第11話 進路と出し物
魔物の襲撃から数日がたち、町にも学園にも活気が戻った。
あれからレンは魔法を封印する石を研究し、自分の魔法を石に付与できることが分かった。未だに自分の魔法についてはよくわかっておらず、使い勝手に悩んでいた。
「オレの魔法は補助魔法なのに、なんで石に入れられたんだろ……?」
「レン君、この前の魔道具を改良してみたのだけど、使ってみてもらえますか?」
「ああ、協力するよ!」
部室の椅子に座り魔道具に手を添える。これまではリコの魔法と共鳴させて使う必要があったが、レンの作った石に元素魔法を封印し、その石の魔法と魔道具を共鳴させることでレンの【重撃】もひとりで魔法を確認できるようになった。
ただし、魔法を読み取る人が必要なのは変わりない。そして一番の課題である暴走だが、解析をする回路に【反転】魔法を封印した石を途中に設置することで、自動的に反対の魔法を発動させることがで、暴走を防ぐようになった。
「今度はどれくらいわかりそう?」
「恐らくですが、変質した魔法まで解析できると思います。さすがに女王様のようにはいきませんが、少なくとも入学時の魔法は測定できます。」
授業を終えて、サクラが部室に入ってくる。
「お、やってるねぇ。リコちゃんうまくいきそう?」
「恐らくうまくいくと思います。では解析します!」
魔道具からレンに魔力が流れる。その魔力がレンの【重撃】を発動させる。石に封じられている風の魔法が反応し魔道具の周りに大量の紋章が出現する。
すると魔道具から別の紋章が浮かび、大量の紋章と共に霧散していった。その際、読み取る側——今回はリコに魔力が流れ、情報を受け取り解析する。そして魔道具は光を失い、停止した。
「解析完了です。やはり、レン君の魔法は変質しているみたいです。まず、精霊と会話ができるようになっています。ただし契約まではできないようです。」
レンは学園祭の時の襲撃を思い出した。確かにあの時、精霊たちに誘導されながら複合魔法を組み上げていたという事を思い出す。
特に会話などはしていなかったが、ニュアンスでおおよそを仕上げていた。それを少し精霊たちに修正してもらい、【灼熱】が生まれた。
その能力が精霊たちとの会話らしい。
「確かにあの時は必死だったけど、それでも精霊語はわからなかったよ?はっきりとわかったのは最後のあの時だけだし。」
「そんなのでよく【灼熱】を組み上げましたね……。」
「レン君はきっとキモチで通じ合ったんじゃない?たぶん。」
リコは少し引いていたが、首を振って仕切り直し、説明を続ける。
「もう一つですが、【重撃】の付与と言ったらいいでしょうか?ほかの魔法と組み合わせる前提ですが、魔道具に封印可能みたいです。心当たりありますか?」
それを聞かれレンは【重撃】を封印した石を机から持ってきた。それをリコに渡すと何やら不思議そうな顔をすると、解析の魔道具の中に突っ込み、調べ始めた。結果がわかると顎に手を当てて考えていた。
「何か不具合でもあった?」
「いえ、ただ……この石に【結合】の魔法が入っていました。」
「おかしいな……。持ってくるの間違えたかな……?ほかの紋章を入れた記憶はないのだけど。」
「え!?たしかにアタシは見たよ?この前レン君が【重撃】を組み込んでいくところを。どうして関係のない【結合】が入ってるのかな……?」
三人は訳が分からず考え込んだ。レンはハッとして何かに気づくと席を立ちあがる。
「もしかして……」
そういうと石を取り出して魔道具に石を入れ、【重撃】の紋章を魔力で描きながら石に封印した。封印した石を解析にかけると、やはり【重撃】は入っておらず、代わりに【結合】が封印されているようだった。
「たぶん、【結合】の魔道具を利用して【重撃】を入れ込んだからこのような結果になったのかもしれない。」
リコが手をポンと打ち「あぁ。」と言っていると、状況を飲み込めなかったサクラが首を傾げていた。彼女には何が起こっているのかわかっていないようだった。
「サクラさん。この石を使って何か魔道具を作ってみてください。そうすればわかると思います。」
「そ、そうなの……?」
サクラがレンを見ると自信ありそうにうなずいた。サクラは魔道具の素材となるものを持ってきて、一か所に集めた。
「付与する魔法の二つ紋章を書いてください。それを一つに結合させるのです。」
「やや!?むりむり!それって意図的に複合魔法作るってことでしょ!?アタシにそんな技術ないよ!作ったことないし……!」
「レン君の魔法が助けてくれます。やってみてください。」
「えぇー……」
と言いながら彼女の生得魔法である【幻惑】と付与魔法である物に斬撃を付与させる【斬撃】の紋章を描き、素材の下に敷いた。石を持ち魔力を込めた。
「ええっと、『数多の魔法よ。幾重にも重ねその力を昇華せよ』」
詠唱を行うと【重撃】が【結合】の魔法と共鳴し、通常一つしか出ないはずの【結合】の紋章が大量に出現し、半球状に素材を取り囲んだ。サクラはその光景を見て完全にドン引きであった。
「『万物よ、互いの力を共有し、新たな力を得よ』」
【結合】の詠唱が終わると魔法が発動し、素材たちが発光する。サクラはリコほどではないが魔力の総量が高く、レンより数倍保有していた。それでも大量の魔力を持っていかれ、膝をついた。
「えぇー……。どんだけ魔力を持っていけば気が済むのよ……。」
光が収まると一本の棒状のものができていた。それを手に取り、魔量を込めると一瞬魔道具が揺らいだ。サクラはため息をつき、レンにそれを渡した。
「はい、アタシは見ての通り魔力が出せないの。レン君、責任取ってよね。それ、魔力を込めたら使えるからさ。」
レンは苦笑いをしながら受け取り、魔道具に魔力を込めた。すると、刀身と思われるところが揺らいでおり、実体がないように見えた。
部室の中になぜか置いてある鎧で試し切りすることにした。
卒業していった先輩の話によると、先輩の四代前の先輩が鎧マニアだったらしく持ってきたようだった。しかしその鎧は実物ではなくニセモノだったらしく、怒って置いて卒業したそうだ。要はごみの処分を諦めたのだ。
それ以降、部室に置かれているのは可哀そうだということで試し切りや棒での殴打、魔法で爆破や水責めされ続けていたのである。
レンはなんだかんだ十二歳の少年である。剣を持つとウキウキになってしまうようで目が輝いている。ワクワクしながら鎧と相対すると歴代先輩たちのように魔道具を振るい、鎧を切りつけた。その斬撃は魔道具の刀身らしいところから倍の長さが斬撃の間合いになる様で、少し離れていても斬撃が当たった。しかもその斬撃は延長線上を通らず、曲がった軌道をしているようだった。
「サクラさん。斬撃が曲がっているようですが、これは一体……?」
「ふふん。これはね、アタシたち狸族に伝わる複合魔法【幻遥】なの。使い手はもう亡くなってるけど。」
レンは夢中でガンガン鎧を切りつけていた。
「レンくーん。それ、魔力消費激しいから気を付けてねって聞いちゃいない。」
「ということはレン君の【重撃】と【結合】を組み込んだ石を使って魔道具を作れば強力な魔道具の精製も可能ってことですね。」
「あの魔法ズルじゃない?」
ジト目でリコを見つめると、リコもジト目になり、
「あの魔法は基本的にリンクしなければ使えませんし、使えても魔力消費が莫大なので連発不能です。あと、レン君は私のものです。」
「お熱いことですねぇー」
やれやれと無理やり納得することにし、レンの方に向くと彼は倒れていた。
「レン君!?」
「魔力切れだよ。注意したのに聞かないから……。それにしてもあんなにボコボコに殴っても傷一つつかない鎧、何なの?」
魔力がなくなり眠っているレンをよそにサクラとリコが会話していた。
「リコちゃんは卒業後、どうするの?」
「まだ、決めかねているのです。」
「ほう、主婦になるかどうか?」
目をぎょっとさせそっぽ向いた。しかし、尻尾が膨らんで椅子にバムバムしていたので恥ずかしがっているのがわかる。その様子を見てサクラはリコの脇腹をつついた。
「ち、違います!魔法技術士になるか、王族の付き人になるか迷ってるのです!」
「へ、へえ……さすが成績トップだと付き人になれるのね。」
「それが、その……女王様に直々にならないかと言われたのです。」
サクラは机をバンッとたたき立ち上がりリコに指をさした。
「何を迷っているの!?二度とチャンスはないのよ!あなたには才能も実力も揃ってる。それなのに付き人にならないって贅沢な悩みだわ。」
「すみません。私は今まで……その、ぱ、パートナーがいたことや友人と呼べる方がいなくて……」
だんだんリコの目が潤んで、声も震えてくる。サクラもさすがにその姿を見ると、言いすぎたかと慌て始めた。
「だって……せっかく一緒になれたのにみんなに会えないのは辛いよ……。」
リコは大粒の涙を流して震えて訴えた。
王族の付き人になると基本的に女王や王に仕えることを示し、家に帰られることも殆どなく、パートナーがいたとしても、パートナーが王城に入ることは許されない。
王のためにほぼ一生を尽くすことになる。めえが女王の付き人ではあるが、彼女はもともと宮廷魔術師・学園教師も兼業しており、それらから脱退されては困るとのことで特別に許可された極めて優秀で稀有な存在だ。
やはりそれでも常に学園にも宮廷魔術院にもいるわけではなく大半は女王の付き人として仕事にあたっている。サクラもその実情を知らないわけではない。
「……じゃあさ。」
サクラはリコの両肩を持ち、顔を近づけて目を合わせた。リコは涙で顔が濡れ、悲しみに満ち溢れた顔で、体を震わせていた。美人な顔が泣き顔で台無しだった。そんな彼女を見てサクラは一瞬ためらったが、頬を伝う涙を拭き、目を合わせる。
「レン君と結婚しなよ!」
サクラの提案にリコは呆然としていた。その言葉の意味を理解し、感情が混乱を起こす。
そして泣き顔から照れ顔に変わっていき、耳が完全に垂れ、机に指でぐるぐると渦巻のようなものを書いていた。
「それならさ、少なくともレン君とは離れ離れにはならないよ。アタシはちょっと寂しいけど、それでも……。」
「う、うぅーん。あれ?オレ寝てた?」
レンは背伸びして、二人に近づくとリコは目を逸らし、サクラは頭を抱えた。
リコの顔を見たレンは焦って近づいた。
「リコさん!?どうして泣いてるの?」
「そ、それは……。その……」
「レン君!!」
突然サクラに大きな声で呼ばれ、びっくりして正座をしていた。何もしていないレンはなぜか緊張の汗をかいてしまう。レンはなぜか怒られているような気がしていた。
「レン君は卒業したらどうするの!?」
質問の意味を理解するのに数秒かかり、答えた。
「オレは自分の店を持って、魔法技術士として腕を磨き、いつか……リコさんと一緒に地上の調査隊に一緒に行きたいと考えてるよ。」
「それまでの間はどうするの!?」
「えっと……」
「もし、リコちゃんが王族の付き人になったらどうするの?いくらパートナーでもほとんど会えないのよ?」
レンはサクラから指摘されて、考えこんだが、それほど時間もたたずに結論を出した。
「リコさんが良ければだけど……その……つ、番になって、一緒に魔道具屋をしたい……です。」
「あんたねぇ、それ——」
耳を垂らし、恥ずかしがっているレンにサクラはどういうことか説明しようとした。しかし、それを言う前にリコが飛び出し、レンに抱きついた。勢いが良すぎてそのまま押し倒す形になった。
「はい……私も、ずっと一緒にレン君と……。決めました。私はレン君の、生涯のパートナーとして魔法技術士の道を進みます!」
取り残されたサクラは二人のやり取りを見て頬を膨らませる。適当な本を持ってピシッと立つ。
「……何だか妬けてくるわ。はいはい。ナンジ、イカナルトキモアイヲチカイマスカー?」
「ちょ、ちょっと早いですよ……!?」
「せめて卒業してからじゃないとね……いろいろと問題が。」
「わかってるわよ!冗談が通じない二人ね、もう!」
部室の外は晴れ時々雨、しかも晴れているときに雨が降っていた。
☆
ここはヴォルファリアの中央にある湖。その湖のさらに中央には空中に浮かぶ陸地がある。国民はそれを『王の浮島』と呼んでおり、その浮島には城が建ち、隣には宮廷魔術院も併設されている場所である。
ふくは執務中であったが、湿気を感じて窓の方へと向かう。すると雲一つない空に、雨が降っていた。ヴォルフが後ろから歩いてくるのが足音でわかり、話しかける。
「ふむ?狐の嫁入りじゃ。」
「なんだそりゃ?」
「狐が嫁入りするときは晴れておるのに雨が降るという言い伝えなのじゃ。きっと下界でなにかよいことがあったのじゃな。」
ふくは窓から外を眺めてにこりと笑った。ヴォルフはよくわかっていなかったが、ふくの機嫌がよいので良いことなのだと納得することにした。
「そういや、今回付き人候補はあがってるのか?」
「うむ。じゃが、おそらく断られるの。」
ヴォルフが驚いた顔をしていた。それもそのはず。王族の付き人——ヴォルフとふくの付き人はなりたくてもなれるものではないのだ。空席ができたときや二人の眼鏡にかなった時だけだから。そして、学生からも人気職である。それを断る人が出てくると思っていなかった。
「めずらしいな……。滅多にこんな機会ねぇのに。」
「実力は申し分ない。じゃが、そやつの心に迷いが見えての。」
「給料も家も食事も何でもそろってるのにか?」
「お前は単純でええの。恐らくじゃが、そやつの周りの人を大事にしておるんじゃろう。王族には向かない性格じゃが……。」
「友人、恋人とかか。そりゃ仕方ねえ。ウチに他人は入城できないしな。」
「じゃから、断られるのかと思っとるのじゃ。」
それを聞いたヴォルフは少し考えていた。ヴォルフの中では一番ありえないという意見を言ってみることにした。
「制限緩くするか?」
「却下じゃ。その影響でここに攻め込まれたら面倒じゃ。それに太陽の魔道具が破壊されればこの星は死ぬる運命じゃ。」
「そうか。それが聞けて安心した。」
といい、ふくと雨を眺めながら並んで立つ。それは王として彼女が一個体に肩入れをするのではないかと一瞬気にしていたがそのような素振りを一切出さなかったことで安心したのだ。
手をそっと差し出す。その手はふくの尻を触っていた。ふくは何も言わずヴォルフに人差し指を向け、短く詠唱する。
「『爆ぜろ』」
ヴォルフの頭に爆発魔法を当てた。威力を加減しているのか無傷であったが、髪がチリチリになっていた。
「あの娘、実力は確かなのにのぅ。詠唱短縮なぞ、たまでも不可能じゃったのに……。」
そう言って、執務室へと戻っていった。
☆
先ほどまでの暗い雰囲気はなくなり、三人は会話が弾んでいた。サクラは、宮廷魔術院からスカウトを受けていたようで、宮廷魔術師になると決めたようだ。
サクラの研究が【転送】の魔法を解析して、短距離であれば重さを無視して運べるという研究を報告し、それが宮廷魔術院のスカウトにつながった。
そして、話は課外活動紹介の話になった。
「そういえばアタシたちが最上期生になるから、課外活動紹介に参加しないとねぇ。」
「もう1年近く経つのか……。早いなぁ。」
「そうですね。あの時は、とにかく忙しかった思い出があります。」
「そういえば、リコちゃんは入学式モテモテだったもんね。」
サクラがリコの脇を突きながらニヤニヤしていた。脇を突かれたリコはくすぐったいのかくねくねしていた。レンもそれに覚えがあり、入学式終わった端からリコの周りに人だかりがあったのを思い出した。
「あれは、うっとうしかったのを覚えてます。」
「上期生も同期もガツガツだったもんね。」
「そんなにすごかったんだ……。それより、出し物はどうする?」
三人は腕を組み「うーん……」と言いながら考えていた。レンは今までのことを思い出していた。
魔法技術部に入部し、リコに出会い、最初に作った法陣を封印する石を発見し、それを作るために近衛師団長にボコボコにされ、やっとできた石は召喚術を入れられなかった。
召喚術の詳細を保健室の先生に聞き、サクラと出会い、レンの魔法が判り、サクラとリコのケンカ、リコとレンの戦闘演習、近衛師団長の本気の恐ろしさ、女王との会話。学園祭でパートナーの契りを交わしたこと、魔物との戦闘、王と女王の圧倒的な力。
一年でこんなに大イベントをこなしてきたレンは一つ思っていたことがあった。
「先生やポチおさんが言っていたんだけど、どの職についても結局強くないといけないって……。」
「それだわ!」
レンとリコは顔を合わせてうなずいた。そして三人は「せーの……。」と声をかける。
『戦闘演習で驚かせてやろう!』
三人の息はぴったりで少ない日数だが、急ピッチで準備を始めた。魔法技術部の発表は研究の提出物とは違っていてもよいのだが。時間がなく今から新しい発明品を出すには時間が足りないため、レンは紋章を封印する石を発表するようにした。
「この石、発表するなら名前がいるよなぁ……。」
レンは石を眺めながら、考え込んだ。するとサクラがやってきて、手を合わせて舌をだしていた。
「レン君。相談があるの、少しいいかな?」
サクラに部室の外に連れ出され、学園の中から町を一望できるところに着いた。
「レン君。相談っていうのは、今回の歓迎際で戦闘演習するでしょ?それで、思い出してほしいのが、アタシとリコちゃんはライバルだったということ。」
レンはそんなことも言っていたなぁと思い出し、うなずく。
「それでね、アタシたちは授業がもうないから機会がなくなったんだけど……。学園生活最後の直接対決がしたいの。レン君はリコちゃんのパートナーでしょ?アタシにはパートナーいないから、少し協力してほしいの。」
「オレが司会をやって二人に戦ってもらったらいい?」
「違う!そうじゃないの。アタシは本気のリコちゃんと戦うの。レン君はリコちゃんと一緒に戦うの!」
「どうして?」
レンはサクラの言うことが理解できずに首をかしげると、キッと睨む。いきなり睨まれたレンは思わず姿勢を正す。
「本気のリコちゃんっていうのはパートナーのいる状態のことを言うの。レン君がいなかったら本気にもならないじゃない。そんなのに勝っても嬉しくない。」
「でも、二対一で不利じゃないかな?」
「だーかーらー、それで協力してほしいんだってば!」
レンは腕を組んで反対に首を傾げた。わかっていないレンに人差し指をレンの鼻に突き立てた。しっかり爪が鼻の頭にぶすりと刺さっていたので、レンは顔をしかめた。
「レン君の作った石をいっぱい頂戴?あとは自分で何とかするからさ。」
「ああー、うん、いいよ。作っておくから好きに持って行って。」
レンは理解し、にこにこしながらジオラマのように見える景色を見ていた。サクラはその姿を見てジト目で近づいた。
「レン君は、リコちゃんと……その……よ、夜伽はしたの?」
レンは突然の発言にむせた。息を整え、一息ついてサクラを見るともじもじしていた。
「い、いきなりなんてことを!?」
「したの!?」
「してないよ!まだ十二歳だよ!?」
「リコちゃんがしたいと言ったら?」
「そ、それは……する……と思う……。」
レンは恥ずかしい気持ちとリコのことで頭がいっぱいになり顔だけでなく体が熱くなる。サクラも同じような状態であり、周りに人がいれば勘違いされるような状況だった。
「安心した。」
「ほぇ……。」
レンはサクラの言うことがよくわからず変な返事をしてしまった。
「パートナー同士で……よ、夜伽をすると、特に女の子は魔力が高くなるの。リコちゃんは魔力が高くなっていないみたいだから安心したの。」
「そ、そんなことがあるんだ……。」
「急に変なこと聞いてごめんね。石の件お願いするわね。」
「わかった。」
といい二人は部室に戻り、歓迎際の準備に取り掛かった。
リコは自分の出し物を決めたようで魔道具の調整作業に入っていた。レンはリコを見て、顔が熱くなり、引き返して自分の作業に取り掛かった。そんなレンを見て首をかしげて作業へと戻っていった。
レンも出し物用に石を作り、魔法を決める作業に入った。
「派手なものがいいんだろうけど、流石に【灼熱】は屋内競技場では使えないしなあ……。」
リコが近くに座り、レンの手に自分の手を乗せる。レンがキョトンとしているとリコは手のひらを見せる。かわいらしい肉球が見えるのでレンはついつい触る。
「魔法のことで気になっているようなので精霊さんに聞いてみますか?」
「できるの!?」
リコは頷くと、机の上に四つの魔力の塊を出した。それぞれ赤色、緑色、青色、黄色の光を放つ。それぞれサラマンダー、シルフ、ミズチ、ノームだと紹介された。心の中で会話ができるみたいで、レンは意識を集中して精霊と会話する。そして、使う魔法が決まると、精霊にお辞儀をして、自分の魔力の半分を精霊に差し出した。
「その感じだと決まったようですね。」
「うん。リコさん助かったよ。あとは、戦闘演習の内容だね。【守護】の魔法を先生に使ってもらった方がいいかな?」
「そうですね。レン君の石で【守護】を入れておけば先生にも使うことができるのでそのようにしましょう。封印は私に任せてください。」
そういうとリコはレンの作った石をいくつか持っていき、紋章を封印する作業に取り掛かった。何とか出し物が決まり準備が進む。レンは楽しみになり、気合を入れるのであった。
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