第47話
問題が全くなかったわけではないが代官を務める村に顔を出していた。
畑では成長の早い葉物野菜の収穫が始まっている。
遠目からみただけではあるが育ちは悪くなく自分達が食べる以外をウィンドブルに出荷すればいい値段になるだろう。
大人も子供もいい笑顔をしている。
普段はダンジョンに出稼ぎに出ている若い者達も収穫に参加しているようだ。
鉱石を運ぶために使っている荷台で街まで運ぶのだろう。
ヒイロを見かけた子供達が元気よく手を振っている。
それに応えつつ村長の元を訪ねた。
「村長。何かお困りのことはないですか?」
「困ったことですか・・・。食料が安定したのはよいのですが妊娠した者が多くてですね・・・」
「あぁ。妊娠初期は動けませんからねぇ・・・」
この村では女性達も立派な労働力だ。
安定期に多少動くならまだしも妊娠初期に働くなど論外だ。
「子供達も頑張って手伝ってくれてはいますがそれでも手が足りていない状況です」
ドワーフ達を派遣してもよいが亜人に対するアレルギーを持つ者もいる。
迂闊に派遣すると後々大問題に発展するかもしれない。
「そういうことならしばらくは僕が手伝いましょう」
「ヒイロ様がですか?」
「こう見えて農業は得意なんですよ」
実際、大魔王である父のダンジョンでは大規模な農地を管理していた。
この村の規模の農地であれば問題ない。
ヒイロは鎌を手に持ち収穫作業を続ける子供達の中に入り込んでいった。
子供達と収穫のスピードを競ってみたりと黙々と収穫作業を続ける。
いつの間にか荷台には野菜が山積みとなっていた。
普段、出稼ぎをしている若者達が荷台を引いて村を出る。
初回であるし万全を期す為にヒイロもそれに同行する。
道中はヒイロを恐れて野生動物も魔物も近寄ってこない。
街に辿り着き、門を抜けるときにちょっとした裏技を使う。
普通であれば長蛇の列に並ぶ必要があるが領主であるラスティンから受け取った代官である証拠のプレートを使い貴族用の門から街に入る。
その後は市場を仕切っている商業ギルドに許可を取り露店を出して野菜を並べる。
同じように野菜を並べている者もいるがそれに対してこちらの野菜の方が立派だ。
続々とお客さんがやってきて山とあった野菜はあっという間に完売した。
その後は村で必要な塩と小麦を購入し村への帰路についた。
問題なく終わったかに見えたがこの時、村への悪意を募らせている者がいるなど予想などできなかった。
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