時間がかからないっていいよな!
「あー、おかえりー! お疲れ様っ♪」
「おー、悠真お疲れ!」
リビングにはソファーでくつろぐシンちゃんが新しい曲が出来たと待ち構えていた。未来姉は俺が帰って来る時間を見計らって野菜炒めを作ってくれている。あー腹減った! それより……、
「未来姉っ、高樹さんにあんな露出の多いの着せないでよ! せめて普通のTシャツにしてくれないかな?」
「えーっ、可愛いじゃん? 私だって同じ格好してるんだからー!」
高樹さんは未来姉と違って身長も高いし、あらためて見たら胸もあるからチビTだと余計に目立っちゃう……なんて口が裂けても言えない。晩ご飯抜きになっちゃうよ。
ご飯と味噌汁を自分でよそい、テーブルに座るとシンちゃんもテーブルに来た。
「そんな事より悠真っ、これ聴いて見ろよ! 夏休みって最高だな、気がついたら一日中曲作ってたよ!」
えっ、一日中やってたの? 本当凄い集中力だなー! そこに野菜炒めを持って来た未来姉も座る。
「いただきまーす!」
俺が食べ始めると未来姉が『シンジー、悠真も来たから聞かせてよー!』なんて言ってる。俺が帰って来るの待っててくれたのかな? そしてシンちゃんが再生ボタンを押すと曲が流れてきた。
♪〜♪、♪〜♪、♪〜♪、♪〜♪
ノリの良い十六ビートのカッティングが印象的な曲だけど歌が入ってない。するとシンちゃんは未来姉に向かって、
「未来、……これに歌詞をのっけて歌ってみないか?」
「私が歌うの? オッケー! それじゃ歌詞考えてみるよー♪」
待ってましたと言わんばかりに簡単にオッケーしたけど大丈夫なの?
「えへへ、……実はね、私、曲は中々出来ないんだけどね、歌詞は結構書いてたんだー!」
「Oh! いーね! 俺は逆に歌詞が中々書けないからちょうどいいな!」
「初めての共同作業、……だね♡」
未来姉、自分で言って何照れてんだ? こっちが恥ずかしくなるよ、もうっ!
「ゆっ、……悠真は何か出来たか?」
シンちゃんも分かりやすいなー! 顔が赤くなってるよ。
「俺はまだ何も出来てないよ。夏休み中に何曲か作ってみようと思うけど、俺も歌詞は苦手かもね」
「よーし、それじゃ明日店終わったら合わせてみるか!」
ん? 明日はマリアさん家でご飯食べるから何時に帰って来るか分からないぞ?
「ごめんシンちゃん、俺……、明日ちょっと用事があるから無理だ」
「えーっ、悠真が予定あるなんて珍しいねぇ、もしかして朱里紗とデート?」
嬉しそうに未来姉が聞くもんだからつい、
「違うよっ! マリアさんとご飯食べるんだよ!」
……やべっ、口が滑った。
二人共、ニヤニヤしながら何も言わずに俺を見ている。こういう時は息ぴったりなんだよねー!
「ほらっ、ロッ、ロットは夏フェスいっぱい出るからレッスン出来ないじゃん? それで今までのお礼でご飯ご馳走になるだけだよっ、……それじゃ俺っ、もう寝るからっ!」
「なんだ悠真、やるじゃねーか! もしかして脈アリなんじゃねーのか、オイ?」
流石にマリアさん家にお邪魔してなんて言えないし、このまま居たら質問責めに遭いそうだからとりあえず逃げよう!
つづくー!
本編はここまでっ♪
🌸読んで頂きありがとうございました🍒
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悠真はマリアさんに夢中でこんなに頑張ってる朱里紗に気付きません。どーしたもんかしら?
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LED ZEPPELIN /LED ZEPPELIN IV
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