第46話
「ラキア姉さん?」
「ヒイロ。よく聞きなさい。お父様の教えを思い出すのよ」
「父上の?」
大魔王である父の教えはいくつかあるが今の状況で思い出せということは重大な教えであるはずだ。
そう言えば、過去に大問題に発展したことがあったはずだ。
大魔王のダンジョンに人間の子供が捨てられ幹部の一人が不憫に思い保護した。
多くの幹部が反対する中、その幹部は我が子として育てたいと申し出た。
大魔王である父はそれを認め条件を出した。
一度、ダンジョンに迎え入れた以上何があってもその子を守ること。
その幹部はその約定を守り子育てをはじめた。
その子もその期待に応えダンジョンの運営を支えた。
そして、大魔王である父はその功績を称えその子をダンジョン族として転生させた。
それ以降も大魔王である父のダンジョンには外部から迎え入れられた者が何人かいる。
ダンジョンに迎え入れた時点で仲間であり家族である。
家族を守る為に全力を尽くせというのがいつしか掟となっていた。
「ヴラド公爵。いかなる理由があれどこのダンジョンに迎え入れた以上、僕の身内です。貴方と敵対することとなっても守り抜きます」
「ほう。若造がよく言った。儂もこのまま引き下がるわけにはいかんのう」
そう言うと殺気を放ってくる。
こちらも抑えていた魔王の覇気を解き放つ。
一触即発という事態でパンパンと乾いた音がする。
音の発生源はラキア姉さんだった。
「お父様から伝言があるわ。私は同族を守るのに必死で戦うことしかできなかった。しかし、もしも我が子が関係を改善する可能性があるなら好きにするといい」
「大魔王の意志か。それを無視するわけにもいかんの」
そう言ってヴラド公爵は殺気を散らす。
こちらも魔王の覇気を解除する。
「ヒイロ。お父様は貴方の可能性にかけた。この意味はわかるわね?」
事故のようなものであれ吸血鬼との均衡を崩した。
しかし、平和的に迎え入れたことにより新たな可能性が生まれた。
長年にわたり不干渉であった二つの種族が交流すれば何かが変わるかもしれない。
「そちらの意志はわかった。だが、しばらくこの小娘は預かるぞ」
「えっ?私の意志は?」
「関係ない。儂の血族がこんなに弱いなど話にならん。吸血鬼の何たるかをみっちり教えてやる」
「ヴラド公爵。貴方を信用してお預けします」
そうしてラミアはブラド公爵にドナドナされていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます