第10話 パートナーと魔物の戦闘

 ついに学園祭当日となり、レンは家から走っていく。


(準備は万端だ……!あとはオレが頑張るだけだ!)

 

 学園は祭りでにぎやかでヒトが大勢いた。レンは部室前に行くとリコが待っていた。

 いつもの制服とは違い、水色のワンピースを着ており、三つ編みの髪を解いていた。いつもより、かわいく見えたリコにドクンと心臓が跳ねる。


(こんな、見え見えの状態じゃダメだ!リコさんは絶対警戒する……!)


 レンは息を整え、走ったこととリコへの恋心を悟られないように平静を装う。


「リコさん、お待たせしました。」


「いえ、私も来たばかりなので待っていませんよ?それでどこに行きますか?」


「どこか行きたいところとかあったりする?」


 リコはそう聞かれ少し悩んだ。すると少し照れ臭そうな顔をしていた。


「実はちょっとおなかが空いています……。」


 舌を少し出し、照れ隠しをする。レンには効果バツグンであり、ドキドキが止まらなくなる。


「そ、それじゃあ、屋台で何か食べようか?」


「はい!」


 学園外からもヒトが集まっており、正門前は特に食べ物系の屋台が多く、食べるものには困らなかった。

 小麦粉の生地の上に野菜や魚介類を乗せ、それを棒に巻き付け、上からソースをかけて食べるもの。砂糖を煮詰めたものに、粉をかけると突然膨らむ謎のお菓子。丸っこい生地のなかに魚介類やチーズが入っているもの。一口サイズで甘くてふわふわしたちょっぴりお水が欲しくなるお菓子。いろんなものがあり、リコは悩んだ。

 そして、リコのキュウっと腹の虫がなる。恥ずかしくなってお腹を押さえると、レンはリコを近くの岩へ座らせる。


「ちょっと買ってくるから待ってて。」


 座って待っていると、レンが戻ってきた。先ほど見たものを全て抱えており、リコは驚いた。

 レンはリコが物欲しそうに見ていたものをすべて覚えているという記憶力に脱帽した。しかし、さすがのリコでもこんなには食べられない。二人は目を合わせると失笑した。


「張り切って買いすぎちゃった。……一緒に食べようか?」


「はい!」


 レンとリコは全て食べ終えると、再び屋台巡りをした。

 小さな鉤の手状に曲がった魔道具で風の弾を使って的を狙い撃ちするもの。紙でできた釣り糸で景品の書かれたタグを水の中から吊り上げるもの。かなり暴れて難易度の高い小さい魚型魔獣をすくうもの。さまざまな屋台を一通り楽しんだ。


「レン君は魚魔獣を釣り上げるの上手でしたね!」


「猫族の意地だよ!リコさんも普段の戦闘の経験から的当ては百発百中だっだね。」


 二人は屋台を存分に楽しんでいた。いつの間にか夜になっており、アナウンスがかかる。

 

『ただいまより、花火大会が始まります!パートナーがいる方はもちろん、いない方も存分に楽しんでください!』


 アナウンスが終わると屋台についている光がすこし暗くなった。

 すると、ピューという音とともに光が空に打ちあがる。一筋の光上空へと上がるが消え、一呼吸置くとドンッという爆音とともに夜空に緑、赤、黄、橙など様々な色が混ざった可憐な華が上空に咲いた。


「きれい……。」


 うっとりと花火を見ているリコを見て、レンは鼓動が速くなった。呼吸を整え、リコの手を繋いだ。


「ちょっとついてきて!」


 レンはリコの手を引き場所を移動した。初めて繋いだ時と違い、リコは拒否をすることなく、むしろしっかりと握り返していた。

 デートプランを練る時、レンは下調べをしており、人が少なく、それでもきれいに花火が見られるスポットを調べていた。

 その場所に到着すると、予想通り人は少なく、空に咲く花火と湖に反射する花火が見られる絶景だった。

 すこし会場から遠いのが難点だが、誰にも邪魔をされることなく大きく花火が見られ、リコは目がキラキラしていた。

 

「リコさん。」


 とても真剣な声がして振りむくとレンが膝をついていた。リコは状況が飲み込めず、慌てた。そのような状況だがレンはしっかりリコを見つめた。手足が自分のものでないような感覚に陥るが覚悟を決める。

 

「リコさん、今日はオレと一緒に学園祭を回ってくれてありがとうございます。今日はとても大事なことをお伝えしたいと思って、お誘いしました。」

 

 レンは頑張った。頑張って声を震わせながら切り出した。

 リコはレンから伝わる緊張に声が出せずにいた。周りで花火を見ていたいたギャラリーもレンとリコに集中する。レンは様々な視線にも負けず続ける。

 

「魔法技術部で出会ったときからリコさんのことが好きでした。一緒に実験や訓練をしていくうちにオレは……リコさんのことをどんどん好きになって、あなたのことを独り占めしたくなりました。」


 リコは告白を受け、固唾を飲む。レンの本心を知りうつむいていた。


「オレは、これからもリコさんと一緒に……助け合っていきたいです。」

 

 レンはポケットから小箱を取り出し、ふたを開け、中身を見せながらニコッと笑う。


「オレとパートナーになって、一緒に人生を歩んでください!大好きです!」


 リコはその言葉を聞き、レンに勢いよく抱きついた。


「私も……ずっとレン君のこと気になっていて、私……誰にもとられたくなかったです!私もレン君のこと、大好きです!」


 最後の花火の前兆を知らせる連続花火が上がる。そして、ひときわ大きな光が打ちあがる。光が消え、なかなか爆発が起こらなかった。周囲の人もざわざわしていた。

 

「……何かあったのかな?」


「不発でしょうか?」


 心配をよそに今までにない大輪の花が咲いた。それはとても大きく様々な色で構成されており、非常に美しかった。レンは我に返り、リコにネックレスを首にかけた。

 

「これは……?すごく綺麗です……。似合っていますか?」


「リコさんのこと思いながら作ったんだ、すごく似合ってるよ。」


「……レン君、パートナーの契約として儀式を結びましょう。」


 リコはレンの返事を待たず、唇を重ねた。見ていたギャラリーの拍手がレンとリコに贈られる。二人は唇を離すと、目を合わせ、照れくさそうに笑いあった。

 すると、リコのネックレスが輝いた。二人はその光を見て無意識のうちに魔力をリンクさせていた。

 レンの【重撃】がリコに、リコの【召喚】がレンに、お互いの魔法と共鳴しあい、新たな魔法になった。しかし、それにはまだ二人は気が付いていなかった。

 

「い、今のは何だったのでしょうか……?」


「リコさんの魔法がオレの魔法と共鳴したような……」


 ネックレスを見ると紋章の形が変形していた。それはレンとリコの魔法がこのネックレスを通じてさらに昇華させるものであるが、二人はこのことにも気が付かなかった。

 突如地面から揺れが伝わるほどの爆発が学園の近くで起こった。爆発音は明らかに花火ではないことがわかり、レンとリコは目を合わせ、爆発したところへ走っていった。


 

 爆発現場に行くと、魔物が四体いた。三体の魔物は異形の形をしており、理性・知性もない行動で暴れまわっていた。そして残る一体の魔物は他三体と違い、体は小さいが魔力が異常に高く、戦闘技術を持っている人型の個体で警備兵を素手で殴り、吹き飛ばしていく。

 目が合ったレンとリコの二人はじりじりと距離を詰められていると、離れた場所でも爆発音が複数聞こえた。すると目の前にひとりの男性が現れた。

 寒冷地用のコートを羽織っており恰好が全然違い一目ではわからなかったが、ポチおだった。いつもの温厚な顔つきではなく、牙をむき出しにした戦闘状態であった。


「おい!退いていろ!死ぬぞ!!」


 ポチおがレンとリコに後ろに下がるよう指示すると魔物のほうへと走っていった。ポチおの戦いを見ていると横から魚類の頭に人類の体が融合した奇妙な姿の魔物が現れた。


 「『風の弾丸』」


 空気の弾丸が魔物の顎と思われる個所にあたりよろけた。すかさずもう一発の弾丸が魔物を吹き飛ばした。リコはぽかんとしていた。


「さすが、リコさん!的確に打ち込んだね!」


「いえ……今の二発目の弾丸は想定外です。一つは意図した魔法ですが、もう一発の魔法は……。」


 リコが考えていると、魔物が起き上がりとてつもない速さで突進してきた。レンはリコをかばい吹き飛ばされた。防御の魔法がレンに間に合わず、最悪な状況を想像したリコは青筋を立てて叫ぶ。


「レン君!」


「大丈夫!」

 

 と森の方から声が聞こえ、リコは安堵し、魔物と向き合った。両手を魔物にかざして二つの魔法を短く詠唱する。


「『炎の檻』、『岩の槍』」


 魔物に炎がまとわりつき、さらに炎が檻を形成する。身動きができないところを岩でできた槍が降り注ぎ、地面からも岩の槍が生え、魔物をずたずたに突き刺していく。


「やはり、魔法が……重複して発動する……。」


「やったか!?」


「レン君!大丈夫でしたか!?あと、まだとどめは刺せてはいません。」


 リコの言う通り緑の体液をまき散らしながら魔物は立ち上がる。痛覚がないのかあらぬ方向に曲がっている足を無理やり使い、肉から折れた骨が飛び出る。そして骨が飛び出たところから緑の体液が噴き出る。おぞましく、痛々しい姿を見た二人は苦虫をかみ潰したような表情をし、覚悟を決める。

 

「リコさん、早くとどめを刺そう。あれ以上は……苦しめてはいけない気がする……。」

 

「同感です……。リンクをお願いします。」


 レンはリコの背中に手を当ててリンクをするとネックレスが輝きだした。突然のことで一瞬迷う。それでもリコは魔力を解放し、場を支配する。レンは耳の近くで何かが聞こえたが一部しか聞こえなかった。


「リコさん!よくわからないけど、火の精霊と風の精霊を出せる?」


「よ、よくわかりませんがやります!『火の精:サラマンダーよ。風の精:シルフよ。我が呼び声に応え、顕現せよ!』」

 

 リコは火と風の精霊を召喚し、大魔法の準備に入った。レンはネックレスの方から鼓動を感じ、意識を集中させた。

 火と風はとても相性が良い。お互いの利点を伸ばす関係であるため同じ部隊に入る実例がある。それをレンは感じ取り、リコの魔法が組みあがるのを待った。

 すると、レンの耳元で先ほどよりはっきりと聞こえた。リコが威力の高い二つの魔法を組み上げ終える。


「では、行きます。今回も4重でお願いしま―」


「待って!精霊がオレに協力してくれるみたいだ……!」


 レンは直感だが、先ほどの聞こえたものがサラマンダーとシルフが紋章を組み合わせろと言っているように聞こえた。

 火の紋章を中心に、その周りに風の紋章を六つに増やし円環となるよう、組み上げた。それぞれを繋ぐ紋章【結合】をレンの魔力で書き加えて変化させていく。

 レンは頭の血管が切れそうに感じ、視界がぼやけ始めたが紋章の複合を続けた。そして、それはついに出来上がり、レンは息を切らしながらリコに紋章を譲渡する。

 

「リコさん……!これを発動してください……!」


「は、はい!これは……【灼熱】ですね……。行きます!『灼熱よ、その力を解放し、すべてを焼き尽くす柱となれ!』」


 魔法が発動する瞬間、ネックレスの輝きが一層増した。


 ☆


 ポチおはめえが持っている魔道具と同じようなものを使い魔物と対峙していた。それはめえの鎌状の武器ではなくブレード状の武器になっていた。


「数が多いな、じゃじゃさん、早く来てくれねぇかな……」


 などとぼやきながら三体の魔物をあっという間に切り伏せた。残るは一体であったが、他の魔物と違い魔力量ははるかに上だった。

 ポチおは魔道具を握り直し、魔物に接近した。目にもとまらぬ速さで剣撃を当て続けるも、魔物の異常に硬い両腕で防がれていた。そして魔力の刃が折れ、弾かれる。その隙に左回し蹴りで蹴り飛ばされた。空中で一回転し体勢を立て直し、着地した。


「おいおい、お前も大概だが、オイラの魔力も負けてないんだけどな……右腕と内臓やっちゃったな……。」


 ポチおは魔物に対して牙をむきにらみ合った。口からはそのダメージが判るほど血が出ていた。右腕は力無くダラリと垂れていた。

 もともとポチおは前衛が向いていないタイプのヒトであるため、距離を取りたかったが、そうすると国民を戦闘に巻き込むことになるのでそれを封じられていた。

 にらみ合っていると突如、強大な魔力反応がポチおと魔物の感知に触れ意識をそちらに向けた。

 

「おいおい……学生の分際で【灼熱】ぶっ放すのかよ……。オイラも負けてられねぇな……!」


 目を魔物に戻すとすでに間合いに入られており戦慄する。


(や……やっちまった……!)


 ダメージを最小限にとどめるよう濃い魔力を展開させて身にまとわせた。

 魔物の強烈な跳び蹴りがポチおにヒットする瞬間、二人の間に板状の魔力壁が複数出現し、魔物の蹴りがそれにあたる。薄いガラス状のものが次々と割れるような音を立て貫通し、ポチおを吹き飛ばした。

 ポチおは左手で地面をつかみ、ブレーキをかけた。直撃したものの、壁と魔力で威力が相殺されたのかダメージが想定よりも少なかった。次の瞬間、彼の体が光に包まれ、折れた右腕に感覚が戻る。内臓の痛みも和らいだ。ポチおは後ろからくるヒトに目も合わせずに、魔物を見る。

 

「ナイスタイミング、めえさん……!」


「後衛職のお前が前線に出てどうする?死にたいのか?」


「それは、緊急事態だったし……はい、申し訳ございません。後ろに引っ込んでます……。」


 めえのとても冷たい目で見られ、ポチおは委縮して、後ろに下がる。めえはため息をつきながら、現在の状況をポチおに報告する。

 

「にゃんこは他の区域でじゃじゃとくろんぼと組んで交戦中。ルゥとたまとサムは避難誘導中だ。」


「了解。今回の親玉は恐らくアイツだ。服の下はわからんがドラゴンかも……」


「ふむ、あっちの【灼熱】は?」


「魔力からして、レンとそのパートナーだな。アイツらほんとに学生かよ?」


 めえは少し微笑み、魔物と相対した。鎌状の魔道具に魔力を込め、強く輝き、活性化させる。


「いつものように雑に攻撃して【結合】させてくれ。それに合わせて私も攻撃する。」


「了解!」


 というとポチおは腰袋から三角錐に持ち手がついた小型魔道具を魔物に向かって投げつけた。


 ☆


 リコはレンから譲渡された紋章の詠唱が終わり魔法を発動させた。天にも昇る勢いで火柱が立つ。

 今までの火魔法でもなく、召喚魔法で出せる火力をはるかに凌駕していた。風と火の属性を複合させることで【灼熱】という属性に変化していた。それを可能にしたのはレンの【重撃】魔法の効果によるものである。

 魔法の複合は繊細なコントロールが必要かつ、相手の魔法と協力する必要がある。そして、他人の魔法は変更できないのがふつうなのだ。なにより複合魔法はその制御の難しさから地面に描いて行うのが基本である。

 【重撃】は既にある紋章に手を加える、それほど異端な魔法である。もちろんレンの負担も激しく、魔力がほとんど残っておらず同じことをもう一度とはいかないと思っていた。

 火柱が収まると魔物がいた場所は木や岩などすべてを焼き尽くし更地になっていた。もちろん魔物も同様に焼き尽くされ、核の部分であろう謎の石だけが残っていた。


「……こ、これで何とか討伐できたはず……!」


「あの石……何だろう?」

 

――触ってはだめ。

 

女性の声が耳元でして、振り返ると誰もいなかった。石のあったところを見ると風の刃で粉々に砕かれている最中であった。

 

「今の声は精霊『シルフ』の声です……。レン君、貴方にも聞こえたのですか?」

 

「う、うん。あの複合魔法も二つの声がして教えてくれたんだ……」

 

リコは少し考えて、以前めえが行っていたことを思い出す。


「私だけでなく、レン君も魔法が変質したようです。私の【召喚】の影響で……」


「変質ってこういうことなのかな……?まだ、発動して日も浅いし、よくわか——」


 突然二人の獣人が森から吹き飛んできた。


「保健室の先生!?」


「ポチおさん!?」


「おまえたち!まだ逃げていなかったのか!?」


「おいおい……めえさんと組んで勝てないってやべぇぞ……!」

 

 二人はダメージが大きいのか立ち上がるので精一杯のであった。そして強大な魔力と共に森から一体の魔物が現れる。衣服はボロボロになっており、その体はほとんどが竜であった。どのような攻撃もはじかれたりしていたのか、傷一つついておらず、輝きを保っていた。


「私たちも戦いま——」


「図に乗るな!お前たちは複合魔法でろくに魔力も残ってない。いいから早く逃げるんだ!」


「めえさん、あいつら頼んだよ。にゃんさんには謝っといてくれ……!」


「ま、待て!馬鹿——!!」

 

 めえの制止を振り切って魔道具の剣を使い足止めに向かった。すると魔物と接触するより早く氷像と化した。

 ポチおは足を止め、周囲を見ると、狼型獣人が片腕を魔物に向けて魔法を発動して森の中から出てきた。そしてその隣には妖狐、ふくも一緒だった。

 ふくは氷像と化した魔物を見て鼻で笑うと、指をパチンとならす。魔物は凍ったまま粉々にされ、吹き飛んだ。


「お前が犠牲になっちゃ俺たち王は失格だな。」


「めえ、このようなトカゲ風情に何をてこずっておるのじゃ?やつらは寒さに弱いから氷の複合魔法で攻めぬといつまでも戦闘が続くのじゃから。」


「ふく様、ヴォルフ様。お手を煩わせてしまい申し訳ございません。」


「王様と女王様のおかげで命拾いしたわぁ……ありがとうございます。」


「じゃじゃの方から先に倒したからもう終わりだな。」


「一匹はお前たちが倒したのか?」


 レンとリコは王と女王を目の前にして完全に硬直していた。それは二人の強大な魔力に当てられて恐怖で声が出なかった。それを察してめえは王と女王に話す。

 

「申し訳ないのですが、魔力が強すぎて生徒たちが緊張しています……」


 二人はめえの指摘を受けて顔を見合わせると魔力を抑えた。

 

「これでよいかの?さぁ、質問に答えるのじゃ。」


 二人は頷くことしかできなかった。


「……まあよい。彼方ではサクラという狸の娘も一匹倒したようじゃし、被害は最小限に抑えられたようじゃの。ぼるふ、帰るぞ。」


 ふくの話を聞いてレンとリコはサクラの無事も確認でき安堵する。ヴォルフは背伸びするとレンとリコをわしゃわしゃと撫でていく。


「ほい。若いの、これからもがんばれよ!」


 そういうとふくは【転移】を発動させて帰っていった。魔力の支配が無くなるとレンとリコは地面にへたり込む。


「い、威圧感……すげぇ……!」


「は、はいぃ……けど、どうやってあの魔物を一瞬で……?」


「あれはヴォルフ様の【絶対】による完全凍結魔法とふく様の衝撃波の魔法だ。」


「あの二人、めっちゃ強いからびっくりするよな~。」


 めえの説明によると【絶対】の魔法は絶対零度の冷気で体も精神も凍り付かせる魔法であり、魔物はそれで凍らされた。その時点で普通は即死ではあるが、コアと呼ばれる結晶体が起動する限り魔物は活動するため、ふくの魔法でとどめを刺したわけだ。

 衝撃波の魔法は魔物の内側から発生しており硬いドラゴンスケイルは防御として役に立たなかったようだ。普通は体内に魔力が満たされているため中から攻撃することはできない。ふくの魔力はそれを突破できるほどの干渉力があり、リコは苦笑いを浮かべていた。


「そういえばお前たち、やっとパートナーになったんだな!流れる魔力が似ているからすぐわかったぜ!」


 レンとリコは恥じらいながら「はい」と答えた。

 

「そうか、お前たち。パートナーになった以上お互いをしっかり見て、思いやることだ。これからが始まりだからな。」

 

 レンとリコは顔を合わせ、笑いあった。めえとポチおに引率されながら学園に着いた。

 緊急時、学園の生徒は学園内に避難することが条件であるからだ。レンたちは学生なので屋内競技場に寝泊まりする必要はなく、そのまま部室に入るとサクラが出迎えてくれた。

 そして、三人は事態が安定するまでは部室で寝泊まりすることになった。レンはは初めて複合魔法の紋章を組んだ事で疲れ、机に突っ伏して寝ていた。リコとサクラはソファでガールズトークをして眠りについた。

 サクラのイタズラでレンは額とまぶたに謎のステッカーを貼られた。

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