第14話

ー14ー


 それにしても父母との関係は難しい物だな。父のことはよく知らない。殆どうちにいなかったからだ。本人は大昔の通い婚をしているつもりだったようだが、今から思うと腹が立つとしか言いようがない。籍はずっと向こう側に入っていた、つまり私は愛人の子ということになる。実に不愉快だ。人によってはそれだけで自殺の理由になるぞ。私は途中からグレたから助かったのだ。グレるのもいいこともあるのだ。

 母親とは40年くらい一緒に過ごしてきた。それが今では1日に1回思い出すかどうかだ。非常に生きづらかったのを覚えている。過度に感傷的であり干渉的なのだ。私が喧嘩してきついことをいうと首を吊りかねない。だから言わないでのみ込んできたが、がまんにも限界がある。仕事が大変でひどい静脈瘤ができて「父」は生活費を入れない。もう歩けないしどうしたらいいの、と私は何回も何回も聞いた。だがみんな自分たちのせいではないか、私に話すな。私は関係ない。勝手に生まされただけである。私に責任はない。

 肉親というのは何かベタベタした粘着質の間柄になる。それが嫌で堪らなかったが死んで終えばそんなものはたちまちなくなる。寂しくなるほどである。私は平均より不幸な生い立ちであった。繰り返し言うがそれは私のせいではない。その出自の「秘密」はずっと隠されてきた。が子供が成長すればバレる物である。そんなことも父は分からなかったのか。その時どうしようと思っていたのであろう。今の私だったら土下座を要求する。そして顔を蹴る。殺したいがもう死んでいる。

 人間関係というのは誠に面倒くさいややこしい物である。それでも一定期間は共に過ごさなければならない。親が子供に対する影響力は甚大な物である。私は人格者しか親になるな、子供を産むな、という考えだが世の中はそうは動いていない。

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