第5回
大変なことになった。
スマホの容量がいっぱいになった。
いや、本質はそこではない。「なぜいっぱいになったか」だ。
子供の頃、「ちびまる子ちゃん」に出てくるたまちゃんのお父さんが、我が子かわいさにカメラで娘を撮りまくる回を見て「なんだアレ」と思ったことがある。あれから数十年が経ち、僕は今「なんだアレ」になった。
姪が生まれたのだ。
僕のスマホの容量はあっという間にかわいいかわいい愛しの姪っ子ちゃんの写真と動画で埋め尽くされてしまった。一日百回以上「かわいい」と口に出してデレデレする私を見て、家族親戚一同は口を揃えて言った。
「こうなると思った」
なんと奇遇な。僕もそう思っていた。
しかし実際に生まれてみると、思っていたのとは違うこともあった。
※ ※ ※
生まれたばかりの姪っ子は座布団の上に全身がすっぽり収まるくらいに小さくて、一日の半分くらいは天使のような顔でスヤスヤとかわいい寝息を立てて眠っていた。小さな手のひらに指を触れると、ギュッと握り返す。本当にかわいくてたまらない。あまり大泣きしないおとなしい子で、私はミルクを上げながら、ただただそのかわいらしさを眺めてデレデレしていた。
が、そんな時期はあっという間に過ぎ去っていき、すぐにハイハイを覚え、つかまり立ちを覚え、ついにヨチヨチ歩きを始めるともう大変。一歳児が持つ無限の体力であっちをウロウロ、こっちをウロウロ。変なものを口に入れないか、危ないものに触ろうとしていないか、とにかく一秒たりとも目が離せない。育休なんて言葉は大嘘だ。これは育戦争だ。もちろんかわいいのでデレデレはする。するけれど、それは安全の確保に一切の気を抜かないうえでのデレデレだ。
しかし、そんな大変な思いをしてでも姪っ子をかわいがりたいのだ。だって、これからお喋りをはじめて、友達と遊ぶようになって、オシャレをして出かけるようになったら、きっともうおじさんなんかとは遊んでくれなくなるだろうから。なら、せめてその時までできるだけ長く姪っ子のお世話をしたい。……ということを口にすると親戚一同からはこう言われる。「いや、お世話してもらってるのはアンタの方でしょ」と。その通りです。
ちなみに、あれだけ「子どもなんてかわいくない!」と言い張っていた姪っ子のパパこと僕の弟は、今ではすっかり娘にデレデレして毎日「かわいい」を連呼している。やはりキミにも我が一族の血が流れていたのだよ、わっはっは。
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