2話.馬車の中の女子会(反省会)タイム

「お喜びになるのは結構でございますが…

これからどうするおつもりで?」


私を冷ややかな目で見ながら聞いてくるメイド。


彼女はアン。


幼少期から私付きのメイドとして、

ずっとそばにいる頼れる忠臣だ。


ほぼ表情筋が動かないところが玉にきずだが、

彼女以上に信頼できる相手はほとんどいないと断言できる。



とはいえこの質問にはどう返事するべきか…


……悩んだ結果、はぐらかすことにした。


「どうしようかしらね?」


「なるほど、つまり何も考えていないということですね」


「でしたら…僭越ながら具申してもよろしいでしょうか?」


「まぁ、言うだけなら良いわよ」


私がそう言うと、アンは無表情のままペラペラと恐ろしいことを言いだした。



「まずお嬢様に対して嘘の噂を流した人間を全員処刑しましょう。

特に嘘の証言をした女には伯爵位を敵に回したらどうなるか……

じっくりと味合わせる必要がありますね」


「それから、あのふざけた元婚約者は磔にして串座死刑にするのが宜しいかと」


「その際は一番槍はお任せください。

あの男の下半身を見事貫いてみせましょう」


無表情だから分かりにくいけど…恐らくアンは本気で言っている。


長年の付き合いだから分かる…

このメイドは私がゴーサインを出したらすぐにレイを串刺しにするはずだ。


……なんでこの子メイドやってるんだろ?


余りの恐ろしさにそんな疑問も芽生えたけれど、

それだけアンも今回のことに怒りを感じているのだろう。


だから私がかけるべき言葉は決まっている。


「ありがとう、アン」


「でもそこまでしなくても大丈夫よ」


「私は特に恨んでもないし、逆にラッキーと思ってるぐらいだからね」


「それは先ほどの様子をみればわかりますが」


「あのふざけた男はお嬢様に無理強いしかさせてこなかったですからね」


「お嬢様がそう思うのも無理はないです」


アンの言うとおり。


レイとの婚約が決まってから、私の生活は一気に息苦しい物に変質してしまった。


毎日ドレスの色から付き合う友人まで決められる日々。


『女性たるもの男性を立てるべし』


という王国の思想があるからしょうがない面もあるんだけど、

それにしてもレイはなんでも自分の思い通りにしようとしていた。


毎日のスケジュール表を送られた時には、

思わずため息がでたものだ。


だけどそんな日々も今日でおしまい!


後は…お父様とお母様になんて説明すればいいのかだけが問題ね。


私がどう説明するか考え終える前に、

馬車は我が家に止まってしまった。


さて、どうしようかしらね?

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