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 グリシーヌが言いたいことはだいたいわかっている。

 国王が俺の力を過信し、多用させ、森との架け橋としていた。当時の国王は特に、自らの手をいかに汚さないか、煩わせないかだけを考えるような人だった。そんな人でもその座に居続けられたのは、その様子があまり他人には分かりにくく、表向きは温厚で頼れる人物に見えていたからである。

 森の皆は、森の為に動く存在が殆ど俺しかいないことを深く理解していた。昔はそれでもよかった。だが、時間が経つにつれ、森を大事にしていないと思える国王が長くその座に居座り続けていること、それを国民が許していることに対しあまり前向きな心持ちではいなかった。

 じわじわと溜まっていた、森の怒りはわかりやすい程に膨れ上がっていた。その怒りは深く、霧のように森を覆った。国王より先に、アズーロ国の海の民がその様子を察知した。元々十数年に一度は戦争をしていたようだったが、当時は海の民が喧嘩をふっかけてきたところから戦争が始まった。言葉に起こすと、きっかけは単純なように聞こえる。しかし、そのようなことが起こってしまうほど、森の民に負担をかけていたことを考えると、胸が痛い。

 頭の中で一通り過去の振り返りができたところで、もう一度聞く。

「なぁ、寂しかったろ?俺がいなくて。」

 唾を呑み込む音が聞こえた。しばらくして鼻で笑いながら、

「何を自惚れているんですか?そんな感情を私が持つとお思いですか?」

「いや、そう思ってたら面白いなと思っただけ。」

「はぁ……貴方は本当に……。」

 呆れて言葉が出てこない、という様子だ。本調子に戻ってきたようで、鼓動音は安定してきた。

「只、悔しかったんですよ。貴方が居ないこの国が、こんなにも頼りないだなんて、と思ってしまったんです。」

「まぁ、確かにそうだよな。国王は、相変わらずか?」

「貴方が戻れば、彼は退くことになると思います。」

「え?どうして俺が出てくるんだよ。」

「皆、貴方が時期国王になることを望んでいるのです。」

「何の冗談だよ、笑えないね。可愛い息子が継ぐだろう?」

「やっと12歳になられた、まだお尻の青いお方ですよ。」

「年齢は関係ないよ。それ以前に、国の血を継いでいないのに、王になれるわけがないんだから。」

「森の民も、国民も、それを望んでいるのです。とりあえず、国に戻ってから話をしましょう。」


 グリシーヌのとんでもない発言を咀嚼したくなくて、そのまま口を閉じた。いつのまにか、オリベルト国が目の前まで来ていた。


 ただいま、我が緑の国オリベルト。

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