不思議な青年
「わぁ、会いたかったスカジョンさん…、スゥーハァ…スゥゥゥゥゥ…」
こいつは一体何者だ? 俺のことを知ってるし、俺の秘儀「ヒツジ吸い」をも知っているだと!?
「おまえ、何者だ?」
俺の質問に、青年は苦笑を浮かべる。
「そりゃぁ…覚えてないですよね」
「?」
青年はゆっくり俺を降ろす。
「オレは【回帰者】なんです。今ボクのステータスも『偽造(フェイク)』なんですよね」
「なっ!?」
【回帰者】
簡単に言えば「人生2度目」。いや「死に戻り」など言い方は様々だが…。
「でもそれは…フィクション…なんだろ?」
地球人が「作成」した「創造物」、二次創作と言ったか、「らいとのべる」やら「いせかいてんせい」とかの作り話のはずだ。
「さすがは探求心の強いヒツジ様です。でもボクは今、そんなフィクションなはずの貴方とお話してる。これは『事実』。違いませんか?」
「そ、それはそうだが…」
「ボクの世界で二次創作だったものがこうやって『現実』と成って具現化しているんです。多重世界の絶賛経験中ってところですね」
回帰者か、なるほど。そうでもなきゃ、二足歩行の言葉を話すヒツジに対して、こんな冷静に話をする度胸なんてねぇわな。
となると「会いたかった」ということは、「今」の俺は初めましてだが、彼のいた別の世界線では俺達は邂逅しているってこと。ここは彼にとって「1度目とは違う選択をした同じ世界の2度目」ということか?
「そうですね、『ここ』はボクの望んだ世界線なんです」
俺の心を読んでいるのか!? スキル「読心力」とか!?
「やだなぁ、スカジョンさんは思ったことが顔に出てるからすぐに分かるだけですよぉ。別の世界線で何十年もずっと一緒にいたんですから」
「そっ、そうなのか!?」
にわかに信じがたい。
一応俺20階で食堂やってるけどぉ、実はぁ、99階の階層主ってか塔のラスボスだからなっ!? 塔の覇者だからなっ!?
だがしかし、その俺の直感が「こいつはヤバい」認識している!
ボクの方が強いんですよ?
感が! 匂わせ出てるって!
こっ、これが【回帰者】圧!?
一体どれだけステータス偽造してんだ!?
ヤバい変な汗出てきてケモ臭出てるって!
「スカジョンさん」
「んなっ、なんだ!?」
「確か20階で食堂してますよね?」
知ってるぅ! やっぱり知ってるぅ! 塔の情報知ってる! 回帰者本物だ!
「し、してるけど」
「ステータスを偽造してても今世は初見なんで、塔の攻略しないといけないんで、ちゃちゃっと20階まで行ってきますね」
「え」
ちゃちゃっと? 攻略? 20階まで? いきなり?
回帰青年は満面の笑みを向けた。
「ボク、尾田信長って言います。あ、尾田の『お』は尻尾の『尾』なので悪しからず」
いや戦国武将じゃん、鳴かないと殺されるホトトギスじゃん。
頭部をナデナデモフモフされた。
「待ってて下さいね、じゃぁ」
さも当然のごとく、【ゲート】が尾田信長氏の前に出現し、それに彼は入っていった。塔を行き来するゲートすらも使いこなせている。つまりは塔攻略に慣れているということ。なるほど、【回帰者】だというのは本当のようだ。
「……」
あまりに静か過ぎる周囲を見た。
「あ」
ここは1階のボスフィールドだ。ボスを倒したんだろうが、なんだろうこの「違和感」は?
「…まぁ、いっか」
ついでに1階層の皆に挨拶してこよっと。
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