第36話 初練習!


 『カッコいいの出来たからなー!』

 『今夜店で音出すぞ!』



 ……多分、これが『夜寝かさない』に変わったんだろうな。全く二人で何喋ってるんだ?


 俺は横川にスマホを見せて、夜中まで練習するって事だよ、と教えてあげた。

 『そりゃそーよね!』なんて言ってたけど、未来姉のクラスでは誤解は解けてるのかな?



 まっ、どーでもいーや! とりあえず家帰って練習しよ! 俺はカバンを持って教室を出ようとしたら高樹さんが、


 「田所くん、あの、……今度お店に遊びに行ってもいいかな?」


 モジモジしながら言ってきたから、


 「いつでも好きな時においでよ! 高樹さんが好きそうなバンドが出る日教えるからさ」


 そう言ったらめっちゃ喜んでた。あの日以来高樹さんは、マスクも外し、教室でも堂々とラノベを読んでいる。『氷の美女』は、もうすっかりとっつき易くなり、横川のおかげもあってみんなと仲良くなっていった。


 「私もね、これからやってみようと思う事があるんだ!」


 「んー? 何やるの?」


 「今はまだナイショ、ちゃんとしたら教えるね♪」


 高樹さんはウフフと笑いながら人差し指を立てて口に当てた。普段はクールで綺麗なんだけど、笑うと年相応で可愛いよね! そっかー、やりたい事あるんだ。なんか楽しそうでいーな!



 ※



 俺達は夕飯を食べ終え、店のカフェスペースでシンちゃんが持って来たデモテープを聞いていた。


 「とりあえずbpm150でベースはルート弾き、ドラムはエイトビートで作ってあるけど合わせた時に自分達で考えてやってみてくれ」


 ♪〜♪、♪〜♪


 「シンジっ、歌悪く無いじゃん! なんかリアムっぽい感じするよねー!」


 「あー、わかる! 曲もoasis味あるしね♪」


 俺達は譜面を見ながらイメージを膨らませていた。


 「コード進行だけ覚えたら行こうぜ!」


 シンちゃんの掛け声と共に立ち上がり重い扉を開けてステージへ向かう。


 あぁ、いつもの見慣れたステージだけど三人で立つと雰囲気変わるな!

 目の前にはいつものルーティンをしている未来姉とチューニングを合わせているシンちゃんが照明に照らされている。本当に三人でバンド組んだんだな! ちょっとウルッとしちゃうよ。


 セッティングを済ませて、ヘッドホンを付けテンポを覚える。


 タン タタン、 タン タタン♪

 チチチチ チチチチ チチチチ チチチチ♪

 ドゥカドゥカドゥカドゥカ ターン♪


 「こっちはオッケーだよ!」


 未来姉もベースを低く構え、赤眼鏡をかけてウインクしながら、


 「私もいーよ!」


 「OK、それじゃ悠真っ、よろしく!」


 カンッ カンッ カンッ カンッ♪



 まずはエイトビートでリズムキープだけ心掛けてシンちゃんのギターと歌に合わせてみる。


 シンちゃんの少しかすれた声で、マイクスタンドに噛み付く様な感じでぶっきらぼうに歌う姿、ロックっぽくてカッコいいよね。

 未来姉もルート弾きで暫く様子を見ていたが、二番のAメロから少しずつ動きを入れて来た。


 Bメロ、サビへと進み、シンちゃんのギターソロ、そしてラスサビへ。うん、だいたい感じがつかめて来たぞ!



 ジャッジャッ、ジャーン♪ ドゥクドン♪


 「だいたい全体の流れはこんな感じだ! 各自でちょっと練習してみよう」



 ※



 Aメロ→Bメロ→サビ、Aメロ→Bメロ→サビ、

→間奏→Cメロ→サビ


 リズムは基本パターンで後は少しずつオカズを入れて……。未来姉は? 


 ドゥードゥ、ドゥドゥドゥドゥーン♪

 ドゥディドゥディドゥディドゥー♪


 ……既に好き勝手やっていた(笑)


 「シンジィー、サビはコーラス入れる?」

 

 未来姉が変な呼び方してるし。


 「そうだな! ……てか、向こうじゃメンバー達が『シンジィ』って呼んでたよなー! 懐かしいな♪」


 ……『シンジィー』ね(苦笑)俺も呼んじゃお♪


 「シンジィー、もう一回みんなで合わせてみようよー!」


 「んっ? ……悠真に言われるとなんかムカッとくるなー!」


 ……ヒドい(泣)とりあえずカウントを取る。


 カンッ カンッ カンッ カンッ♪ 



 俺は多少手数が増えた位だけど、未来姉のベースラインが変わって前よりグッと深みを増した。シンちゃんも印象的なリフの後、コードバッキングにアルペジオを織り交ぜてメロディアスになった。


 「シンちゃん歌嫌がってたみたいだけど、こういう曲にはその声合ってると思うよ!」


 「うん、荒々しい感じでいーんじゃない? でも、私が作る曲はもっとポップになると思うんだけど……」


 「いーんだよ! 俺達でやるならなんでもアリだろ? It's all right! それじゃもう一回やってみるか?」



 その後リズムパターンを変えてみたり色々試したけど、結局最初のが良いって事になった。シンプルなUKサウンドだしね! 

 

 「楽しいねー! 一曲しかやってないのに私達のオリジナルだから全然飽きないよー♪」


 「これからどんどん作っていくけど、悠真もやってみたいのが出来たら遠慮しないで持って来いよ! 色々試してみたいしなー♪」



 ※


 

 ……気がつけば深夜二時だった。ちっちゃい頃は三人で遅くまで遊んでたら親に『早く寝なさいっ!』って怒られてたけど今は何も言われなくなった。もう俺達大人だしねー、そろそろお開きにしようよ、ねっ?



 「今夜は寝かさないって言っただろ! ちょっと休憩したらまたやるぞっ!」



 ……あぁ、まだ子供のままの人がいた(苦笑)


 「シンジっ、明日も学校だよっ! 目の下にクマ🐻作って学校行ったら、またみんなに何言われるか分かったもんじゃないわ!」


 「んじゃ、……あと一回っ!」


 「ダーメ! この後シャワー浴びるし、女の子はお肌のお手入れもあるの! 寝る時間なくなっちゃうよ! 文化祭終わるまでのんびりやるんじゃ無かったの?」


 シンちゃんは親に怒られた子供の様にシュンとして「わかったよ」と言いながら片付け始めた。


 それでもシンちゃんは、片付けながらも口を尖らせ子犬の様な目でチラチラ未来姉を見ている。……本当子供か?



 「もーっ、しょうがないなぁ、あと一回だけねっ♡」



 ……未来姉っ、甘すぎるよー! ダメだ、このままじゃ無限ループが始まる!


 「それじゃ、俺っ、宿題あるからー! おやすみー!」


 そう言って俺は逃げる様にステージから降りて扉に向かった。そーいやシンちゃん、ちっちゃい頃も一緒にゲームやってて勝つまでやめなかったもんなー。


 シンちゃんの「待てコラー!」って声を重い扉がかき消した。


 ふーっ、シンちゃんもシンちゃんなら未来姉も未来姉だよ! 確かに楽しかったけど、もう付き合ってられないから! いい加減眠いし⤵︎

 


 

 

 つづくー!

 本編はここまでっ♪



 🌸読んで頂きありがとうございました🍒

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 🎸ここから先は補足&雑談コーナー🎸

 

 3人でやるならシンプルなUKロックの方がいいかしら? 

 ※リアムっぽい……oasisのボーカル、リアム・ギャラガーの事


 oasisを初めて聴いたのが『Wonderwall』だったと思うんだけど、その後聴いたのはあの大ヒット2ndアルバム『モーニング・グローリー』でした。


 あくまで私の持論ですが、メジャーデビューしてアルバム作ると大体2枚目まででストック無くなると思うのよね、3枚目からガラッと印象変わっちゃって聴かなくなったバンド結構あったわ。


 oasisは3枚目以降も好きだったけど、兄弟喧嘩のイメージばっかりになっちゃったからねー、最近のリアムは好き♡


 好きなバンドは3枚目以降も好きだけど、全体的にみると割と2枚目のアルバムが好きな事が多い気がします。


 

 

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