リュッセロ 1

 半日程かけて歩くと段々と疲れが溜まってくるものだ。リリーも体力には自信があったが、流石に歩きっぱなしだと無理がある。

 

 リリーは汗を拭き取りながら前を歩くロズリィを見た。


「リリー!もうすぐですよ!ほら頑張って!」


 100m先から聞こえてくるロズリィの声。

 そう、ロズリィは歩きっぱなしでもピンピンしていたのだ。


「普通魔術士は運動できないのが欠点じゃないのか!」


 リリーがロズリィに聞こえるくらいでかい声でツッこむ。


「旅してるんだからこれくらいの体力はありますよ!リリーも頑張ってください!」


<くっそ!最近鍛錬を怠っていたのが裏目に出たか、自分が憎い!>


「なんか言いました?」


「独り言だ!」


 そこからリリーは、空いた距離を埋めようと足を速める。

 すると、再びロズリィに声を掛けられた。


「リリー!見えてきましたよ!」


 その意味を即座に理解したリリーは、安堵の表情になった。


「そうか、ようやく休めるのか」



 太陽が真上になる頃。ようやく2人はリュッセロに着いた。


「あ、リリーちょっと待っててください」


「ん?なんだ?」


 門に入る前にロズリィは茂みに入った。

 そしてしばらくすると。


「お待たせしました」


「・・・なぜその姿になる必要がある?」


 茂みから出てきたロズリィはパーティにいた時のようなフードを被った男の方の姿になっていた。


「この姿の方が便利なんですって、まぁ行けば分かりますよ・・・あぁリリーもフード被っててくださいね。王女だってバレたら色々困りそうですし」


「あ、あぁ分かった」


 リリーは怪訝な表情になりながらロズリィと共に街に入るための門に行くことにした。

 

 門に行けばリリー達は門番に止められる。

 

「そこの2人。見ない顔だが、身分を証明するものはあるか?」


「えぇ、これを」


 ロズリィは門番にカードのような物を渡した。

 渡された門番はその中に記載されている文字を読み。


「し、失礼しました!」


 記載されている内容に驚きながら、慌ててロズリィにそのカードを返す。


「ありがとう」


「ではお連れ様も」


「私の連れという言葉では証明になりませんか?」


「い、いえ!十分です!」


 まさかのほぼ拘束されることも無く、尚且つ無料で入れた。


 門番に見送られながら、リリーはロズリィに気になったことを聞いてみる。


「どういう仕組みだ?」


「これですよ」


 聞かれたロズリィはさっき門番に見せたものと同じカードを見せる。

 

「こ、これは・・・なるほど、門番の態度が変わるのも納得だな」


 そのカードに記載されていたのは、魔術士協会と言う名前とロズリィの顔(フードで顔を隠した状態)や個人情報。現在地の階級などが記されていた。


「これさえあれば国境だってほぼスルーなんですよ」

 

 いかにこのカードが重要か分かって直ぐに返したくなったリリー。しかし、ある箇所に目が止まり凝視してしまった。


「おいロズリィ。其方歳はいくつだ」


「え!?え、えーと24歳ですね」


「ふ〜ん」


 記載されている物とロズリィが言った歳に乖離は無い。が、リリーはジーッとロズリィを凝視した。


 チラチラとリリーの表情を確認して、ついにロズリィは諦めたのか「はぁ」とため息を吐いた。


「本当は15歳です」


「だろうな」


 魔術士協会が記した魔術規定により人は14歳未満の魔術の使用は禁止されている。

 しかしロズリィが活躍し、リリーの元に噂が届いたのは5年ほど前のはずだ。


「やってるな」


「誰にも言わないでくださいよ!お願いします」


 ロズリィがリリーに懇願することで、大柄の男に縋り付かれる少女という構図ができ上がってしまった。


 当たり前だが視線が痛い。


「あーもう分かったからあんまりその姿で引っ付くな!」


 これから宿を探そうというのにさらに疲れてどうするんだとリリーは思う。

 

 ロズリィを引き離し、早く宿を探そうと行動に移そうとしたリリー。

 だが先にロズリィが何かをみつけた。


「あ!リリー少し寄り道していいですか?」


「手早く済ませれるのなら別に構わんが・・・」


「では、あそこに」


 ロズリィが指し示した場所。そこにあったのは魔術士協会リュッセロ支部と書かれた看板だった。


(嫌な予感しかしない)


 そう思いながら、リリーは何故か嬉しそうなロズリィに急かされながら建物内に入るのだった。

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Lost Way:ロストウェイ @nonomekyou

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