第13話 結ばれた二人のケモノ
レンが目を覚ますと、保健室にはめえがいた。窓から外を見るとすでに昼を回っていそろそろ下校時間に差し掛かる、そんな時間であった。
「む、起きたか。体に違和感や、痛みは出ていないか?」
そう聞かれ、腕を伸ばしたり、体をひねったり、跳んだりして確認したが、大丈夫そうで「ふぅ」と息を吐いた。
「ふむ、その感じは大丈夫そうだな。サクラをこちらへ寄こそうか?」
「大丈夫です。たぶん部室にいると思うので。これから向かいます。」
「それもそうだな」
と言い、先ほどまで読んでいたであろう書物に体を戻した。レンは背伸びをして、気合を入れる。
「ありがとございます。失礼しました——」
「ちょっと待て。」
めえがレンを引き留めるとソファに座るよう促し、温かい飲み物を持ってきた。
獣人はあまり熱いものが得意ではない種族のほうが多いので、本当にあたたかい飲み物である。見たことがない飲み物で、葉っぱのようなにおいがした。色は緑色のような、少し黄味がかっているような感じの緑色をしていた。
恐る恐る飲むと、レンの舌の付け根に苦みを感じた。舌を出してまじまじと見ていると、めえが震えていた。
「すまない。みんな同じような反応をするので面白いなと思ってな。これは、『オチャ』というものらしい。ふく様が好んで飲まれているものだ。」
レンはもう一度『オチャ』に挑戦したが、やはり苦かった。
「先生が引き留めたのは、これを飲ますためですか……?」
飲むたびに反応を見て震えているめえに疑心暗鬼になり質問した。めえは首を横に振ってそれを否定した。
「リラックスしてもらおうと思って出したのだ。他意はない。それよりも、お前たちはすでに夜伽は済ませたのか?」
レンは口に含んでいた『オチャ』を盛大に噴出した。それはめえにしっかりと命中していた。彼女は何も言わず紋章を描き、風魔法を発動させた。
「『そよ風よ、その息吹にてすべてを乾かせ。』」
その風は濡れた顔や髪、服も床もすべて乾かしていた。まったく慌てず、さらっと流れるようにこなしていたのでレンは感心していた。レンは我に返り、頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!」
「今のは、私の質問が悪かった。だが、聞きたいのはそういうことなのだが、ここ二、三日リコは学園を休んでいる。」
「リコに何か……!」
「いや、連絡はとれてはいるんだ。ただ、今は手が離せない用事があると言ってな。それで先ほどの話だが、妖狐も野狐も元は狐だ。繁殖期の行動がすこし女王様、たまと似ていてな。それで聞いたわけだ。」
「は、繁殖期……。」
レンはリコのあられもない姿を想像し、体が熱くなる。
「その様子だと、まだしてはいないようだな。まじめな話、お前が嫌でなければ、しっかりと応えてやってほしい。それに繁殖期の……いや、これ以上は言うまい。まあ、私の勘違いなら忘れてくれ。」
「は、はい……。」
「そうだ、忘れていた。ポチおがお前たち三人が卒業したら魔法技術士の免許を発行すると言っていたな。」
「い、いいのですか!?」
レンは卒業と同時に免許がもらえると聞いて、興奮していた。レンも魔法技術士の試験が難しいものであると知っている。その試験を免除ということが何より嬉しかった。そんなレンを見てフッと笑う。
「ポチおは魔法技術士という免許を作り上げたやつだからな。本人が良いといえばいいのだろう。さて、私も仕事がある。リコに連絡しておこうか?」
「だ、大丈夫です!直接、今から家に行きます。サクラさんには連絡してもらってもいいですか?」
「いいだろう。少年、健闘を祈る。」
そういうとめえは机に向き、通信用魔道具を使い連絡を取り始めた。レンは保健室から出て、リコの家へと急いだ。
学園内を歩いているといろいろな人に話しかけられた。レンは急いでいるのにどうして一般生徒の自分がこんなにも話しかけられるのか疑問に思う。ほとんどが入学生だったらしく、危うくもみくちゃにされかけた。
自分を掴んでこようとする手を反射神経で避け、思い当たるものがないか考えた。そこでレンは歓迎祭のことを思い出したが、頑張ったのはそうだが、メインではない立場の自分がこのようなことになっているのか疑問であった。
うまく群衆から抜け出すも、次は在学生からの質問攻めにあった。入学生は何とか切り抜けたが在学生はそうはいかない。
レンは急いている気持ちと、どう回避するか、抜け道はあったか、いろいろ考えていた。
「はい、はーい!ちょっとどけてー!レン君こっち!」
サクラに手を引っ張られ、何とか人込みから抜け出した。
「先生から聞いたよ!リコちゃんのところ行くんでしょ?ここはアタシに任せてはやくいってあげて!リコちゃん、きっと待っているから!」
そういって背中をバンッとたたかれた。その反動でつんのめったが、振り向くとサクラはあの人込みをうまく誘導しながら対応していた。
「ありがと!リコさんのところに行ってくる!」
サクラは後ろを向いたまま、手をひらひらと振っていた。レンは前を向き、リコの家へと急いだ。
町に到着し、息を切らしながらリコの家へと走る。
「犬族だったら長く走れるのに……!」
そんなことを吐き出しつつ、足を振り、腕を振り、レンはかけていく。持ち前の動体視力で人々を避けて走る。だんだんヒトが少なくなり、目の前には石造りの家が見える。
家の中の明かりは灯っており、家にいることがわかる。家の前に着くと、レンは息を切らし、膝をつく。ぜえぜえと酸素を貪り、呼吸と心拍が戻るのを待っていた。
すると、ガチャと扉が開く音がした。そこに目をやると、リコが立っていた。リコは頬に黒い汚れや、手が汚れまみれになっており、髪もぼさぼさになっており、三つ編みも解いていた。
「れ、レン君!?どうしてここに?あと、大丈夫ですか?」
「り、リコさんっ……が……っ学園に……来てないって……聞いて……!」
「と、とりあえず家に上がってください!少し休んで?」
レンはリコの肩を借りながら家に入ることにした。
ようやく息が整いまともに話すことができるようになった。
「いったいどうしたのですか?先生には毎日連絡していたので大丈夫だと思っていたのですが。」
コップに入った水を飲み干し、深呼吸する。胸の鼓動がドクンと大きくなる。それは以前、リコが部活を休み、町でばったりと出会った日で嗅いだニオイと同じであった。リコから漂う香りがいつもと違い、レンは急に胸が重たくなった気がした。本能が引き起こされる感覚が徐々にレンを支配していく。息が荒くなり、涎が垂れてしまいそうになるのを我慢する。そんなレンの様子を見たリコは心配そうにレンのそばに座り、顔を覗き込む。目が合った瞬間、頭の中が真っ白になった
「きゃ……!れ、レン君!?」
レンの意識が一瞬とんだということを理解した。意識が戻った時レンはリコの首根っこにかみついていた。何が起きているかわからず、慌ててリコから離れた。二人は呆然として時が過ぎていった。このまま黙っても埒があかないと思い、レンは正直に話すことにした。
「り、リコさん……ごめんなさい。オレ……リコさんの香りを嗅いで、意識が飛んで、その……。」
「……わ、私……その……今……のは、少し……怖かったです。」
レンはもう一度リコに近づき抱きしめた。リコは震えており、一瞬ビクッとなったが、いつもの彼だと認識して抱きしめ返す。リコはレンの首元に鼻をうずめ、においを嗅ぐ。リコは何でこんなことしているのだろうと不思議に思い、レンの体を確認するようにさわさわと触りだす。レンはそんなことをされ、くすぐったくなり笑いながら引き離した。
「ちょ、ちょっとタンマ……!そんなに脇腹を触るとくすぐったいよ!」
「あ、あの。私もどうかしているのかもしれません。なんだか無性に触りたくなってしまって……。大好きな人の、ニオイで頭がふわふわするんです。」
レンはめえの言った繁殖期のことを思い出し、鼓動が大きく、早くなった。心の中で落ち着けと命じながら、リコの目を見る。リコの顔は恍惚そうな表情であった。
「レン君……。体が熱くなってきました……。」
そういい、手を繋いでリコの部屋へと連れていかれた。部屋に入るとリコはベッドに座ると服のボタンをはずしていく。レンはリコの隣に座り、服を脱ぐことにした。お互いの裸体を見て、レンはリコを抱きしめ、お互いの強いにおいを嗅ぐと再び意識が飛ぶ。それは朝になるまで戻ることはなかった。
☆
日差しを感じて目を覚ますと、自分の家ではなく一瞬戸惑った。よく思い出すと、ここはリコの家だということを思い出す。そして昨日の出来事を思い出して体が、顔が火照る。隣を見るとリコが眠っており、お互いに服を着ていないことが判明する。よく見ると、リコの胸にある確かな膨らみ。それは呼吸と共に上下する。自分の胸に手を当て、それは筋肉質のもので硬い。ごくりとつばを飲み込み、そおっとつついてみる。
「こ、こんなに……柔らかいのか……!」
それは弾力もあるが、指で押すと簡単に沈み込み、離すと元に戻る。その感触にハマってしまい、何度もつついていた。
そして体毛は顔や背中、腕や手の毛並みと違い、白くてとても柔らかく、細い毛であった。リコの腹部へ手を移動させる。腹部は胸の毛と同じように白くて柔らかい毛ではあったが、また肌触りが違う。胸の毛はふわふわで、おなかの毛はさらさらなのである。新たな発見をし、じっくりと見ていると、リコと目が合った。
レンは一瞬謝ろうとしたが、やることはやっている関係なので、平静を装うことにした。
「あ……お、おはよう。」
リコはむくりと起き上がり、口に手を当てて小さくあくびをした。
「……おはようございます。」
レンはうつむき、リコは耳を垂らして無言の時間が生まれる。すると、リコのおなかが「きゅうぅ」と鳴る。それにつられるようにレンのおなかも「グウゥ」と鳴り、お互いおなかを隠す。二人は目を合わすと、照れくさそうに笑いあう。
「ごはんにしよっか?」
「そうですね。その前に、湯あみでもしましょう。」
「あ、オレは水で大丈夫だよ?」
「そんなわけにはいきません。」
そういうとリコは棚からごそごそっと何かを取り出す。
「猫族専用の体洗浄液です。」
「な、なんで持ってるの!?う、うれしいけど。」
驚いていると、リコはもじもじしながらレンに洗浄液を手渡す。
「この前、来てもらったときに、夜暗い中で追い出すのは申し訳ないと思って。それで準備していたのです。狐と猫じゃ使うものも違うと思うので、買わせていただきました。香りは、レンくんに合うかなと思って選びました。」
浴室は広く、温泉が湧いていた。自分の家よりも大きい浴室に驚き、反響する声を楽しんでいるレンを見て、リコはくすくすと笑う。
「わあ……!広いお風呂だね!温泉までついている!」
「四歳のころまで両親が生きていたので、その名残ですよ。あと、温泉ではなく、ただのお風呂ですよ。魔道具で再現しているだけなので。」
「ご両親、亡くなっていたんだ……。ごめん。」
「あ、謝らないでください!レン君だって、戦災孤児でしょ?お互い様です。」
レンは桶にお湯を汲み、試しに洗浄液で体を洗ってみた。少し変わった草の匂いのするもので、レンは泡立ちのいい洗浄液を堪能していた。すると、リコが背後に座って背中を撫で始めた。
「かゆいところはないですか?この洗浄液には血を吸う悪い虫さんが逃げる効果があるみたいですよ?」
「うん、大丈夫。ヒトに洗ってもらえるのってなんだか、気持ちいいな……。」
一通り背中を洗ってもらったので、今度はリコの背中を洗うことにした。とても柔らかい毛でありながら、芯のしっかりとした毛であり、レンのものと全然違っていた。リコの洗浄液は花のような香りのするもので、いつもほのかに香ってくるにおいであった。洗い終わると泡をお湯で流し、湯船へと入った。レンは温泉のような大きなお風呂には入ったことがないがとてもいい気分で、疲れが取れたような気がした。リコは長い髪を布で巻き上げ、レンの隣に座った。
「きもちいいねぇ。」
「はい。一年前では考えられなかった光景です。」
レンは少し迷い、考えたが、やはり直接伝えることにした。
「リコさん。昨日のことなんだけどさ……。保健室の先生が、リコさんのこと心配していたんだ。」
リコはきょとんとしていた。一瞬告げるべきか悩んだが、それでも続けることにしたレン。
「リコさんは、繁殖期に入っている可能性があるって言ってて、それで昨日あんなことになったのかもしれない。首、かみついてゴメンね。」
「……。そうかもしれないのに、来てくれたのですね。私はとてもうれしかったです。レン君、一つ提案があります。」
レンが首をかしげると、意を決した表情になり、レンの目を見る。
「ここに、私たちの……工房を作りませんか?辺鄙なところでお客さんは少ないかもですが、道具も幸いそろっていますし、嫌でなければ……。」
「ご両親の家、使ってもいいの?」
「その方が喜んでくれます。道具も両親も……。」
「……わかった。もっとも卒業したら一文無しだもんね。」
二人は笑いながら話していた。お風呂から上がると、リコは事前に洗濯と乾燥の魔道具に入れていたのだろう、乾きたての制服が出ていた。二人は制服を着て、食事をとることにした。リコの作る料理はとても美味しくて、完食したのであった。
食事と準備が終わり、学園へと向かうことにした。あれからリコの匂いはいつもの匂いであった。時間的にはもう昼を回った頃である。レンとリコ、サクラは卒業までのカリキュラムはすでに終わっているので登校時間はいつでもいい。ただし、欠席する場合は連絡を入れることになっている。
いつもの通学路はいつの間にか草木が枯れ、岩肌が見えている。毎年必ず、王と女王による『豊穣の儀』が行われる。彼らの魔力でこの町だけではなく、ヴォルファリアのいたるところに春が訪れ、再び作物を育てることができるのだ。穀物や野菜は荒れた大地では不可能なので『豊穣の儀』はとても大事なイベントである。
「そろそろ、卒業だね。」
「そうですね。一年はあっという間でしたね。」
「オレさ、リコさんと初めて会った日……入部した日だね。リコさんに魔法があるって言ってもらえてとても救われたんだ。それからずっと好きになっていったんだ。」
リコが少し照れたようなしぐさを見せ、手を繋いできた。
「オレ、入学式で調査隊に入りたくて先生にアピールしたら同期生から敬遠されてね。その中でリコさんだけ、オレと話してくれたり、一緒に帰ってくれたりしてくれたのもあるけど……。とにかく一緒にいて全然苦にならなかったんだ。」
「そう思っていただけて何よりです。私は、最初の頃はとても自分勝手ではありませんでしたか?レン君のことを勝手に助手にしたり、研究に手伝わせたりいろいろ勝手なことをしていたと思いました。」
「そんなことは思わなかったよ?実際、オレにはない技術や魔法もあって、とても勉強になったし。」
リコはレンにそう言われると少し照れた表情をしたが、繋いでいない手をネックレスの前に持ってきて、少しうつむく。
「そんな時にレン君が、戦闘訓練して大けがをしているのに部活に出てきた時、両親が死んでしまった時のことを思い出して、レン君が私の前からいなくなってしまうことを想像して泣いていましたね……。それで私にはレン君がいないとダメなのだと気づいて、それから意識するようになりました。」
「それで、力仕事が少なくなった感じ?」
リコは頷き、握っていた手を少し強めた。レンがけがをしたのは決してリコのせいではなく、間違いなくカレンのせいである。レンは少し苦笑いを浮かべていたところ、リコは強く握ったことでレンが痛がっているのだと勘違いし、手を離しかけた。レンは離れようとする手を引き留めるように少し引っ張ると、リコはそのままレンに抱きつく形になった。そして立ち止まり、レンはリコの肩を持ち、見つめた。
「リコさんのそういう優しいところとても好きだよ?」
リコは両耳を垂らし「えへへ……」と照れくさそうに笑った。そんなリコの頭をゆっくりと撫で、ぎゅっと抱きしめた。
しばらく抱き合っていると、学園に行く途中であることを思い出し、再び通学路を歩く。学園の門には通用口が併設されており、そちらから入った。
リコとレンは学園の敷地に入った瞬間、盛大な拍手を受けた。思わずレンはリコの前に出てかばう形になった。すると、人込みからサクラが出てきて花束を渡してきた。担任のサム、めえ、リコとサクラの担任の教師がサクラの横に立つ。
「えぇっと、レン君、リコちゃん、ちょっと早いけどご結婚おめでとうございます!」
「ちょ、ちょっと待って!?まだ結婚してないんだけど!?」
「だから、ちょっと早いけどって言ったでしょ?」
めえが前に出て説明する。
「レン、お前はパートナーの繁殖期に立ち会った立派なオスだ。それは並大抵なものとはいかんだろう。そうだろ?サム。」
「教師としては複雑な気分だが、立派であることは間違いない。同じオスとして誇りに思うぞ。」
「それにね、これはリコちゃんがお願いしてきたことなの。」
レンはリコを見ると少し心配そうな顔をして口を開く。
「私が以前、保健室の先生に番を申し入れるときはどのようにすればよいのか聞いて、繁殖期に迎えに来てくれる方が番になれるものだと教わりました。それが、レン君をひっかけるようなことになってしまい申し訳ございません。」
リコはレンに対して頭を下げてる。レンもそれに対して怒ることはないが、番という言葉を聞いて理解が追いついていなかった。そんなレンに対してサクラはリコに気を使う。
「レン君、少し後ろを向いててあげてくれる?」
レンは理解が追い付かず、戸惑いながらリコに背を向けた。周囲の人から「おぉ!」と声が上がりとても気になり、そわそわし始めた。
レンは猫族の為、感情が尻尾に表れやすい。本人は隠せているつもりだが、ちっとも隠せていないのである。目の前にいるサクラにクスクスと笑われながら我慢していた。
「レン君、こちらへ向いてください。」
レンは緊張しながらリコの方へ振り向くと、革でできた帯状のものを両手で持っていた。いつの間に着けたのか、リコの左手首に同じものが着いていた。
「えっと、レン君。私はあなたと番になることをここに誓います。昨日……いえ、今までに私はあなたからたくさんの愛情をもらいました。不束者ですが、私のことをよろしくお願いします。」
リコは深々とお辞儀した。硬直しているレンにめえが耳元で囁く。
「……リコの前に跪いて左手を差し出す。そういう順序だ。」
レンはその言葉を聞いて理解した。オスが繁殖期にメスの元に行くことはプロポーズであり、今行われているのはその答えだったということ。レンはリコの前に膝をつき、肉球の見えるように左手を差し出す。それを見たリコはニコッと笑い左手に腕輪を付けた。
「休んでいる間に作っていたのです。レン君が私にネックレスをプレゼントしてくれたことを思い出して、その……不格好かもですが、つけさせてもらえてうれしいです。」
「どうかな?似合ってる?」
「はい。見立てのとおりです。」
二人は見つめあってにこにこしていると、サクラが二人の耳元で囁く。
「ちゅーでも見せつけてあげてやったら?みんな待ってると思うよ……。にしし。」
サクラは口に手を当て、小悪魔のような笑顔を浮かべながら教師の隣へと立った。レンとリコは沸騰しそうなくらい熱くなり、二人とも耳を垂れさせ、尻尾が膨らんでいた。レンは心臓がうるさいのか、ギャラリーがうるさいのかわからなくなっていたが、リコの顔に近づき口づけを交わした。最初は緊張していたリコであったが、次第に緊張がほぐれたのか、レンの背中に手をまわし、抱きしめる形になった。
するとギャラリーの女の子たちからは黄色い声交じりのため息のような何とも言えない声を上げて、うっとりしていた。男の子たちは恥ずかしがるもの、凝視するもの、唇をかみしめて悔しがる人などそれぞれ反応が違った。
こうして、レンとリコは教師のめえとサムが証人となりで婚約が成立した。
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