第48話
「くそ。俺達は食うもんがないってのによ」
「あれだけの野菜を売りにくるんだ。俺達が奪っても問題ないだろ」
彼等は食い詰めて山賊になった人物たちだった。
ヒイロや村人の後を追いかけて場所を特定し、仲間を集める。
村の防衛設備を見て驚いたがそれだけだ。
動くのは深夜。
それまでじっと身を潜める。
時間になり防壁にロープをかけ登ってゆく。
夜間の警備をしている村人もいたが圧倒的に足りていない。
門の近くにいた村人は殺され門が内側からあっさりと解放される。
山賊達は嬉々として村を襲い食べ物を略奪していく。
村人のほとんどが寝静まっている時間だ。
山賊達は抵抗を受けずに食べ物だけを奪って去っていった。
翌日、ヒイロが村の様子を確認しにいくと村は悲痛な空気に包まれていた。
村人が殺され、大事な食料も根こそぎ奪われた。
希望が見えた後の絶望は想像よりも残酷だ。
ヒイロは村をダンジョン化していなかったことを悔やんだがするべきことをするべきだ。
ヒイロはダンジョンから三日月を呼び寄せた。
ブラックウルフである三日月は嗅覚に優れている。
その嗅覚を頼りに犯人たちを追跡する。
犯人達の住処は割と簡単に見つかった。
今は奪った食料で宴会でもしているのかドンチャン騒ぎをしている。
ヒイロは魔王の覇気を全開にして突撃した。
犯人達は息をすることもできずもがき苦しむ。
そのまま放置してもいいがそれではヒイロの気が済まない。
犯人達の首を剣で跳ね飛ばしていった。
それはただ、作業のようにタンタンと行われた。
奪われた食料をアイテムボックスに回収しそのまま現場を後にする。
村に戻ったヒイロが見た光景は亡くなった人を送る準備をしている村人達だった。
骸を中心に木を組み火葬をするのだろう。
この時代、死体から伝染病が広がる可能性は指摘されておりそれは事実だった。
土葬をする地域もあるがそういった地域では度々伝染病が発生しており人知れず村が滅ぶなんてこともある。
ヒイロは奪い返した食料を返却し葬儀に参加した。
どうか安らかに眠ってほしい。
亡くなった人物と特に親しかったわけではない。
それでもそう思わずにはいられなかった。
ヒイロはその日、誰にも知られることなく村をダンジョン化した。
このような悲劇はもう二度と起こさせない。
そう強く誓った。
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