第35話 モヤモヤするのは……。


 あぁー、モヤモヤするー!



 私は夏の強い日差しを浴びながら汗だくになってグランドを走っている下級生達を、エアコンの効いた教室の窓際から眺めていた。


 そりゃ私が『あーちゃんにギター教えてあげて』って言ったわよ!


 『未来の大切な友達だからちゃんと教えてあげてるんだろ?』


 ……なんて嬉しい事言ってくれるけど、後ろから抱きついたり手を握ったりとかやりすぎじゃない? スキンシップが激しいのよ! 私には全然してこないクセにっ!


 ……かっ、顔だって近かったしっ!

 『上手く出来たね』とか言ってそのままキスしちゃいそうだったもん!


 それって、外国に住んでたからなの? 戻って来てからやたらオーバーアクションだし、『What?』『Oh No!』とか言うし……。


 あっちじゃ普通だったのかな? 誰とでもキスとかハグとかそーゆー事してたのかな……。




 すると突然、



 「みっく、ごめんねっ!

 私っ、浅井くんの事、優しいしカッコいいなぁーって思うけど、みっくから奪うつもりとか全然ないからっ! 

 本当に親身になってギター教えてくれて嬉しかっただけなの!」


 真っ赤になってあーちゃんがガバッと立ち上がり、私に向かって頭を下げて来た。


 「えーっ、そんなぁ! あーちゃんが悪いんじゃないよーっ、だから謝らないでぇーっ!


 ん? ……って事はまた私、心の声喋ってたのぉー?」



 先生は首を振り項垂うなだれて、


 「……そーだよ、田所! それに浅川もいちいち返事するな! 頼むからそーゆーのは休み時間にやってくれよー!」



 あははは ははははっ♪

 キャーーッ! キャーーッッ!!


 泥沼三角関係かー! みっく頑張れー(笑)



 あぁーっ、もう教室中大騒ぎだわ! これじゃこの先、万が一よ? シンジと何かあってもクラスのみんなには筒抜けになっちゃうわ⤵︎



 ※



 ー昼休みー



 あー、なんかシンジの顔見るの恥ずかしくなっちゃったわ、どーせアイツは何とも思って無いだろうけど、…………あ、来た。


 教室の扉を開けて、相変わらずクラスのみんなに揶揄われながらこっちにやって……って、あれ?


 ……なんであーちゃんの隣の席に座るの?


 「Thank you! あーちゃん、キミのおかげでスッキリしたよ!」


 と、両手を掴んでブンブンさせてた。



 キャーーッッ! キャーーッッ!!

 スッキリしたって、あーちゃんナニしたのーっ?


 「私っ、なんにもしてませんっ!!」


 両手を掴まれ、真っ赤になってるあーちゃんにシンジは微笑みながら、


 「キミに教えていて、俺も師匠に教わっていた頃を思い出したんだ。初心に帰ったおかげでなんかモヤモヤしていたのがスッキリして曲が作れたよ!」



 ……まだ、手、握ってる。


 「そ、そうなんですか。良かった!」


 そして今度は頭をポンポンして!


 「また練習付き合うよ、今日は礼が言いたかっただけだから!」


 キャーーッッ♡♡

 キャーーッッ!!

 頭ポンポンしたわよー! みっくー


 顔を真っ赤にしたあーちゃんから離れて、今度は私の席にやって来た。


 「未来ーっ、腹減ったよー! さぁ食おうぜー!」


 「……」


 シンジは隣の席に座り、悪びれる事もなく私を見てお弁当の催促をしている。

 いつもの様に机をくっつけて向かい合わせになって二人で食べる。やだなー、みんなチラチラ見ながら聞き耳立ててるよー!


 「美味うまっ! それでなー! モグモグ……うっっ!」


 ……みんなの視線なんてお構いなしに、口いっぱいにご飯を詰め込み喋っている。可愛く言えばリス🐿️だけど、みんなの目にはゴリラ🦍に映ってる事だろう。


 「あーっ、もう! ちゃんと食べてから喋りなさいよっ、ほらっ、麦茶っ!!」


 胸をトントン叩いて麦茶で流し込む。シンジは何でそんなに自然で居られるの? 私ばっかりこんなモヤモヤして……ズルい。


 「でな! 昨日帰ってからずっと曲作ってたんだよ! なんかさー、未来や悠真の事思って、なんも考えずに三人で出したい音をって考えたら自然と出来たんだ!」


 まるでドッジボールをしてた頃の様な目をして嬉しそうに話してる♪


 ふふっ、モヤモヤしてたのがバカみたい! 


 あーちゃんの事だって私の為にやってくれた事だし。そうよね、シンジはバンドやるのを楽しみに帰って来たんだもんね。私が変に意識し過ぎてたんだ!


 「そっかー、じゃあ今夜はライブの予定が入って無いからお店で音出してみよっか?」


 「Oh! いーねー! じゃあ悠真にLIMEしておこう♪」


 『カッコいいの出来たからなー』なんて、喋りながらスマホをポチポチするシンジを見てたら、さっきまでのモヤモヤは何処かに吹き飛んでいった。


 「よしっ、送信っと♪

 あー、楽しみ過ぎる! 未来の作ってくれた弁当も食べたし、もう帰ろうかなー?」


 「ダメだよー(笑)ちゃんと午後も授業出るんだよ! 私は放課後練習してから帰るから」


 シンジは笑いながら手を振って行った。そして教室を出る間際に私に向かって大声で、


 「それじゃ未来っ! 

 俺、一旦家に帰ってシャワー浴びてから行くからー、今夜は寝かさないぜー! See ya!」


 キャーーッッ!! キャーーッッ!!

 キャーーッッ♡♡ キャーーッッ♡♡


 みっくーっ、ついに彼とーっ!!

 三角関係じゃなかったのー?


 仲直りの後は燃えるって言うしねぇー♡



 もう蜂の巣突く所の騒ぎじゃないわ! 突いた事ないけどっ!



 「違うのぉー!! みんなそこだけ切り取らないでぇー!!」

 


 ※




 ー放課後、悠真のクラスー



 横川がハァハァと息を切らして、教室の扉を勢いよく開けて俺に向かって大声で叫んだ。


 「ねぇー、悠真っ! お姉さんが今夜転入生と仲直りえ⚪︎ちするって! 今夜は寝かさないって言われてたみたいよー!」



 ……未来姉達、一体何やってんだ、全く⤵︎


 

 

 つづくー!

 本編はここまでっ♪



 🌸読んで頂きありがとうございました🍒

  コメントの返信は日曜日になります



 🎸ここから先は補足&雑談コーナー🎸

 

 みっく、皆様わかってると思いますが、結構ヤキモチ焼きです。シンちゃんは女の子なら誰にでも優しくするので気が気ではありません。←師匠夫妻に『女の子には優しくするもんだ』と教え込まれているからです。


 とにかく音楽の事しか頭にないシンちゃん、この先二人のラブコメ展開はあるのでしょうか?

 

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