第5話

--アルソリア領--

「ふむ、それにしても急にミーナと共に近隣貴族との会合とは一体何があったのか...しかも兄上直々の命だ...」


カインが消息を絶ち数時間後、ゲイルは一体何があったのかと頭を抱えていた。


定期的に貴族達で集まることはあっても緊急招集される事は今まで無かった。この時のゲイルにはまさか国王がカイル追放の為にゲイル、ミーナを王都から遠ざけているとは一切考えていなかった。


「まぁ、考えて分かるものでも無いか。ミーナ!そろそろ貴族達がこちらに集まる。準備しておいてくれ」


考えても分からないものは分からない。そう切り替え、ミーナに伝えた。


「分かったわ。あなた」


そう言い、準備に取り掛かる為、部屋の扉を開けようとした時、扉が勢いよく開いた。


「りょ、領主様!!大変です!!カ、カイル様が...!!」


慌てたように中に入ってきたのはカイルに付けていた従者の1人であった。

従者の身体には大きな傷があり、見るからに重症である。


「おい!その傷はどうした!それにカイルがどうした?!」


「じ、実は...帰りの馬車が盗賊に襲われたのです...その際に護衛や従者はカイル様を守る為に死に、カ、カイル様は...うぅ」


「カイルがどうしたというのだ!!」


「カイル様は誘拐されてしまいました!!私にはどうする事も出来ず逃げ出したのです...申し訳ございません!!!」


それを聞くとゲイルは顔を真っ青にし、ミーナは顔から血の気が引きその場に崩れ落ちた。


(カイルが誘拐...なぜ...)


この従者の言っている事は全くの嘘である。この従者は元より国王の息がかかっている者である。


国王はカイルを転移魔法陣にて追放した後、この従者以外の者の口封じする為に護衛と従者を皆殺しにしていたのである。


そうとは知らないゲイルは盗賊達を見つけ出す為に屋敷にいる兵士達を呼び寄せた。

「今すぐ、カイルを攫った者達を探しだす!!俺を筆頭に捜索隊を組む。兵隊長と数名の兵士たちはここに残り、屋敷の護衛を頼む。いいか?絶対にカイルを探し出すぞ!」


「「「「はっ!!」」」」


そうして捜索が開始されたが勿論カイルが見つかることは無かった。

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