第26話 シンちゃん、怒る!


 音楽室に近づくにつれ聞こえて来るこの微妙な演奏……ま、まさか、な。No way!


 「おい、見ろよ! ちょうど未来達のバンドやってるじゃん、ラッキー♪」


 そう言ってタケシは音楽室の窓から中を覗き込んだ。……マジか?



 ※



 『ふゎふゎ◯ぁ〜ぃむ♪』『ふゎふゎ◯ぁ〜ぃむ♪』


 ジャジャッ、ジャーン♪


 パチパチ パチパチ👏

 パチパチ パチパチ👏


 「やったぁー! あーちゃんソロ上手く弾けたねー♪」


 「みっくが色々教えてくれたからだよー!」

 

 「ドラムもちゃんとリズムキープ出来てたし、あと三ヶ月あれば何とかなりそうだねー!」


 「みっくがベース弾くと叩きやすいよー♪」




 ……ども、悠真です。

 あー、いーなぁ、キャピキャピしてて♪


 こういうの青春って言うんだよなー、来年俺も軽音部入って女の子達とキャッキャウフフしながらバンドやりたいなぁー♡



 そこにいきなり、


 ガラガラガラーッ!!




 「「「「キャァーーッッ!!」」」」



 この和やかな雰囲気をぶち壊す様に乱暴に扉を開けて入って来た奴が居た! 


 誰だっ? ……って!!



 「シッ、シンちゃーん? なんでココに? 帰って来るの明日じゃなかったっけぇー?」


 そこには鬼の形相で未来姉を睨みつける私服姿の茶髪の男が立っていた。


 そして未来姉に近づき、声を荒げて、


 「お前っ、あれだけベース上手くなったって自慢してコレか? 

 ……俺達バンド組んで天下取るんじゃなかったのかよっ! ふっ、ふざけんなぁーっ! Screw you!!」


 「シンちゃん、違うよ、未来姉は……」


 「おっ、お前悠真かっ? デカくなったなぁー! ん? ……って事はお前もグルだったんだなっ!」



 突然の出来事に静まり返った音楽室。



 ……そんな中、未来姉はつかつかとシンちゃんの前に立ち、背伸びをし手を伸ばして頭に触れて、



 「背ぇー、伸びたねぇー! 

 ちょ、……ちょっとだけカッコ良くなってるしっ……♪」



 シンちゃんをチラチラ見ながら頬を赤らめてモジモジしている未来姉を見て、張り詰めた音楽室の空気が一気に和らいだ。



 「おっ、お前も、……可愛くな……じゃねぇーよっ!!

 それより何だあの下手くそベースは? そんなんで俺に勝てると思ってるのかっ?」


 「あーっ、髪も! ……茶髪になってるし♪ ほら見て見てっ! 私の髪は『ミルクティーベージュ』って言うんだよ♪ 可愛いでしょ?」


 未来姉、舞い上がっててシンちゃんの話全然聞いてないな……。


 「シンちゃん、落ち着いてっ! 今の演奏は違うんだよ!」


 「What? 何が違うんだよ! 手ぇ抜いたとでも言いたいのか? それじゃ他のみんなに失礼だろっ!」


 怒りが収まらないシンちゃんに対して未来姉は、スタンドに立て掛けてあったベースを取り『よいしょっ』って言いながら肩に掛けて、


 「Hey shinji ♪

  I'm leftyー! understand? yeah!」


 右手でネックを持って左手で弦をバチバチさせながらウインクをして満開の笑顔を見せた。


 ……何で英語?


 「聞いてぇー! まだ弾き始めて一週間ちょっとでコレだよ! 凄くなーい?」


 ドゥデドゥディドゥディドゥー、ドゥデン♪


 顎を上げてドヤ顔で左利きベースを弾く未来姉。


 呆然と立ち尽くすシンちゃん。……うん、分かるよその気持ち。



 ハッと我に返ったシンちゃんは何故か俺に向かって、


 「why? 悠真っ、……アイツは『右利き』でいいんだよな?」


 ……何で俺に聞くの? 


 「未来姉ぇー、もう面倒くさいからシンちゃんに本気のヤツ見せてやれよー!」


 「えーっ? 私、今日『レフ子』しか持って来てないよー!」


 ※レフ子……未来が勝手に名前をつけてる左利きベース


 なんて言ってたら部長さんが、


 「私のベース使っていいわよ! 愛しのダーリンにカッコ良いトコ見せてあげなさいよ♡」


 そう言って自分のベースを未来姉に手渡した。それを見たシンちゃんは未来姉の隣に居た友達のあーちゃんさんに近寄り耳元で、


 「Excuse me! 悪いんだけど、……ちょっとだけ俺に君のギター貸してくれないか?」


 優しく微笑み、あーちゃんさんだけに聞こえる声で囁いた。


 「は、……はいっ♡」


 シンちゃん……、イギリスで何勉強して来たんだ? あーちゃんさんはフニャフニャになって、まるで催眠術にかかった様にギターを手渡した。


 「Thank you! ありがとう、大切に使わせてもらうよ!」


 あーちゃんさんの肩を優しくポンポンと叩いたら、彼女真っ赤になってその場に座り込んじゃったよ!


 そしてギターを手にした途端、俺に向かって乱暴な口調で、


 「おいっ、ぼけっとしてないで悠真もドラム借りて三人でやるぞ! ……てかオマエ、本当にちゃんと叩けんのかぁ?」



 ……ちょっとカチンときた! よーし、やってやろうじゃんか!!

 

 未来姉の友達のドラムさんに『すいません』と頭を下げて貸してもらった。スティックはいつも持ち歩いてるからねー♪


 「半音下げチューニングでよろしくっ!」


 そう言ってシンちゃんは「やっぱストラトはいいよなー、ん? ……コレどこのメーカーだ?」なんて人のギターにいちゃもんつけていた。


 「借り物なんだから大事に使おうねー♪」


 未来姉はシンちゃんと一緒にやれるのが嬉しくてたまらない様子だ。


 ドラムセットの位置を直して……と、


 トン、トン、トン、ズダドン♪


 スネアを叩き、バスドラを踏んで、


 「二人共っ、準備オッケーだよ!」


 未来姉はいつもの様に低い姿勢で構えた後、ピョンピョンと二、三回ジャンプして頭を左右に振った。

 そして胸元から赤いメガネを取り出し、シンちゃんをチラチラ見ながら恥ずかしそうにかけた。


 「私も、……いつでもいーよ!」


 シンちゃんは眼鏡姿の未来姉を見て暫く固まっていた。見惚れてんのかーい!


 「そっ、それじゃキーはEで! 先に弾くからお前ら俺についてこい! Follow me!!」



 なんで偉そうなんだ? この人は……。



 そしておもむろにコードをジャーンと鳴らしたら、それまでの空気が一瞬で変わった。


 音楽室にいたみんなの背筋がピンとなったのがわかる。


 ♪ズッズチャー、シャカシャカシャカシャカ、ディィロリロ、トゥイーンティロリロリロリーン♪


 シンちゃんは俺達二人を見て、ニヤリとした後、高速で指を弦に滑らせていった。


 そしてかき鳴らしたコードはE7(♯9)だった。




 つづくー!

 本編はここまでっ♪



 🌸読んで頂きありがとうございました🍒

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 🎸ここから先は補足&雑談コーナー🎸



 ついに再会しましたよ! みっく舞い上がってます(笑)みっく達の文化祭バンド、楽しそうだよねー♪ ぶっちゃけ『けいおん!』や『ぼざろ!』初心者には弾けない曲いっぱいあるよね、ぼっちちゃんはともかく、唯ちゃんは初心者じゃ歌いながらなんて絶対弾けない曲やってるもんねー(笑)

 私はリアルタイムで『けいおん!』見てなかったけど楽器屋で『あずにゃんモデル』こと赤いフェンダーのムスタングがめっちゃ品切れになったとか話題になってたのは覚えてるわ!


 みっく達が練習してるのはコレ!

 放課後ティータイム『ふわふわ時間(タイム)』コレは『けいおん!』の中では簡単な方


 https://youtu.be/I0xRbWqIohQ?si=TWEUB9m8ETLni5I-

 

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