第25話

ラキア姉さんが離れるとそこには顔を青くしているラミアがいた。


「ちょっと、ラキア姉さん。何を言ったの」


「貴方が大魔王の血族ってことを教えてあげただけよ」


今でこそ、父である大魔王はダンジョンの奥底から動かないが昔は違ったらしい。


吸血鬼達と敵対していた時の話は聞いたことがあったが嬉々として相手の根城に殴り込み攻め込んだ先を灰燼に帰していたとか。


それ故、協定を結んだ今でも恐怖の象徴なのだろう。


「ヒイロは知らないかもしれないから教えておくわね。大魔王の一族は吸血鬼から見たら触れてはならない者なのよ。もし、一族に手を出されたことを父様が知ったら穏便には済まないでしょうね」


父の性格を考えれば十分あり得る。


身内には甘く、敵対者は徹底的に貶める。


あれは、まだ小さい時のことだ。


ダンジョンの経営を手伝っていた時、調子に乗って人間の冒険者を相手取り怪我をしたことがあった。


その人間達は英雄と呼ばれるほど強く天狗になっていた僕の鼻をへし折った。


とどめを刺されるかと思った時、転移してきた父は一方的に相手の冒険者を蹂躙した。


それは戦いとは呼べないような有様だった。


冒険者達は高価な転移のアイテムで命からがら逃げかえったがその時のトラウマで再起不能になったと街に潜ませている使い魔から話を聞いた。


人間ごときに後れを取るとはといってその後、地獄に放り込まれたりもしたけど不器用な父なりの愛情だったのだろう。


人は強ければ強い程、ダンジョンに侵入した際に回収できるDPが多くなる。


ダンジョン族にとって英雄クラスの冒険者は貴重な収入源だ。


そんな相手を再起不能に陥らせるのは本来ならあり得ない。


しかし、父はそんなことよりも身内を優先したのだ。


独り立ちしたとはいえ、恐らく僕の身に何かあれば怒り狂うのだろう。


優しくて強い、そんな姿に憧れたのだから。




「そういえばヒイロ。一つ聞いてもいいかしら?」


「なんでしょうか?」


「鉱山エリアはまぁ、いいとしてフロアボスがおかしくないかしら」


ラキア姉さんは千里眼でこのダンジョンの状態を覗き見したのだろう。


褒められたことではないがラキア姉さんだしなぁ。


「あぁ。六本腕のスケルトンのことですか」


「明らかにその先に進ませる気がないわよね」


ラキア姉さんの言うことはもっともだ。


何せ、DPが足りなくて魔物の数が足りていない。


この状態で草原エリアを開放しても接待するのは難しい。


「DPの収益を考えると他のエリアに魔物を十分配置することができそうだけどどうするつもりなのかしら」

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