第37話 それぞれの夏休み


 深夜まで続いた練習から一週間、シンちゃんは曲作りに没頭していて、学校が終わったらすぐ家に帰っている。ご飯だけ一緒に食べてまた自分の家に戻って……。


 なんかスイッチが入ったんだって! こうなった時の集中力は凄いと思うよ! 未来姉が、かまって欲しくてちょっかいかけてるけど全然だもんなー(苦笑)


 とは言え未来姉も文化祭バンドの練習を三日に一回は音楽室で、残りの日は自主練、そして店の手伝いと結構ハードな毎日だ。


 俺は店の手伝いと自主練、そしてマリアさんの所へレッスンと言う名の癒しを求めて足を運んでいる(笑)

 無理なのは分かってるよ!! 年だって八つも離れてるし、男として見られているかと言われたら『NO』だけど、可愛い弟分位には思って貰えてるハズだ! この先は俺がドラムをもっともっと上手くなってマリアさんに一目置いて貰える様にならないとねー!



 ※



 そして、今日であっという間に一学期が終わる。高校生活たったの三ヶ月ちょっとなのに、シンちゃんが戻って来たり、席替えがあったりとめちゃめちゃ濃かったよなー!


 「ねぇ、田所くん」


 ホームルームが終わり、帰り支度をしていると高樹さんが話しかけて来た。


 「何? 高樹さん」


 「あのね、……田所くんのお店のカフェスペースの方でアルバイト募集してるって言ってたじゃない? 私じゃ、……ダメかな?」


 「マジでっ? 高樹さんなら見た目もいーし最近は愛想もいいから、未来姉と二人でお店やったらお客さんでいっぱいになるよ!」


 ……ん? なんで真っ赤になってんだ?


 「……じゃあ、この後着替えたら面接に行っても良いかな?」


 「あー、全然堅苦しく考えなくていいから、履歴書だけ持って来てくれればいいよ! 

 ……ところで高樹さんって、簡単な調理とか出来るの?」


 「ふふっ、私ね、今、親元離れてお姉ちゃんと二人暮らししてるから料理はバッチリなんだよ!」


 赤い眼鏡のブリッジを中指でクイッとして、ふふんと言ってあごが上がった。ドヤ顔の高樹さんも可愛いなー♪


 「オッケー! 俺の方から店長に言っとくよ。……あっそうだ、俺達まだLIME交換してなかったよね?」


 「うっ、うん! 交換しよっ♪」


 ぱぁっと笑顔を満開にした高樹さん、そんなに嬉しいの? 俺のIDなんていくらでも教えるのに……。


 「じゃあ、近くに着いたらLIMEするねっ!」


 高樹さんはウッキウキで帰っていった。バイトしたかったんだー、お姉さんと二人暮らしって、生活苦しいのかな? 特別にまかないつけて貰える様に頼んでみよう。



 ※



 「なになにー? 悠真のクラスメイトがバイトしてくれるんだってー?」


 家に帰って着替えてから地下の階段を降り、入り口の扉を開けたら未来姉が嬉しそうに聞いて来た。


 「あー、うん。高樹さんって言うんだけど、彼女今、お姉さんと二人暮らしなんだって。バイト見つかって嬉しそうだったから宜しく頼むよ!」


 「そーなんだ、大変そうだね。よしっ、ここはお姉ちゃんが優しく面倒見てやるか!」


 細い腕をまくり上げてふんっと力こぶを作って見せた。……作れて無いけど。ついでに言うならTシャツだから捲る袖もない


 そこへ……、

 ♪〜♪、♪〜♪



 高樹さんからLIMEが来た。近くに着いたみたいだ! 俺は厨房に居る店長に声を掛けてから階段を登り地上に出た。そこには……、


 眩しい日差しが射す中で、避暑地のお嬢様の様な水色のワンピースに、麦わら帽子を被った細身だがスタイルの良い色白眼鏡美人が立っていた。 


 「なんか階段降りるの躊躇ちゅうちょしちゃって……」


 少し照れて笑う高樹さん、天使か?


 「あー、ポスターやステッカーベタベタ貼ってあるからねー! 一見いちげんさんは入り辛いよね。それより高樹さん、その服凄い似合ってるよ!

 未来姉可愛い子大好きだから喜ぶぞー♪」


 「もうっ、田所くんっ!!」


 めっちゃ赤くなってる(笑)こりゃ未来姉に新しいおもちゃ与えちゃったかな?


 

 ※



 貼り巡られたポスターやステッカーを興味深く見ている高木さん、『あっ、このバンド知ってるー♪』とか『あー、Charlotteだ!』なんて言ってキョロキョロしている。見た目が清楚系なのにバンギャってギャップ萌えだよねー♪


 「高樹さん、足元気をつけてねー!」



 そして入り口の扉を開けると、ニッコニコの未来姉がお出迎えだ(笑)



 「『no doubt』へ、ようこそっ! 暑い中よく来たねー、さっ、入って入って!」


 「未来姉、客じゃないからな、面接に来たんだぞ!」


 俺の話なんて聞いちゃいない未来姉は、高樹さんの手を引いて店の中に引き込んだ(苦笑)


 「あ、あの……高樹たかぎ朱里紗ありさです。宜しくお願いします」



 手を引かれて店内に入った高樹さんは、緊張した面持ちで麦わら帽子を取って頭を下げた。


 それを見た未来姉、バンバンと俺を叩いて、


 「なになにー? ウチの学校にこんな美少女居たのーっ? お人形さんみたいだよー! もぉー採用っ、決定っー!!」

 

 えーっ、入学当初すげー美人が入って来たって大騒ぎだったんだけど! まぁそれからずっとマスクしてたしねー。そっか、未来姉は頭の中シンちゃんが帰って来る事ばっかりで知らなかったんだな。


 そこに店長がやって来て、


 「彼女が悠真の友達? でかしたっ悠真っ! これはスーパールーキーだわっ!! 

 あっ、……初めまして、私が店長の藤崎ふじさきあかねよ、宜しくね♪」

 

 店長の茜さんは俺に親指をグッと立ててウインクした。良かった、好感触だね!


 「これって私、……採用して頂けるんですか?」


 耳まで真っ赤になった高樹さんは半信半疑な顔で茜さんを見て言ったけど、


 「逆に不採用にする理由が何処にあるって言うの? こっちからお願いしたいわよ!」


 何故か俺に向かってキレ気味に言った。痛い痛い! もー肩バンバン叩かないでよ!


 「ありがとうございます! ……これ履歴書です。あと一応仕事内容を教えて欲しいので面接はお願いします」


 それを聞いて茜さん、


 「なんてしっかりしてるの! それじゃそこのソファーに座って♪」


 「茜さん、私も一緒にいーかな?」


 ……未来姉、目をキラキラさせてるよ(笑)




 

 それから高樹さんは面接と言うよりも二人に質問責めにあっていた。好きな食べ物は? とか、どんな人がタイプ? ……なんて、終始戸惑っていた高樹さん、このテンションについて行けるのかな?





 つづくー!

 本編はここまでっ♪



 🌸読んで頂きありがとうございました🍒

  コメントの返信は日曜日になります



 🎸ここから先は補足&雑談コーナー🎸

 


 はい、シンちゃんがかまってくれないから、みっくには新しいおもちゃを与える事にしました。(笑)

 ちょっと話はラブコメ展開に進んでいきます。ライブシーンを見せろと言う方、ちょっと我慢して下さい。悠真のターンはしばらく続きます。


 

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