第41話
ヒイロの提供したマジックバックは非常に性能の悪い物だった。
入る量も少なく時間の固定もされていないヒイロからすれば失敗作だ。
しかし、これでも人からすればかなり貴重な物だ。
それを5個も提供された領主であるラスティンは上機嫌であった。
「提供するにあたってお願いがあるのですが」
「何だろうか?」
「村人達がダンジョンから持ち帰ったことにしてください」
「ふむ。それは構わないが何故かね?」
「マジックバックを作れることが広まればそれを目的に村に迷惑をかけるかもしれませんから」
錬金術師組合が作れる物を公表しない理由はここにある。
貴重なアイテムを作れることが判明すればその錬金術師狙い争いが起きることもある。
過去には家族を人質にアイテムの作成を強要したなんて事例も存在するのだ。
「わかった。ヒイロ殿がマジックバックを作れることは秘密にするよ」
「それでは、何かあればまたお呼びください」
そう言ってヒイロは領主の館を後にした。
ダンジョンに戻ったヒイロは第4層に宝箱を追加した。
宝箱に入っているのは領主であるラスティンに提供したのと同程度のマジックバックである。
村人達が持ち帰ったことにしたので急遽用意したものだ。
マジックバックを目的にこれで冒険者がより集まるだろう。
キルゾーンである第4層に挑むかは別問題であるが・・・。
細々とした雑務を片付けていると三日月がやってきた。
「主殿。どうか助けてほしい」
「何かあったのかな?」
「身籠った妻が苦しんでいてな。どうにかならないだろうか」
どうやら三日月は子作りに励んでいたようだ。
しかし、ここで種として進化した弊害が出た。
種族が違う三日月の子供を身籠ったことでその負荷に耐えられなかったのだろう。
「すぐに向かうから待ってて」
必要な物をまとめて第3層の森に向かう。
三日月は心配そうに苦しんでいる妻のまわりをぐるぐる回っていた。
ヒイロは鑑定魔法を使って状況を調べる。
本来であれば体内をまわっているはずの魔力がお腹の子供に吸い取られている。
このまま放置すれば三日月の奥さんの命はないだろう。
身籠っている子供も危険だ。
いくつかの薬草をすり潰し魔力回復薬に溶け込ませる。
それを少しずつ与え、魔力を回復させる。
ある程度魔力が回復したところで三日月の奥さんに契約魔法をかける。
契約することによりヒイロと魔力のパスが繋がる。
これによりヒイロから三日月の奥さんと子供に魔力を送れるようになった。
これで一先ずは大丈夫だ。
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