第8話 悠真、頑張る!
俺達は後片付けもほどほどに、セッティングを始めた。
トン、ズズドン、パァン、タン、タタタン♪
ドカドゥカドゥカドゥカ、パン、シャーン♪
……よしっ、やってやるぞ! 俺は大きく息を吸って、
「未来姉っ、コッチはOKだよ!」
そう伝えると未来姉はピョンピョンと飛び跳ね、頭を左右に振るいつものルーティンを終えると赤眼鏡をかけて俺にウインクをした。
スティックを鳴らしてカウントを取る。
カン、カン、カン、カン……
ズコズコズコズコズコズコズコズコッ♪
シャンシャンシャンシャンーー♪
シンバルとツーバス連打に合わせて未来姉のベースが
bpm170でリズムを刻んでいく。ロットの曲はこのテンポが一番多い。ちょっと早いけどジャンヌさんが歌いやすいのだろう。
ドゥディドゥディードゥドゥ、ドゥディドゥドゥー♪
未来姉、相変わらず楽しそうに弾くなぁ、つい見惚れてしまいそうになる。
左右に動きリズムを取りながらステップを踏み、俺を見てウインクする。
(悠真っ! バッチリだよー♪)
マリアさんの教え方が上手いんだよ! この曲のフィルイン、好きなんだよねー♪
ドゥクドン、ターン、ドクドク、パシーン♪
思わずニヤニヤしてしまった時、未来姉と目があった!
(楽しーね! ジャンヌさん達と一緒にやりたいねー♪)
我慢出来なくなったのか、未来姉はカウンターに座って見ている三人にネックを向け、お尻をプリプリ振りながら挑発し出した(苦笑) ホントにこの人は……。
「……未来ちゃん、私達を挑発してるわよ、どーする?」
ジャンヌさんが苦笑いして言うと、ギターのアリエルさんが、
「私、混ざりたくなっちゃった♡」
……と言ってギターを持って俺達の居るステージに向かって来た。
シールドをアンプに差し込み俺達のリズムに合わせて、ジャカジャカとカッティングを始めた。
「やったぁー! アリエルさぁーん♪」
もう未来姉、嬉しくて飛び跳ねてるよ!
ここからアリエルさんの流れる様なギターソロが始まり、俺達は食い入る様に見つめながらリズムをキープする。
「私も、行ってくるー♪」
ミーシャさんもステージに駆け寄り、俺達の音を包み込む様に鍵盤を鳴らし始めた。
四人の音が合わさり、一つの塊になって店中に響き渡る。
……す、すげぇな! 飲み込まれそうだ!
俺は必死にリズムキープをしてみんなに食い下がる。
未来姉は相変わらずニコニコしながらステップを踏み重厚な音を弾き出し、俺の顔を覗き込んでウインクして、
(大丈夫、大丈夫っ!)
と、口パクしてきた。 ……余裕なのか?
するとカウンターからステージに向かってゆっくりとジャンヌさんが歩いて来た! そしてマエストロの様にステージ中央に立ち、振り向き俺達を見回した後、右手を高々とあげ、そしてギュッと拳を握った。
俺達の演奏が一度止まったのを確認した後、大きく息を吸ってマイクに向かった。
♪『最後に何か
言い残した事はあるかしら?』♪
ジャンヌさんのセリフの後にシンセから壮大なパイプオルガンの音色が流れ出す。
ロットの代表作『反逆の果てのレクイエム』だ!
パイプオルガンの調べが終わると次はギターのリフが始まり、未来姉のベースがユニゾンする。それに合わせて俺のスネアがタン、タンとリズムを取る。徐々にペースを上げていって、四人の音が合わさると全身に鳥肌が立った!
……すげぇ、さっきアンコールでやってた曲を俺が叩いてるよ!!
未来姉は俺を見て嬉しそうにステップを踏み流れる様なベースラインを奏でている。
ミーシャさんもアリエルさんも、俺を見て笑ってくれている!
そしてジャンヌさんの伸びのある歌声に飲み込まれない様にリズムをキープする。
楽しい! 楽しいっ! すげー楽しいっ!
ただそれだけだったが、その思いを込めて叩いた俺のドラムは、今までで一番良い音がしていた。……と思う。
※
時間にして約十分程の出来事が、俺にとっては今後のドラム人生でのターニングポイントだったと言える位の時間だった。
そしてそんなやり切った顔の俺を見て、ジャンヌさんは気高い声で言った。
「悠真くん、……日曜日は私の執事になりなさい!」
つづくー!
本編はここまでっ♪
🌸読んで頂きありがとうございました🍒
コメントの返信は日曜日になります
🎸ここから先は補足&雑談コーナー🎸
『反逆の果てのレクイエム』(笑)
厨二病っぽいでしょ♪ 良くわからないけどカッコいいでしょ?(笑)
そんなこんなで悠真と未来はフェスに参加するのでした。そんな簡単にいくのかしらー?
定期的におねだりしないとだよ!
『❤️と⭐️、フォローをしてから次の話に行きなさい!』
……ってジャンヌさんが言ってます!←私はそんなおねだり娘ではない(すっとぼけ)
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