第4回

 ポチポチと、今日も「いいね」をタップする。


 私のSNSの「いいね」欄は、主にフォロワーのご家族のワンちゃん猫ちゃんうさぎさんの写真で埋まっている。タイムラインに皆様のかわいい写真が流れてくると、ほとんど条件反射的に「いいね」を押してしまっている。通知がうるさかったらごめんなさい。


 動物は本当にかわいらしい。特に柴犬やアメショーのふわふわした毛並みを見ると胸がキュンとなる。しかしながら、僕自身は一度もペットを飼ったことがない。いずれ必ずやってくるお別れが怖いからだ。想像するだけで耐えられない。……いや待て。年齢を考えれば、もしかしたら僕の方が先にこの世からいなくなってしまう可能性もある。そうすると、今度は残された子のことが心配で飼えなくなってしまう。独り身でごめんなさい。


※ ※ ※


 子供の頃、一度うちでもペットを飼おうかという話が持ち上がったことがある。しかし家族会議の結果、「お別れがつらすぎて絶対に耐えられない」と今と同じ理由で全会一致で否決され、よその子を眺めて我慢しましょうということになった。


 その方針は今でも変わらず、私は時々ペットショップを訪れてかわいらしいワンちゃんたちを眺めて癒やされている。


 この時、あまりショーウィンドウに近づきすぎないように注意をしている。そもそも客ではないのだから店員さんの手を煩わせたくないというのもあるが、客だと認識されると「抱っこターゲット」になってしまうからだ。「抱っこターゲット」とは私の作った造語だ。長時間ショーウィンドウを眺めていると、店員さんがやってきて、中から小さな仔犬たちを取り出し、客に抱っこさせるのだ。ガチ恋距離、柔らかい抱き心地、生命を感じる鼓動、これをされるともうダメだ。連れて帰らない自分に罪悪感を覚えてしまう。たとえ連れて帰らなかったとしても、次に訪れた時にその子が売れ残っているのを見るのが辛い。だから私は一定の距離を置いて、愛着が湧かないよう遠くからかわいいなぁと眺めるだけなのだ。


 ところで、毎日SNSにアップしていただいている皆様のかわいらしいワンちゃん猫ちゃんうさぎさんたち。何度も「いいね」をタップするうちにすっかり愛着が湧いてしまっているのですが、どうしてくれるんですか。


 フォロワーもそのご家族も、いつまでもみな元気であれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る