彼氏?②
「もしかして今も嬉しそう?」
ソワソワたした気持ちで聞いたら「うん」っていうまさかの返事。
私、自分の気持ちもやっぱり分からない。
和博とこの先も一緒にいるべきか迷っている私の思い自体、実は偽物なのかも知れない。
もう一人の私は彼のことが大好きで、彼が言ったあれこれにキュンキュンできる乙女なのかも?
優柔不断の虫がまたふつふつと湧いてきて、私は小さく溜め息を落とした。
「
ずっと立ち止まったままもおかしいなと思って不意に歩き始めたら、和博も何でもないみたいに私の横を歩き始める。
「5分。そりゃあまた美代子には難題だ」
クスッと笑われて、「それ」と答えてから、私はまたさっきみたいに小さく溜め息を落とした。
***
エアコンをきかせた和博の家で、2人で作った夕飯を一緒に食べてから、シャワーを浴びて抱き合う。
「ピアス、ちゃんとよけた?」
和博が気にしているのは、
付き合い始めてすぐの誕生日に彼が私にプレゼントしてくれたものだ。
珍しく私も気に入って、無意識にずっとこればかり身につけている。
和博はそれが嬉しいみたいで、一度つけたままことに及んで片方なくしてしまった時なんか、私より必死になって探してくれた。
「大丈夫。そこの小皿に」
「おいで?」
彼のことを好きかどうか分からないと言いながら、求められればこんな風に恋人同士の営みを拒まない私は、やっぱり優柔不断でダメな女だ。
***
ラテックス越し、和博の熱い欲望が弾けたのを感じて、私は余韻に浸る間も惜しむようにノロノロと身体を起こした。
「……もう帰るの?」
汗ばんだ肌を密着させるように抱きしめられて、
「うん、明日も仕事だし」
そう答えてから、ベッド下に無造作に脱ぎ捨てられたままの服を掻き寄せて身体を隠すように持ってから、ベッドを抜け出す。
「泊まっていけばいいのに」
和博がそう言ったのを聞こえないふりをして、「シャワー借りるね」と気怠い身体を引きずるように寝室を後にした。
和博を好きかどうか分からない私でも、彼と身体の相性がいいことは分かる。
いつもいつも高みに登らされた身体は、私の意思に反してとても重くて、気合を入れないと「帰る」という意思を折られそうになる。
まだ結論が出ていないのだからダメ――。
どこかなし崩し的にこの関係を始めてしまってから5年。
私を好きだと言ってくれた和博と、恋人ごっこのような関係をずっと続けてきたけれど、自分の中で結論が出せるまでは外泊だけはしないの。
それだけは、珍しく自分の中で明確に答えが出せている。
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