ウ◯コ仮面参上!


 叫んで、飛び出て、ジャジャジャジャーン!

 弱い者の味方、ウンコ仮面が、みんなを助けに来たよ──!


 不覚にも、時間ロスしてしまった。

 まさか俺が寝てる隙に、手と足の縄を斬って逃げるとは、

 迂闊だった。


 慌てて三人の足跡を追いかけると、

 ジェシカとエリカとマリリは、焚き火の周りで魔族達に捕まっていた。


 なんか強そうな魔物が、三人の手足を縛りつけて、エロい目を向けていたので、


 途中の道で拾ったウンコ看板を被った俺が、素手でソイツをぶっとばしたまでです、ハイ。


 勇者の剣は使わず、素手でね。

 三人に仮面の中身を気づかれる訳にはいかないので。

 

 俺の女たちに手を出すんじゃねぇ!



「まさか……、ウ○コ仮面……? 本物!?」


 エリカが目を輝かせて、俺を見つめてきた。

 一体どうしたのでしょう?

 エリカはウ○コが好きなんですかね?

 変わった女の子です。


「ぐぅぅ……痛ぇ……貴様っ……何者だっ!?」


 これは驚きましたね……

 殴り飛ばしたはずの魔物が、かろうじてまだ生きていたのです。

 まぁ瀕死なので、もう一発でオーバーキルだと思いますが。


「ぎゃぁぁあ!! ゔぇっ、ヴェロキア様っ!? ご無事ですかっ!?」

「この人間、ふざけた見た目のくせに……強いっ!」

「に、逃げなければっ!」

「バカかお前ら、ヴェロキア様が負ける訳ないだろう!」


 魔族たちがギャーギャー騒いでいます。

 うるさい早く殲滅せんめつしたい。


「ガハハァ……! や、やるなぁ貴様っ……

 強いとわかってるなら、もう油断はしねぇ……

 一瞬で消し炭にしてやるぜェ……

 【殲滅エクスタミ覇光バーネルブ】」


 目と口の大きなデブ魔族は、

 漆黒の魔法を手の中に溜めて、俺に向かって打ち出してきました。


「ガハハッ!

 山ひとつ消し飛ぶ威力だあっ! みんな終いだぁぁ!

 魔王軍四天王ヴェロキア様を舐めるなよぉぉ!!」


 へぇ、魔王軍四天王ねぇ……

 ヴェロキアって言うのね。


「な、なんですかっ!? ありえないっ、こんな魔力量っ」


 聖女マリリが震え声で恐怖していた。


「ひぃぃ!! ヴェロキア様っ、俺たちも巻き込む気ですかっ!?」

「ダメだっ、この魔法はっ、俺たちの骨も残らねぇ」

「そんな酷い、あんまりですよぉっ!!」


 俺の近くの魔族たちが、ギャーギャー騒ぎ立てて、散り散りに逃げ出した。


 これが四天王の底力……

 死にかけた四天王ヴェロキアの、最後の奥の手か……


 ふん、大した事ないな。


 俺は、まっすぐに拳を突き出した。

 本気の拳、それは大気を歪ませる。

 そして巻き起こる爆風。

 凄まじい爆風が、ヴェロキアの魔力塊に、衝突して、

 押す、押す、押し返す。


 ヴェロキアの魔力塊は、勢いを止めて、

 風に煽られ逆向きへ。

 爆風に押し戻されて、もと来たほうへ、ヴェロキアの方へと戻っていく。


「な、なにぃぃ!?」


 大きな目をかっぴらくヴェロキア、

 開いた口が塞がらないようだ。


「おりやおりゃおりゃおりゃぁ!!」


 俺はダメ押しとばかりに、魔力塊へ向けて、風の拳を連続で叩き込んだ。

 ただのシャドウボクシングですね、ハイ。


 ボボボボボォォ!!

 ゴォォォ!!


 魔力塊は風に煽られ勢いを増し、ヴェロキアへと押し戻されて……


「まっ……!!?」


 ヴェロキアは大爆発に巻き込まれて死んだ。


 自分の魔法で殺される気分はいかがかな?


 ドゴォォォオ!!!


「な、なんですか……この凄まじい風魔法は……!?

 いや、魔法の杖もなしで……えぇ?」


 聖女マリリが俺を見ながら、驚愕の声を上げていた。

 ふむ、残念ながら魔法ではないのです。

 ただのシャドウボクシング……素振りなんです。


「ひ、ひひぃ、バケモンだぁ!!」

「ぎゃあぁ、殺さないでぇぇ!」


 俺に怯えて、魔族たちが逃げ惑う。


「逃がさねぇよぉ!」


 俺は逃げていく魔族たちに向かい、勢いよく拳を突き出した。


 ドカーーン!!


 爆風に吹っ飛ばされて、木々が根こそぎ吹っ飛んでいく。

 魔族たちは全滅。

 うん俺、強すぎるね。

 俺が寝ている間に、さらにレベルが上がっていたみたいです。


「あ、あ、あの……」


 すぐそばで、エリカの怯えた声がした。

 俺は、ウンコの仮面越しに、仮面に開けた穴からエリカを見た。


「ウ○コ仮面さんっ……!

 私たちを、助けてくれて、ありがとうございますっ……」


 剣聖エリカは、今まで俺に見せたことのない可愛い表情。

 顔を赤らめた女らしい、恥じらいのある表情で、


「あ、ありがとうございます」

「ありがとうございます」


 続いてマリリとジェシカが、安心したような泣きそうな顔で、俺を見上げる。

 だが残念、地獄はまだ終わらないよ。

 ウンコ仮面の正体は俺、クズ勇者レジェなんだから。


「あの、私っ、あなたのことがっ……!」


 剣聖エリカは言葉を詰まらせながら、


「す、好きですっ!

 ずっと私は、私より強くて、カッコいい男性を探していましたっ!」


 は?

 エリカの言葉に、俺は耳を疑った。


「え、エリカさんっ!?」

「なっ、ななななっ!?」


 マリリとジェシカも驚愕していた。


「ウ○コ仮面さんっ! あなたは私のヒーローですっ!

 だから、わたわた私とっ! 結婚を前提にお付き合いしてくださいませっ!!」


 そう言って剣聖エリカは、頬を赤く膨らませ、唇を噛みながら、俺に深々と頭を下げた。


 え? え? エリカさん。

 ウ○コが好きなんですか?

 冗談でしょう?

 ちょっと俺にはついていけないぜ。


 俺は特殊性癖のエリカから、まさかの恋心を抱かれてしまったが、

 俺のレベルが下がる気配はない。


 エリカが好きなのは、ウンコ仮面であって、勇者レジェでは無いのである。


 ウンコの仮面に助けられたな。


 俺に対する憎悪はそのままに、三人を魔族から助けることができた。


 さて……

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