第22話 UMAと雑談配信

「レムちゃんすごーい! なんかもう、お城の宝物庫って感じ」

「シッカリ守ッテオリマス」


 次の日、家に帰ってしばらくのこと。宿題や普段のルーティーンを終えた後、琴葉は小屋の地下に作られた部屋へと足を運んだ。そこはレムスの部屋兼、今まで琴葉が手に入れた宝をしまう倉庫となっている。


 海原家から許可を得て、レムスは地下室を大幅に増築した。更に地下にも部屋を作っているが、いずれも白く清潔感あふれる内装で、赤い絨毯やさまざまなインテリアも置かれている。


 宝箱は既に百や二百ではきかないが、部屋は半分も埋まっていない。もし今後宝箱が増え続けて埋まってきた場合、新たな増築をすることもレムスは考えている。


 出されたお茶を飲みながら、琴葉は棚に並べられた宝箱に瞳を輝かせていた。


「素敵! ねえねえ、今日はここで雑談しようと思うけどいい?」

「承知シマシタ。問題アリマセン、デハ準備シマス」

「ありがと! はああ、やっぱり緊張しちゃう」


 以前視聴者に宝箱の中身を見たいというリクエストをされたので、今回はそれに答えるつもりだった。相変わらず緊張が拭えない主の為、レムスは配信の準備をしながらテレビのリモコンを渡した。


「シバラク、テレビヲツケマスカ」

「あ、そ、そうだね」


 まだスタートには時間がある。琴葉は部屋の中に置かれたテレビをつけてみた。すると、今の時間はバラエティ番組をやっていたようだ。


『怪奇! 都内のダンジョンにUMA魔人デーモンが出現した!?』


 ナレーションと共に、都内で発生した事件の映像が流れる。人間のようで何か不気味な、得体の知れない生物がカメラに映っていたというニュースだ。


 死傷者も数名いたという地下鉄での事件だが、あれは人間の仕業ではなく、兼ねてから噂されていたUMA【魔人】ではないかという、取材と考察をメインとしたテレビ番組であった。


 得体の知れないその怪物は、常識では到底考えられない身体能力と、多くの人間を洗脳する恐ろしい魔法を操るのだという。


 しかしながら、調査の結果掴んだ事実は何もなく、全てが空想の域をでない内容でしかなかった。


「ねえねえレムちゃん、なんか怖そうな話してるよ。魔人デーモンって本当にいるのかなぁ」

「イマス」

「え? そうなの!?」

「ハイ。間違イアリマセン。ソシテ、私ノスグ近クニイマス」

「え!? どこ、どこ!?」


 若干パニック状態になった琴葉は、周囲をキョロキョロとしてみたが、当然ながら何も見当たらない。


「ソレハ人外ノ身体能力ト魔力、ソレカラ異常過ギルマデノ食欲ノ持チ主デス。ドンナ食物モアットイウ間ニ無限ニ吸収シ、膨張ガ止マラナイ怪物デ」

「ね、ねえレムちゃん。もしかしてあたしのこと言ってる?」

「エエ、ソノUMAハ私ノ目前デ、今日モ山ノヨウナプリンヲ食イ潰シ」

「ひどーい! 遠回しに太ったって言いたいんでしょ!」

「魔人ハ冗談デス。UMAノ噂ト非常ニ似テマスガ、冗談デス」

「レ、レムちゃん!? 太った発言は否定しないの?」

「配信十秒前デス」

「レムちゃん!?」

「ゴ安心ヲ、太ッテマセン。デハ開始シマス」


 慌てていた彼女だったが、最後の一言でホッとして、同時に緊張も抜けてきた。リラックスすることに成功し、雑談配信が始まった。


 テーブルの上に置かれたパソコンに笑顔を向け、まずは挨拶だ。


「こんばんはー! ヒメノンチャンネルです。ええっと、今日はですね」


:ばんはー!

:姫さまー

:今日もかわいい

:おお!? この部屋は?

:お城の宝物庫ですか

:めっちゃ宝箱がある

:棚にぎっしりww

:こんばんわ

:姫さま、配信ありがとうございます

:今日は雑談ですか姫さま

:うおおおおおお

:きたー!

:普通の部屋じゃなくて草


(や、やっぱり今日も凄いよー! で、でも頑張らないと)


 先日の失敗でショックを受けていた琴葉だったが、雑談配信はミスらずやっていきたい。新たな気持ちと共に、やはり表示された同接八万という数字にビビりつつも話を続ける。同接数は、前回の雑談と比較すると二倍に膨れ上がっていた。


「は、は、はい! 今日は雑談配信になります。あと、えーと、宝箱の中身を皆さんにお見せして、それから最後に告知とかもしちゃったり、いろいろしたいと思います!」


 隣にいたレムスは一度席を離れると、宝箱を持って戻ってきた。まどかを救出したダンジョンで拾った未開封の一個と、先日青海ダンジョンで手に入れた二個、合計三個を視聴者達と一緒に見ていくことになる。


「どの子も可愛いですよねー。ふふふ」


 琴葉は宝箱を間近で見るなり、まるで子猫と接しているかのように楽しい気持ちになった。ひとしきり宝箱達を優しく撫でた後、最初の一つである青色の宝箱をテーブルに乗せる。


:姫さま、幸せそう

:姫ちゃんがかわいい

:やばい

:私は宝箱になりたい

:すげーワクワクする!

:何が入ってんのかなぁ

:大体宝箱って価値高いのしかないからな

:うひょー楽しみ!

:さあ姫、開けてください

:俺も宝箱になりたい!

:これは楽しみ


(ま、またかわいいとか言われちゃった)


 琴葉は改めてチャット上で自分を褒めてくれる言葉に照れてしまい、少しの間固まった。頬がうっすらと桃色に染まってしまい、配信に映るのがさらに恥ずかしくなってくる。


(が、頑張らないと!)


 しかし、ここで止まってしまってはいけないはずだ。そう思い琴葉は決意を固め、一つ目の宝箱を開けにかかった。


「で、では開けていきたいと思いますっ。まず一箱目は——」


ーーーーーーーーーーーー

【作者より】

みなさんこんにちは!

本日は夜19時頃、もう一度更新したいと思います^ ^

いつもお読みいただき、ありがとうございますー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る