9話反撃をいたしましょう

「お帰りなさいませ。リア様、マイア様」


マイア家の前にいたアンに出迎えられて、

私たちは無事に帰宅した。


「ふぅ、気分の悪くなるお茶会でしたわ。

あの女いつも香水がキツすぎて胸焼けしそうになります」


鼻を塞ぎながら両手で匂いを払うジェスチャ―をするマイアを見て、

少し面白くなりクスクスと笑う。


「それで・・・くだらないお茶会に参加した価値はありましたか?」


1人だけ置いていかれたことに、

まだ不満を持っているのか。


ちょっと刺々しい口調でアンは質問してくる。


「えぇ、バッチリよ。これも全部マイアのおかげね」


「いえいえ、私はなにも。リアの普段の行いが良いから、

私もご助力を決めたのです」


「どうでもいい人を助けるほど、私はお人好しではありませんので」


そういいながらマイアはポシェットから、

細長く黒い棒を取りだした。


棒についている丸いくぼみをマイアが押すと、

そこから聞こえたのはトーレラの声。


「レイ様とは1年以上前からの仲なの」


「!?・・・それも魔道具・・・なのですか?」


突然声が聞こえたことに驚くアン。


私も最初マイアに見せて貰ったとき、

酷く驚いたものだ。


「凄いわよね。確か・・・タイムレコードだったかしら?」


「そうです。3日間、任意の言葉を1呼吸分まで

記録できる魔道具ですわ」


「それもまた微妙ですね・・・」


「微妙だから我が家で所有が許されていますので。

有用な道具でしたら、とっくに王家に献上しています」


「それもそうですね」


噂だけれど魔道具というものは、

天気を予知する。


なんて神様のようなことができる

効果のものもあるらしい。


とはいえそんな超常的な存在は、

私の人生には何の関係もなく。


今大事なのは証拠が無くなる3日以内に、

決着を付けねばならないということだ。


というか、そうじゃなくても長引けば噂も広まるし、

結果として家名の評判も悪くなる。


更にさらにエンポリオ家を慕う家名と、

クラブ家を支持する家名でも小競り合いが起こるだろう。


トーレラとレイは、

自分たちの恋愛を盛り上げるスパイスぐらいに思っているかもしれないが、

実際にはもっと大事になる可能性があるのだ。


・・・そんな感じの諸々の事情をあって、

決着は早いところ付けた方が良いはず。


う~ん、明日ね。

そうと決まれば善は急げ。


私は2人にあることをするために、

相談をすることにした。


「私・・・貴族裁判を開こうと思うのだけれど、

どうかしら?」


「貴族裁判ですか?・・・相手が応じるでしょうか?」


「貴族同士で問題が起きたときに、

立会人の下でどちらが正しいか議論する制度ですよね?」


マイアとアンがそれぞれ疑問をうちだす。


「相手は必ず応じるはずよ。それと立会人はクラブ家に頼むつもり」


「えっ!?レイ様と裁判をするのでは・・・?」


「それだと立会人を探すのに時間がかかるでしょう?

だからトーレラ様と裁判をしようと思うの」


「その発言に対しての真実についてね」


タイムレコードを指さしながら、

私はふっと笑う。


「リア様が決めたことでしたら、

私は従わせて頂きます・・・

いざとなればトーレラ家を滅ぼすだけですし」


「アン、物騒なことはやめて頂戴ね」


このメイドだと本当に滅ぼしかねない。


根拠はないけれど、

そんな予感がひしひしとするのが恐ろしい。


「私もお手伝いさせてくださいな!

リアが浴びた汚名を倍返ししてみせますわ!」


「頼りにしてるわ」


そうして私は貴族裁判の準備を始めた。


さぁ、反撃を始めましょう!

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