第3話

『いい覚悟であった少年

もし生きていたらまた会おう』

とハンターの男は吸血鬼に近づき

『では狩るとするか…悪く思うなよ吸血鬼』

と話すと同時に銀のナイフが

吸血鬼の心臓を貫こうとしたその時

吸血鬼ハンターの腕は飛んでいた。


『え?…う、腕…お、俺の腕がー!』

とハンターが膝をつくと同時に

『うむ、そっちで寝ている

少年の血より酷い匂いがする。

こんな私利私欲に塗れた血など

飲む気にもならんわ』

と倒れていたはずの吸血鬼は

話しながら立ち上がり

『それでお主私を殺そうとしてたのか?』

と威圧するように質問する。


吸血鬼ハンターは怯えた様子で

『い、いや…そんなことするわけ

無いじゃないですか!』

と声を震わせながら返答する。


しかし吸血鬼は

『うむ…嘘をつくか…』と

殺気を帯びた目で威圧する。


『ひっ!』


『お主たちの会話を聞いていないとでも思っていたか?』

『私の睡眠を妨げた罪は重いぞ』

と話し近くに倒れている少年を見ながら

『だが…まぁ…よい。

今宵は気分がいいから選択肢をやろう』

と吸血鬼は既に戦意のないハンターに

選択肢を与えた。


『今すぐ殺されるか、

ハンターなんてやめて真っ当に生きるか』

『さぁ選べ』

再度、殺気を帯びた目で威圧する。

『は、ハンターをやめて真っ当に生きます!』

とハンターは即答した。

『そうか…ならば、

今すぐそのちぎれた右腕と共に今すぐ消えろ。

病院に行けばすぐにくっ付くだろ』

と吸血鬼が話すと

男は自分の右腕を抱え、

一目散に立ち去ろうとしたが、

『なんていうとでも思ったのか?

私がそんな甘いわけ無いだろう』

次の瞬間、ハンターの男の首は宙を待っていた。


グ〜と吸血鬼の腹の虫が鳴って

『さて、腹が減ったな…』と言葉をこぼす。


『それにしてもこの少年…

私が吸血鬼であっても逃げずに守るとはな…

よっぽどのお人好しかアホなのじゃな…

ん?なんじゃこれは?』

吸血鬼は少年の近くに落ちていた袋の中を

確認してトマトジュースとチョコレートを見つけ

『これは血か?』

となんとも的外れな物と勘違いしていた。


しかし吸血鬼は空腹に負け

『まーなんでも良い!すまぬが貰うぞ。』

とトマトジュースとチョコレートを

食すことにした。

『なんじゃこれは!不味すぎる…

このチョコレート?とやら

血を固めたやつではないのか?不味すぎる!

人間はよくこのような物を食えるな…』

チョコレートは口に合わなかったらしく

一口食べて残してしまった。


『口直しに血じゃー!』

と高々とトマトジュースを持ち上げ

そのキャップを開けると

『にしても変わった匂いがするの〜

まさか腐ってないよな?』

と少し疑問に思うが一口飲む

『ゴク…』

ブゥーーー!と勢いよく

トマトジュースを吐き出してしまった。


『な、なんじゃ!この血は腐っているって

レベルではないぞ!』

と人生初のチョコレートとトマトジュースは

その吸血鬼にとって1番嫌いな

飲み物、食べ物となってしまった。


『こんなのでは腹の足しにもならぬな』

と近くに倒れている少年が目に入り

『仕方あるまい…生きるためじゃ…

この少年の血を分けてもらうか…』


『流石に先ほどのようなものを

食べている者じゃ…』

『少し味血を…』

ペロ…

その瞬間、吸血鬼は今まで食したことのないほど美味いものを口にした感覚になった。


『な、ななななななんて美味な血じゃー!

これは是非とも毎日飲みたい!』

と大興奮して少年から流れ出ている血を

全て舐めとった。


『しかし毎日となるとずっと

この少年といるようにせねばな…』

と方法を考えていると一つの方法に行き着いた


『その方法は…よし!眷属にしてしまおう!

あの出血じゃこのまま死んでしまう、

そうなっては元も子もないしの』

と指を少し切り近くの少年に血を与え

自分の眷属とした。


『そして私の血を飲ませて、

お主は誇り高き吸血鬼の仲間入りをして

私の眷属となったのでしたー!』

となんとも嬉しそうに

語り切ったと言わんばかりに

一息ついているそばで

その話を聞いていた俺は怒っていた。


そうして俺は笑いながら

『そうかそうか!

お前は俺の血が飲みたい

その為だけに眷属にしたのか?』

と質問すると

『そうじゃ!そうじゃ!

お主の血は誰にも渡さん!』

と嬉しそうに肯定した。


『それで血を飲むためなら

眷属に、吸血鬼にする必要あったか?』

と威圧しながら質問すると


『あっ…』と何かを理解したのか

ラミアは固まったまま何も話さなくなった。

そして俺は

『確か吸血鬼って日差しに弱いんだよなー

ちょっと散歩に行かないか?』

と提案した。


ラミアは『な、なにを言っておる?』

と怯えている様子だった。


俺は表情を変えずに笑いながら

『なにって朝の散歩だよー日課なんだー』

と返してラミアの腕を引っ張る。


『お、お主自分でも言っているであろう!

吸血鬼は日差しに弱いんじゃ!』


『だからだよ〜』と皮肉混じりに

『血しか飲めなくて夜しか出歩けない人生なんて

死んだ方がマシだな!何が楽しいのか是非とも

教えて欲しいものだね!』

と話すとラミアは先程とは雰囲気が

変わりとある説明を始めた。


『ふむ…お主は吸血鬼へ間違った

認識をしておるな。

まず吸血鬼は一応日中でも行動はできる

日光に当てられても死にはしない

ただ、夜の方が力が出せるってだけの話じゃ

多分社会的に普通におるぞ?』

『え?!いるの?』

と驚いているとさらにラミアは語る。

『そして血しか飲めないのではない

血が1番効率良く栄養を

摂取しやすい体質なだけじゃ』

と俺が話した吸血鬼に対する

デメリットを否定した。

『だからあまり気にする必要は無い』

と言い、ついでと言わんばかりに

さらにラミアは教えてくれた。


『ただ普通の人間と違うとすれば…

老いない、傷がすぐに塞がる、

身体能力が高い、

銀の武器で頭か心臓を潰されん限り

実質不老不死じゃ』

『流石に情報量が多いが、

生活する分には支障はない…

と言うことは不老不死である事、

銀の武器で頭、心臓を潰されなければ

デメリットはないってことか』

と話すと

ラミアは

『理解が早くて助かるが、

不老不死がデメリットとは

珍しい考えをするのじゃな?』

と不思議そうに尋ねた。


その質問に俺は

『不老不死ってつまり死なないってことだろ?

それは終わりが無いってことだ。

何者にも終わりが来る。

だから精一杯生きよう、

楽しもうってならないか?』と答えた。

するとラミアは

『なるほど一理ある…

しかし、時間が経てばそんな事は

気にならなくなる私がそうだったように』

と少し寂しい顔をしながら話した。


『それってどう言う…』と聞こうとした瞬間

遮るようにラミアは

『そんなことより散歩じゃったな

では行くとしよう。』と俺腕を引っ張るのであった。

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