8話トーレラのお茶会にお邪魔しますわ(後編)

お茶会が始まって1時間。


最初はどうなるかと思っていたけれど、

ひとまずは穏やかな空気が流れている。


・・・表面上は。


「こちらのお茶、美味しいですわね!」


「流石トーレラ様ですわ!」


なんて取り巻き令嬢の言葉に、


「流石トーレラ様。犬のしつけをしっかりしているのね」


と思いっきり喧嘩を売るマイア。


・・・やっぱり穏やかな空気は流れてないかな。


私はというとこのお茶会の中で最も身分が低い士爵に偽装していたこともあり、

最初の発言以降は愛想笑いだけで全て済ませていた。


そう簡単にボロはださないか・・・


残念だけど今回は外れかな?


諦めかけたとき、

取り巻きの1人が素晴らしい話題転換をしてくれた。


「ところで・・・

レイ様とはいつからのご縁なのですか?」


「ちょっと!場所をわきまえなさい!」


他の取り巻きが諫めるも、

トーレラはマイアをチラっと見て

なんでもない風に話し始めた。


「いいのよ。レイ様とは一年以上前からの仲なの」


「で、でもレイ様には婚約者がいたような・・・?」


そこでおずおずといった感じで私は質問する。


するとトーレラは豚でも見るような視線で答えてくれた。


「はっ!あんなつまらない女が婚約者なんて、

レイ様が可哀想でしょ」


「彼のとなりに立つのは、

私のように美しく聡明な女性であるべきなのよ!」


「それでリア様からひどい仕打ちを受けたって嘘を吐いたんですか?」


「あら、嘘じゃないわよ。

本来私が婚約者になるべきだったのに、

あの女がその地位をとったんだから」


「だからレイ様にちょっとあの女の話をしただけよ?

本当に絆があるんだったら、

私の話なんか信じずに婚約を続けていたはずでしょ?」



「それがないから婚約破棄されたのよ!

いい気味だわ!」


それから高笑いするトーレラとヨイショする取り巻きたち。


それをみてマイアはゆっくりと席を立ち一言。


「私これで失礼しますね。トーレラ様に一つご助言を」


「その香水もドレスも最高に品がなくて下品です。

あなたの醜悪な人間性があふれ出ているので、

もっと品位ある外見を目指すことをお勧めします」


マイアの目は心底軽蔑しているのをものがたっていて、

トーレラは着ているドレスのように真っ赤になって怒鳴っていた。


「なんですって!」


「あらあら、図星を指されて怒りました?

ごめんなさいね」


「でも・・・あなたとレイ様って下品な人同士でとってもお似合い。

リア様とレイ様程度の男は全く釣り合わないと、

以前から思っていたので祝福しますわ。」


「さ、リリア様も行きましょ」


「あ、はい」


そうして悠々と立ち去るマイアについていきながら、

チラっと後ろを見るとトーレラたちは忌々しげにこちらを睨みつけていた。


なにかされるかな?

とも思ったけど特に何も起こらず。


そのまま馬車に乗って、

アンの待つマイア家に戻ることになったのだった。


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