第6話
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私は150枚ほどのちゃんとした小説を書くべきかもしれない。だが小説は嘘だらけだ。ありえない展開になっても誰も文句を言わない。それは人生自身がありえない展開になるからである。だから多少おかしな展開になっても許される。この小説家というのは大嘘つきである。嘘を商売にしているのは多い。奇術師、占い師、ああいったものは蹴散らして仕舞えばいいと思うのだがどうだろう。この小説家になりたい人が引きも切らぬ。知的に見えるらしい。儲かるかのように見えるらしい。だが嘘を垂れ流して生きていくのもつらい。いつかネタも尽きる。するとあの有名な作家のように井戸の周りをぐるぐるするしかなくなるのである。何とかして新しい嘘を捻り出すために、河原の石を拾ってきて力一杯捻り潰して一滴の水を出すらしい。もともと小説はもう書かれ尽くしてある、新しいものを書こうとしても無理である。だが日の下に新しきものなし。それは全ての分野で言える。ノーベル賞級の発見・発明も応用問題を解いたに過ぎない。もう人間がやることは人間がやり尽くしている。だが科学における応用問題は役に立つ。iPS細胞にしたって模倣と試行錯誤の連続でできた。別に彼がやらなくとも誰かがやった。何で一番乗りをそんなに祝福するのだろう。誰々のiPS細胞という言い方はやめにしてほしい。
さて書き尽くされたと思える小説も時代が少しずつ変化していく。それに乗っかって多少いじくる。そしてまた新作として発表するわけだ。これも往生際の悪い職業だね。それに作家によって多少の違いはあるからファンがついてくる。ファンは世界中に及び何千万人が井戸の周りをぐるぐる回ったり中を覗き込んだりしている。これも滑稽と言えば滑稽だね。
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