俺TUEEE主人公物語の舞台【裏】
兎竜
ようこそ塔へ
俺の名前はヒツジの二足歩行ヒツジーン種スカーレット・ジョンソン通称スカジョンだ。
自分で認識しているのは、俺のいる世界は異世界人達にとって【塔】と呼ばれたダンジョン世界だということ。
俺はこの世界の20階層で食堂を営んでいる。
今日のおすすめランチは死四蝶の天ぷら。
ピコン♪
俺の前にコマンドウィンドウが表示される。
『塔の皆様にお知らせします。プキャラット人による我が塔攻略は失敗に終わりました。最高攻略層は25階でした』
この世界の状況を、この世界を創った神? が教えてくれる。
『各塔の階層ボスの皆様はお疲れさまでした。今回もボーナスを支給します』
攻略者がいないと、何もせずお給料が貰えるということなので楽ちんだ。
「あーあ、また今回もウチの塔に来なかったわ」
銀髪に紅い瞳の真祖吸血姫さん。66階層のボスだ。よく俺の店に食べに来てくれる。
「プぅなんとか人も根性がないわね25階? なめくじ野郎のところか」
小さなお口で吸血姫さんは俺の作った魔獣イノケンティスの丸焼き頭部をしゃぶりつく。
『新しい世界と接続しました』
塔攻略失敗に終わると、また次の世界に俺達の世界がお邪魔するというわけらしい。
「はぁ、また異世界人が塔攻略しに来るわね。次は骨のある生命体だといいけど」
『次の接続先は【地球】です』
「うっわ、文化レベル低そう! 瞬間に終わるんじゃないの!?」
死四蝶のフライを盛り付けして、真祖吸血姫さんにお出しした。
「弱さを知っているからこそ、強くなれるんだろ。さ、揚げたてだ、どうぞ」
「はーい、いっただっきまぁーす」
地球人か。
『地球人が【プレイヤー】になりました。塔の開放まで48時間後です』
頑張って上の階層まで来て欲しいもんだ、…話し相手が欲しいからなぁ。
『塔の皆様は塔の防衛に務めましょう』
どうやら地球人は頑張っているらしい。
たった1週間でもう10階にまで来ているそうだ。
地球人を、俺は、甘く見ていた。
「なっ!? なんだこの『あにめ』というやつは!?」
沢山のモニターに地球の資料を並べた。
「もえもえきゅん…おぉ…いえす…ぅ」
かかかかか神に頼んで地球という世界の文化を学んでるだけだし! こ、これはぁ、べ、別に敵を知るために勉強しているだけで! い、今までの異世界人達のことも勉強したし! 地球人だけに特別に興味持ったわけじゃねぇし!
「に、にほん…じん…」
ど、どんな感じが知りたいだけだし。
もふもふの体毛に必要なものを入れて、いざ、ダンジョン層へ。
「『システム、検索。日本人、階層』」
『検索中…』
この中に浮かぶウインドウはこの塔のシステムだ。「システム」と言えば色々してくれる。驚いたのが地球人のげーむやあにめやまんがに活用されていたことだ。低い文明だと思っていたが実に面白い要素で満ち満ちに溢れている…。
『検索完了』
ウインドウに塔全体と日本人の数が表示された。まぁ数十人ってところだ。
「んなっ!?」
1階層をモニタリングすると、呑気にそれはもう無防備に寝そべっている青年が映し出された。しかも1階~5階は【試練の塔】言わばチュートリアルだが、ここをクリアできなければ【プレイヤー】の資格すら無くなる。
試練の塔のモチーフは【屍遺跡】。不死身の骸骨達があれよあれよと無限沸きする。レベル上げの「雑魚パラダイス」と呼ばれ、プレイヤーには命の危機を常に持ってもらう為、次から次へとモンスターに襲わせるよう設定…教育されているはずだ。
なのにあの男は寝ているぅっだとぉっ!?
体毛から「転移ベル」を取り出す。
「1階へ」
チリン♪
鳴らすと足元に魔法陣が浮かび、望んだ層へと移動できる画期的アイテムだった。
なんと愚かな!
慌てて移動した。
誰だって命あるもの、死んだら痛いのだ、傷付くのだ。体の傷は癒えるとはいっても、傷は追ったら痛いのだ。俺達は生きているのだから!
マップで青年に印をつけておいたが、一向に動いていない!
もうすぐ到着する。
「はぁ、まだかなぁ~」
青年と目があった。
しまった! だ、大丈夫だろうか!? 一応彼ら【プレイヤー】の前だと俺達塔の住人は…地球用語でいうと…あっ【NPC】だ。【NPC】から声をかけていいものか!?
「あぁっ! 来てくれたぁぁぁぁっ!」
え?
青年は起き上がると、俺に一目散に走り寄った。
「おわっ!?」
俺の両脇に手を入れ、俺の体を高く持ち上げる。
「待ってたんですよぉ! 二足歩行のヒツジーンのスカ『ジャン』さん!」
「ジャケットじゃねぇよ!? スカ『ジョン』な!? スカーレット・ジョンソンさんな!?」
ついでに言うと初対面でいきなり人の名前略すな!
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