12月08日(金)

第1話

「雨、降りそうだな…。

 帰るまで降らなければいいけど」


 12月のある日

 主人公の小鳥遊 遥たかなし はるかは窓の外を眺め、今にも雨が降り出しそうな空模様を見てそう呟いた。



「結局帰る前に降り出しちゃったな…」


 買い物を済ませスーパーから出ると、雨が降り出していた。


「持ってて良かった折りたたみってね」


 朝の天気予報で雨が降るかもと言っていた為、鞄にしまっていた折り畳み傘を取り出し買い物袋片手に帰路に着く遥。


「ん?あれは…」


 住んでいるマンションの近くの小さな公園。

 その公園にあるベンチで傘もささず座っている見覚えのある人を見て、遥は近づき声を掛けた。


琴葉ことはちゃん、こんなところで傘もささないで何してるの?」

「……小鳥遊先輩」

「風邪、引いちゃうよ?」

「……ほっておいてください…」

「そう言われてもなぁ…流石にほっとけないって」

「…」


 遥の通う学校で聖女様と呼ばれる後輩。

 そしてマンションの隣の部屋に住んでいる彼女、ひいらぎ 琴葉。

 そんな彼女はとても辛そうな表情をしており、放っておける状況ではなかった。


「帰らないの?」

「……帰りたくないんです」

「うーん…。

 とりあえずこのままここに居るのはあまり良くないし、うちにおいでよ」

「……大丈夫です」

「いやいや、そんな顔して大丈夫な訳ないじゃん!」

「ッ!!」

「話くらいなら聞くから、とりあえず行こ?」


 そう声をかけ、琴葉の手を掴み少し強引に連れて行くことにした。

 特に抵抗もせず大人しくついて来る琴葉を傘に入れ、家までの道を急ぐ。

 5分もせずマンションへ着き、オートロックのエントランスを抜けエレベーターに乗り3階へ。

 鞄から鍵を取り出し、鍵を開け部屋へ入る。


「ただいま〜」

「…」

「タオル持ってくるからちょっと待っててね」


 そう言って玄関を上がってすぐの脱衣場に置いてある洗濯済みのタオルを取りに行く。


「はい、これ使って!」

「……ありがとう…ございます」

「暖房暖まるのに時間掛かるし、着替え貸してあげるからシャワー浴びてきな?」

「い、いえ…それは…」

「いいからいいから!

 それとも……一緒に入る?」

「ッ!!シャ、シャワーお、お借りします!」

「うん!濡れちゃった服は洗濯機に入れて置いて!」


 脱衣場へ逃げ込んでしまった琴葉を見送りつつ、遥は買い物袋を持ち直して部屋の奥へと入っていった。

 制服から着替え、買ったものを冷蔵庫へ仕舞い、自身の脱いだ服と琴葉へ貸す着替えを持ち脱衣場へ。

 コンコンと2回ノックをしてから中に入り琴葉へ声をかける。


「琴葉ちゃん!着替え洗濯機の上に置いておくね!」

「あ、ありがとうございます。」

「下着は流石にサイズ合わないと思うから、ちょっと申し無いんだけど、乾くまで我慢してもらっても大丈夫?」

「は、はい!だ、大丈夫です!」

「乾燥機使えばすぐ乾くから!」


 そして洗濯機を回し夕飯の準備をする為、遥は脱衣場を後にした。

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