おたのしみ

※軽い性描写??が含まれるので注意※

――――――――――


 しばらくして、夕暮れ時……


 俺はまず椅子に座らされて。

 身体の右側は王女ジェシカ、左側は聖女マリリに支えられて、

 正面からは剣聖エリカが、毎度おなじみ”あーん”をしてきた。


 ぱく、もぐもぐもぐ……

 美味しい……


「ありあわせの食材ではこれぐらいしか作れませんが、お口に合えば幸いです……」


 聖女マリリが作ってくれたビーフシチュー。


「美味しいよ。マリリ……」


 嬉しすぎて、幸せすぎて、また涙が出そうになるのを必死で我慢する。


「……本当に、みんな、ありがとう……

 俺は、みんなに貰ってばかりで、何も返せるものがなくて……

 不甲斐なくて、申し訳ない……」


 俺は、自分で手を動かすことすら出来ない男だ。

 ずっとずっと、三人に支えてもらってばっかりだ。

 こんなの、まるでヒモ男じゃないか。

 ……情けない。


「……なに言ってるんですか、勇者っ」


 マリリが言う。


「私たちはあなたから、返しきれないほどの大切なものを貰っています。

 ……元気を出してください。

 これから魔王を倒すんでしょう?

 ……もっと、昨日までみたいに、私たちに偉そうに命令してくださっても良いんですから!」


 いや……それは流石に……


「……俺は、そんなこと、出来ないっ……

 今まで、酷いことばかり言ってすまなかった……

 ……傷つけたよな?

 ……本当に、ごめん……」


 ……俺は、この優しい三人に、とんでもなく酷い仕打ちをした。

 そうだ……俺は、悪いヤツなんだ……

 ……こんな、幸せな目に、遭っていいはずがないんだ……


「ねぇ、レジェ……」


 するとエリカが俺の両頬を掴んできた。

 

「……私たちに対して、遠慮は無用むようよっ!

 そんな風に落ち込んでしおらしくなってる姿なんて、勇者らしくないわ!

 ……いつも元気で、頭がおかしくて、

 他人になかなか理解されなくて……

 でも、本当は優しくて、強くて、

 結局みんなを助けてハッピーエンドにしちゃう。

 そんな勇者あなたに、私はれたんだからっ!」


 エリカはそんな言葉とともに、俺を正面から抱きしめた。


「……そうですよ、勇者。

 ……あなたは初対面の王様にパウンドケーキを投げつけて、

 王女と剣聖一位と大聖女を誘拐して、

 ウンコの仮面を被って魔王軍四天王を倒し、 

 悪政を破壊し奴隷エルフたちを解放し、

 一人で魔王城に乗り込んで魔王軍を壊滅させる。

 ……そんな頭のおかしい人なんですから……

 …………今までみたいに、無茶苦茶やって良いんですよ?」


 王女ジェシカが、俺の右耳元で囁いてくる。


「……そうね。

 ……私たちには、どんな命令をしても良いんですよ?

 たとえエッチな命令だとしても……

 私たちは、あなたの妻なんですから……

 どんなプレイにでも、お付き合いいたしますわ……」


 聖女マリリ、いや、痴女マリリというべきか。

 彼女が俺の耳元で、吐息とともにそんな誘惑を囁いた。


「と、当然ねっ! おっ、奥さんなんだからっ!」


 エリカが顔を真っ赤にして叫んだ。


「……私は、エッチなことは初めてなのですが……うまくできるでしょうか?」


 ジェシカが不安そうに吐息を漏らす。


 ……おいおい、待て待て待てっ!

 また話が急すぎやしないか!?


「……そうか。お前ら……よく分かったよ……

 まさかお前らが、俺の罵倒を欲しているドMの変態だったとはなぁ……!!

 いいだろう、勇者であり旦那でもあり、RTAの神であるこの俺がッ!

 お前らをこき使ってやるよ! メス豚言いなり妻どもっ!!」


 俺は怒鳴った。


 ……そして、シーンと静まり返る食卓。


 ……………


 ……三人はポカンとした顔で、俺を見ている。


 …………うん、恥ずかしくて死にたいです。



「「「…………プッ! あはははははははっ!!!」」」


 一拍置いて、三人は噴き出し、腹を抱えて笑い出した。


「……くふふっ!! そうねっ! それでいいのよっ!

 ……そうやって偉そうにしているあなたの方が、私は好きよっ!

 私たちに遠慮なんて要らないんだからっ!!」


 エリカが涙目で笑い転げる。


「……そうです。私たちはあなたの言いなりです。

 つまりっ、あなたの”メス豚言いなり妻”であることが、私たちにとっての幸せなんです!

 ……ふふっ……

 一体なんですか? メス豚言いなり妻って……あははっ」


 ジェシカが可笑しそうに俺の背中を抱く。


「……あぁっ、ドMの変態だなんてっ!

 聖女である私に、なんたる罵倒っ///

 いったい私たちに、どんな卑猥なプレイを要求するおつもりですかっ!?

 やはりあなたは変態だったんですねッ!? 勇者ッ!?

 …………なんて、冗談です……

 私たちはあなたが、いい人であると知っています。

 だから安心して、身も心もあなた様に捧げられるんです」

 

 聖女マリリが、一転して落ち着いた声でそう言った。



「…………そういうことなら。

 俺は遠慮なく命令させてもらうぜ。

 まず、作戦会議の前に、

 お前たちのことについて聞かせてくれないか?

 お前らが生まれてから、今日に至るまで、どんな人生を過ごしてきて、どうして俺に惚れたのか?

 一人ひとり教えてくれ……」


 俺は、三人にそう言った。

 すると三人は……

 少し困ったような顔をした。


「……私の過去なんて、聞いても面白い話じゃないわよ?」


 エリカが言う。


「……私も、自分のことを話すのは、正直ためらいますが……

 ……でも私は、エリカやマリリ、レジェのことがもっと知りたいです。

 ……だから……えぇと……」


 ジェシカが言う。


「……そうですね。

 皆、話したくない過去はあるかと思います。

 もちろん私にも……

 ……レジェもそうですよね?

 ……私たちに過去を、洗いざらい告白できますか?」


 マリリの問いに、俺は言葉に詰まった。


 俺の過去。

 小学生の頃よくクラスでいじめられて、不登校になって、家でずっとゲームしていた過去。

 両親は優しかったから、俺が引きこもることを許してくれた。

 そして、朝も昼も暗い部屋に籠もり、ネットが現実世界になって……

 RTA記録を打ち立てて、チヤホヤされることだけが生きがいになっていた。

 いつしか俺はネットで、RTAの神と呼ばれるようになった。

 合成音声でRTA実況動画を配信して、稼げるようにはなっていたけれど。

 友達なんて一人もいなかった。

 ゲーム内の2次元キャラクターが、俺の彼女だった。

 ネットと現実の区別がつかなくなって。

 ……いつしか俺は、現実世界の人間と、ゲームのキャラクターを区別することが、できなくなっていた……

 ネット上ではみんな同じ、文字テキスト画像イラスト音声ボイスで構成されたアバターなのだから……


 …………


 こんな過去、言えるわけがない。

 万年引きこもりの俺が、ジェシカやエリカやマリリに対して、おどおどせずに傍若無人に振る舞えていた理由……

 それは、三人のことをただのキャラクターだとみなしていたからだ。

 ゲーム内キャラクターだと認識していた。

 ……ジェシカ、エリカ、マリリはちゃんと、血の通った人間なのに……


 …………嫌われなくない……


 俺は彼女たち三人に、どうしても嫌われなくないのだ。

 ……嫌われ勇者失格だな……


 俺は、彼女たち三人を、ゲーム内キャラクターではなく人間だと……

 女の子だと、恋愛対象だと見てしまった。



「……過去のことは、話したくないな……」


 三人に、俺の過去を知られるのは、嫌だ。

 すごく怖いのだ。

 俺の過去を知ったら、きっと俺は、彼女たちに幻滅される。

 ……嫌われたく、ないから……




「……そうですね。

 みんな知られたくない過去はあるでしょう……」


 聖女マリリの言葉によって、俺は思考の渦から現実へと引き戻された。


「……しかし、私たちが勇者パーティとして、家族として、

 これから深い信頼と愛によって、結束する必要があること。

 これもまた事実です……」


 マリリはゆっくりと言葉をつなぐ。


「……みんなで一緒にお風呂に入りませんか??」


 ……えっ??


「……お互い全てをさらけだせば、腹を割って話し合うこともできると思うんです。

 私たちは、より深いところで繋がりあうことが出来るはずです……」


「ちょっと待ったあぁあああっ!!!」


 俺は思はず、叫びだした。


「……い、一緒にお風呂に入るだとっ!? そ、そんなのっ…… そんなのっ!!

 まだ俺は心の準備がっ……!!」


 脳内で繰り広げられる数多あまたなるピンク色の妄想……

 だめだ、想像しただけで顔が蒸発しそうだ……

 混浴なんて、耐えられない……

 下半身を抑えられる気がしないっ!!


「……え?

 なに言っているんですか? 勇者?

 私たちと一緒に入らないのですか?

 レジェは自分で歩くことはおろか、服を脱ぎ、身体を洗い……

 手を動かすことすらできないというのに……

 ……一体どうやって一人でお風呂に入るつもりなのですか??」


 マリリが至極真剣な目つきで俺を見る。


「……え? あぁ……まぁ……」


 確かに、

 ぐうの音も出ない”その通り”だ。……


「……決まりねっ!」


 エリカが満面の笑みで応えた。


「私、両親以外とお風呂に入るのは初めてなので、すっごく楽しみですっ!!」


 ジェシカが無邪気な声ではしゃいだ。


「……ふふ、安心してください、レジェ…

 私の手でレジェの身体を、隅々まで綺麗にしてさしあげますから……」

 

 マリリが桃色の唇を湿らせながら、白い五指を俺の首筋に這わせた。


 ……あぁもう、どうにでもなれ。


 そして……俺は……マリリに抱えられながら、

 三人の妻によって、大浴場へと連れ去られたのだった……





















 このあとめちゃくちゃセッ〇スした。

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