商品としての自己出版本

第18話 ちょっとの手間で2冊分=2商品の完成!

 今回は、POD出版(以下今回は「オンデマンド」で)と電子書籍出版の差から生れる商品の特質について考えてみたいと思います。

 書籍と言えども、商品の一種であります。

 そんなことは言われるまでもないこととは思われますが、最初にあえて申しておきましょう。これは、自分の関わる商品、ここでは書籍という商品に対する必要を超えた思い入れを排除して客観的に状況を見るための措置です。

 どうしても自分の思い入れのあるもの、今ここで述べられているものについてはその特殊性について目が行きがちなものですが、ここでは「商品」という大きなくくりの中で自己出版本というものはどのような状況下にあり、そして他の商品と言われるものと、どこに相違点があるのかということについて、述べてみたい。

 では、行ってみましょう。


 こうしてあっという間にオンデマンドと電子書籍出版の両方ができてしまったわけですが、確かに同じ内容の本とは言うものの、2冊、すなわち2つの商品を一度に作ってしまったということになるわけです。

 これは決して、詭弁でも何でもないでしょう。

 実際、楽天は言うに及ばずアマゾンでさえも、それぞれの商品の販売頁に飛ぶようになります。電子書籍が欲しい人がオンデマンドのほうも見るかもしれないが、それはそれ。その逆もまたしかり。元のデータ投入からして同じではないのですから、そこはやはり、内容云々の話は別として、やはり別商品というもの。


 ですが、ほんのちょっとの手間だけで、あっという間に2冊の本、もう少し表現を変えてみれば、2種類の商品が完成し、顧客に提供可能となるわけです。

 これが歯磨き粉とかノートといった商品でしたら、どうでしょうか?

 前者であれ後者であれ、ま、後者のノートのほうがわかりやすいでしょうから、こちらでたとえ話を行きましょう。

 色違いの商品があるとしますね。コクヨさんのは確か赤い表紙が少し本文の罫線間の幅が広く、青い表紙は少し狭いバージョンだったかな。そんなパターンもありますが、これらは同シリーズにしても明らかな別商品だ。

 電子書籍とオンデマンドの紙の本はこのノートの関係にどちらかと言えば近いかもしれません。

 しかし、中はまったく一緒ではあるが外の表紙の色だけが違うという場合もありますね。これは別商品ととれるかどうか。表紙だけが異なっていても中身が一緒であるなら、同一商品の別バージョンとも取れますね。


 私の場合、スーツを着る際は必ずワイシャツにカフスボタンを留めます。数か月前にワイシャツを量販店に見に行ってサイズの関係でちょっとしたことから女性店員さんに言われたことでよせばいいのに喧嘩を買うような言動までしてしまいましたが、それだけこだわりのある部分にかかる商品なので、ごめんねってことで。

 武勇伝もどきはともあれ(苦笑)、このカフスボタンという商品は価格の高いものから数百円の手軽なものまでピンキリありまして、まあ、金がもったいないから安いものを使っていますけど(苦笑)、折角だからということで色違いを揃えたりもします。これは確かに別商品だろうけど、たいていはアマゾンであれ楽天であれ、同種商品の別要素の品という扱いですから、同じ頁で商品紹介されていることがほとんどです。もちろんネクタイピンのように明らかに図案の違うものは、別商品扱いです。


 ちょっと例えを延々述べてみましたけど、やはり、電子書籍とオンデマンドの紙の本は、単なる色違い程度の差ではないですね。どう見ても。もちろん先のノートの罫線幅違いの別商品以上の差はみられますけど、質的な差としては、やはり最初のノートの例えと同じパターンであると言えましょう。


 というわけで、同じ内容物から異種機能を持った別商品が2品も、少しの手間をかけるだけであっという間に出来上がってしまうシステムができていることに、こうして書いておりまして改めて感じ入ることしきりです。


 こうして出来上がった「商品」ですが、10冊作った段階で、要は20種類の商品が自己の作品として、もとい、自分の商店から発売される商品としてネット上のサイトに掲載され、そこで販売されることになるわけです。

 それも、出版社を通した書籍のように何カ月もかかることなく、下手すれば数週間も経たないうちにたくさんの商品を陳列できるというわけです。下手な物品販売なんかより、この方がかなり早く効率の良い「商品生産」ができているのだなと、そんな思いさえも抱くほどです。


 考えてみれば、この「自己出版」という概念でくくられる「物品販売業」という業態の事業は、ある程度こちらに売りに出せるだけの仕入、今回の場合はすでに執筆し、現に執筆が見込めるだけの「作品」という名の「商材」が「在庫」もしくはそれに準ずる状態として存在していることが前提となりますけれども、その上で、商品生産から出荷、それから販売を経て納品に至るまでのサイクルの時間を極限まで縮めることができるシステムであると言えましょう。

 なおこれはあくまでも私自身の仮説ですので、かれこれ論証の弱い部分や反証を受けるべきところもあるとは思われますので、そこは何卒御指摘いただければ幸いです。

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