第15話
少女は街ではなくこの近くの村の住民だった。
村は木で防護柵が作られているが魔物が本気で襲撃すれば破られてしまいそうだ。
村の入り口には粗末な槍を持って中年の男性が立っていた。
少女が男性に会釈して脇を素通りする。
ヒイロもそれに続き村を改めて見まわしてみる。
入り口近辺には畑が広がり瘦せこけた農作物が植わっていた。
どうやらこの村は想像以上に貧しいようだ。
遠くに見える家もまともな補修はされておらずどの家も雨風を十分にしのぐのは難しそうだ。
「お兄ちゃん。早く早く」
「ごめん。すぐ行くよ」
ヒイロの力を持ってすれば様々な解決策が浮かぶが本来、ダンジョン族というのは人と敵対するものだ。
それに、他人から与えられた恩恵というのは簡単に奪い取られてしまう。
この村にも統治者の貴族がいるはずで、村人に施しをしても搾取されるだけかもしれないのだ。
少女の後を追いかけつつも必死に何かしてあげられることはないかと考えるがまともな答えがみつからなかった。
「むぅ。お兄ちゃん何か難しいこと考えてるでしょ?」
少女は明るい表情から頬をぷくぷくに含ませて怒ってみせる。
「この村の状況を見て、何か出来ることはないかと思ってね」
「ぁー。この村貧しいからね。作物も年々まともな物が作れなくなるし」
農地を軽く見たが明らかに痩せていた。
開拓された当初は森の豊かな土地でまともな作物が作れていたのだろう。
しかし、休みなく農作物を作り続けて土が疲れ切ってしまった。
これを改良するにはしばらく土地を休ませるか肥料を混ぜ込んでやるかだ。
お金のないこの村ではどちらの方法も難しいかもしれない。
農地を休ませればその間、収穫はなくなってしまう。
そうすればすぐに税金の支払いや食べる物に困るだろう。
肥料を混ぜる方法も物によるがどうしたってお金がかかる。
ダンジョン化させることが出来れば魔力が巡り土地が活性化するがこの村はダンジョンからもそれなりに離れている。
離れている場所をダンジョン化する方法もなくはないが通常のダンジョン化よりもDPを消費する。
今の手持ちでは到底足りなかった。
「心配してくれてありがとね。でも、村の問題だからお兄ちゃんは気にしないで」
少女はそう言ってくれるが何とかしてあげたい。
「今日は帰るね」
ヒイロは少女の頭を撫で籠を渡すとそのまま村を出てダンジョンに戻ることにした。
ダンジョン族は人を食い物にするものだ。
しかし、DPを稼ぐために保護するのも大事なことだ。
そう自分の心を誤魔化し少女の村を救うために動き出した。
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