第40話

ヒイロが村に顔を出すと領主の兵士が待ち構えていた。


何やら領主であるラスティンが頼みごとがあるようのだが詳細は知らないらしい。


兵士達に囲まれ領都であるウィンドブルに足を踏み入れる。


街の端では煙があがりカンカンと鉄を打つ音が聞こえる。


鉄鉱石はダンジョンの近くにある炉で生成され生成されたインゴットは街の鍛冶屋に持ち込まれ日々様々な製品に加工され輸出されている。


そんな街の変化を感じつつ真っ直ぐに領主の館へと向かう。


領主の館に到着するとすぐに領主であるラスティンの執務室に通された。


「やぁ。ヒイロ殿」


気安い感じに挨拶をされて会釈する。


どうにも距離感がつかみにくい。


「ラスティン殿。何かご用件がおありとか」


「実はヒイロ殿の錬金術師としての功績を調べさせてもらってね。是非ともお願いしたいことがあるんだ」


錬金術師組合は口が軽いわけではないが領主から要請されればその限りではないだろう。


「私の功績ですか?」


「実に様々な功績をお持ちで驚いた。今日、お願いしたいのはマジックバックをいくつか作ってもらえないだろうかというお願いでね」


マジックバックとは異空間に空間を固定し見た目以上に物を入れられるマジックアイテムだ。


見た目は何でもよく鞄でも袋なんかでも可能である。


「マジックバックをですか?」


「近くのダンジョンで鉄がとれるのはご存じだと思う。馬車を増やしたりはしているがそれでも運ぶのに苦労していてね。もし、ヒイロ殿がマジックバックを作ってくれたならその辺が解消できるんだ」


確かに鉄製品を運ぶのは大変だろう。


しかし、それは商人達の仕事を奪うことに繋がる。


表向きの理由といったところか。


「裏の理由をお聞きしても?」


「あ、やっぱり気付いてしまうか。一部から代官にしたことを疑問視する声が上がっている。貴重なマジックバックの提供を受けた。だから、代官にしたという免罪符が欲しいのさ」


「なるほど」


マジックバックを作れる者は非常に少ない。


空間に干渉する技術を持つ者はほとんどいないし空間を固定するのが難しい。


作れると言ってもほいほい提供するのも問題だ。


世間一般的にはダンジョンの宝箱から冒険者が獲得したものが市場に流れているパターンが多い。


それを売りにして冒険者を集めているダンジョンもあるのだ。


気軽に提供してしまえばそういったダンジョンからクレームが入る。


「提供するのは構いません。しかし、提供できるのは5個までです」


「それで構わないよ。ありがとう」

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