泣きっ面に蜂
さて、私ははねられたけれど、別に車にも自転車にもバイクにもはねられていない。
自転車で仕事に出かけようとしている中、角から飛び出してきた自動車いすと鉢合った。まずいと思ってブレーキをかけたのもつかの間。
その自動車いすに自転車のタイヤが巻き込まれ、そのまま自動車いすに押されてしまった……自動車いすは私の左足を思いっきり巻き込んでいた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
約五分くらい、しっかりとひかれて、ようやっと自動車いすは止まった。
「あらっ、ごめんなさいね!」
「いえっ! 自転車でぶつかってすみません! 大丈夫でしたか?」
「平気平気!」
こうして別れたのである。
今思っても、私は自動車いすに乗ったおばあさんを怪我させたかもしれないという罪悪感でいっぱいになり、お前普通に自動車いすに足思いっきり踏みつぶされているんだから病院行けよというツッコミを上げる人が誰もいなかった。
まあ今から仕事に行かないと駄目だしなあ、帰りにコンビニとかで支払いしないと駄目だしなあ。
そこまで考えていたせいで、私はすっかりと忘れていた。
痛さのあまりに倒れ、七日間人間の尊厳がどんどん削れていく目に遭い、今も痛さで七転八倒しているのに、痛さで頭を八割持っていかれてしまい、本気で忘れていた。
そもそもヘルニア持ちだったがために、左側がずっと痛いし左側にヘルニアがあるということは確認していたために、左側が痛いというので頭がいっぱいになり、自動車いすにはねられたことについて全く考えてもいなかったのである。
自動車いすにはねられるのは、いわゆる手動式の車いすにはねられるのとは訳が違う。ほぼバイクにはねられたようなものである。私のように全く考えが及ばず、時間制限が過ぎてしまったら無効になってしまうものの、自動車いすにはねられた場合は保険が降りる場合もあるので、もし自動車いすにはねられた場合は、すぐに病院に行ってほしい。
私は七日間寝たきりになった。今でもはねられた足はむっちゃ痛いし、ちょっと外に出かけただけで、左脚全体がパンパンになってだんだん姿勢が丸くなってくるのでやってられない。
「君よりうちのばあちゃんのほうがしっかりした足取りしているよ?」
「うるせえ。お前表に出ろ」
現在進行形で身内から馬鹿にされる姿勢でしか歩けない自分である。ロキソニンだけが友達だし、湿布は家族だし、抱き枕は伴侶である。本格的な冬になったら寒い寒いと震えながら布団を抱き枕にして寝ているのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます