第6話 自己出版は、スピードが命。

 30年くらい前の私が20代の頃のこと。

 当時は学習塾の講師をしていたため、テレビなど見るヒマは全くありませんでしたが、それでも時々どこかで目にしたCMに、こんなのがありました。


芸能人は、歯が命


なのだそうです。確か、歯磨き粉のCMだったっけ。それをもじって、ある毒舌で有名な英語の先生が、著作でこんなことを言っていました。


受験生は、スピードが命。


 さらにその先生、こんなことも言っていました。


馬鹿は治りませんが、のろまは治ります。


 実際、作業速度を速めただけでも、成績はある程度上がるのだそうです。

 この先生とほぼ同世代で一世を風靡したあの金ぴか先生こと佐藤忠司氏も、著作の中で「スポーツはスピードが肝心である」とおっしゃっていました。


 ひるがえってこちら、自己出版のお話に。

 私は正味3カ月未満の期間で紙の書籍を10冊も制作し販売に至りましたが、これこそまさに、スピードが命を地で言った結果と言えましょう。

 それだけのスピードで同じ作業を繰り返せば、いやでも覚えます。

 それだけでなく、個々の仕事過程におけるコツというか勘所、あるいは取引先となるパブファンさんに限らず、アマゾンさんや楽天さんの対処の傾向とか対策、そういったものが肌身でわかるようになり、それに対する対応策のノウハウも一気に蓄積されていきます。

 これが1冊をじっくり丁寧にと言えば聞こえはいいが、実態はと言えばとろとろのらくらとやっていては決して身につくことはありません。

 

 今述べたことは私自身の側のことですが、相手となる自己出版サポート会社さんの方はどうかというと、書籍として出版していく上で必要な事項については、わずか数分のうちにメールで返答が来ます。


 社に持帰って、車内で協議検討して、いついつにはご返答します。

 そんな眠たいことをホザいておっては、仕事にならんのです。


 実際、書籍データを登録するに至る段になっては、1時間、いや、30分もしないうちに出来上がります(当方の事情で中断せざるを得ない事案が発生したような場合は除きます)。

 そりゃあ、価格をいくらにするとか、セールス文をどうするかとか、そういうことはありますけれども、それだって、慣れればすぐにさっさと決めていけます。なんかこんな言い方をすると、法定の除外自由のないままであやしい薬を服用(?)するような感じがしなくもないですな(苦笑)。

 冗談はさておき、そんなことはパソコンで作業しながらやるようなことではなくして、予めやっておけばそう時間のかかることじゃない。

 セールス文についてはあらかじめ用意しておけばなお重畳でそれに越したことはないが、これとて、慣れればその場ですぐにだって書けますから問題ありません。


 さて、価格設定について。

 こちらは、ただただデータを送りさえすればいい、ま、正確には利用者がダウンロードすればいいだけの電子書籍についてはともかく、POD出版の場合は紙への印刷と発送が絡みますから、それだけ注意事項も増えます。

 まず、印刷と発送に絡む諸費用は出版を統括する側としては大いに検討しなければならない。無駄な冊数を刷って無駄な在庫を抱えている暇も場所もないわけですから、そこは元締側としても大いに考えております。

 要は、こちらが損しないように対策が確実に寝られたシステムなのです。

 それは同時に、先方にも無駄な金や手間暇をかけさせないことを最大限まで追及されたシステムであることも意味しているのです。

 利用者である著者もしくは出版社が赤字をかぶるようなシステムは、一切採用できないということになりますわな。

 というわけで、パブファンさんのサイトにはシミュレートできるソフトが埋め込まれています。

 頁数とそのうちのカラー頁の数を入力し、さらに自分の希望する売値を入力してみる。諸般の事情でこちらは税抜での表示になっています。消費税絡みの話はかれこれありますが、ここはそういうことを論ずる場ではないので省きます。

 とにかく、ここでのポイントは、著者もしくは出版する側の利益が書籍1冊の定価に対してどれだけになるかが重要なファクターとなります。

 無論ここは人それぞれの方針があっていいところですので、他の方の価値観や営業方針に物言いをつける気は一切ありません。ただ私の場合はこうしているということはありますので、それをこれから申し上げましょう。


 私の定価設定の基準としましては、著者でもある私自身の利益が書籍定価の2割程度を基準としております。最大でも25%までが目安です。

 これは、情報量として高めの設定にしようという性質の本が今のところないからそうしているという側面もあります。

 さらに、将来的には他人様の書籍の編集・出版にも業務としてかかわっていこうという計画もありますので、その場合は売上の最大10%は頂くようにしようと考えておるところです。

 その場合、先方の利益は最低でも10%を超えるように設定します(特殊な状況についてはこの限りでない)。

 商業出版における印税というのはおおむねそのくらいという話をよく昔から聞いていたというのもあってのことですけどね。もっとも今では、それより低いパーセンテージの出版契約もあります。私個人の出版書籍の印税の詳細についてはここで述べるわけには参りませんが、それほど高くはないということだけ申し上げておくに留めます。


 考えてみれば、例えば私を通して自己出版をされたとしても、出版社経由で何カ月もかかって本を編集してようやく売出し、さらに何カ月も経ってようやく印税が振込まれるなんてことになるよりも、早く確実に、通常の商業出版の売れている作者より高い割合の「印税(「もどき」という御指摘もあるが、確かに、自作を確認のために買えばある意味「キックバック」になるだろうが、厳密には「印税」とは言えない。しかし、他者が自分の伺い知らぬところで買ってくれれば、それはもはや「印税」と胸を張って言ってもいいのではないか。自分で買って定価で人に売っても同じこと。その分も「印税」とみなすことができよう)に相当する金が入ってくるのですから、まんざら悪い話ではないでしょう。

 ちなみにこちらパブファンセルフさんでは、毎月末に〆て翌月10日頃までに先月の売上が確定され、それから2カ月後の10日に支払われるとのこと。おおむね3か月のスパンで入金が期待できるシステムです。

 しかも共著などの場合、それぞれに取り分が配分されるシステムも出来上がっていますから、なお重畳。無論、さほどの高額でなければ、編集者である私にいったん振込んで頂いた上でこちらから先方にお渡しするという手法も出来ますね。その方が振込手数料の負担が減りますがな。手渡しを介せばなおのこと。

 これが商業出版等の印税となれば、もっと期間が長いはずです。

 その点においてもスピード感のある、そして現実に業務速度の速さと正確さが大いに担保されたシステムであるといえます。


拙速は功遅に勝る(せっそくはこうちにまさる)


 こういう格言があります。

 これは孫氏の兵法からきたものだという主張をされる方もいらっしゃるようですが、実際孫氏の兵法にはそのようには書かれていないようです。

 では誰が、ということになりますが、実際は南宋のある人物が科挙の試験対策においてこのような姿勢で文章を書くべきであると述べたものらしい。

 しかし出処がどこであれ、自己出版の世界においては基軸となるべき、否、既にそのコンセプトでもって出来上がっているシステムであると言えるでしょう。


 

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