第6話 その行為に意味はあるか?
一方、その頃――
オレゴンはドワーフ王国の王様や近衛兵に提出するレポートを書きだしていた。
少なくともログの手伝いで研究成果を捻りだすことに成功した彼は疑問に思う。
“あの少年は何故こちらに接して来たのかを”
普通ならドラゴンを見たら一目散に逃げだすのが普通の人だ。
なのにあえて近づいてきた、それも自分自身のことを調べに来たとは考えもしなかった。鉱石の研究で酸にも負けない防具の製作と打ち破る為の武器が必要なため新たな鉱石の配分を発見することが彼の目標として死ぬまで1人で進めようとした時にログが現れた。
「アイツ、自分には文章で何かを纏めることしか出来ないと言っていたが、ドラゴン相手によくも立ち向かえる勇気があると――」
勇気…
みんな誰しもが持っている感情の1つ。
何かをする、新しいことに挑戦する時に引き出されるが、なかなか難しいことに肝心な時に出てこない。それでも魔物も人間もこの勇気に何度助けられたか、勇気づけられたのか。孤独との戦いをオレゴンは覚悟していた。
彼が来てからお互いに良い物を作ろうと友達が出来たことにオレゴンはプレゼンテーションの準備をしながらも微笑む。粗方終わったので幕を捲り袖口から外の様子を見に来ると既に王様と近衛兵、鍛冶職人のドワーフ達も席に付いていたがログの姿が見えない。
「エルグランドの王都内に居るからそのうち会えるか…」
ケンタウロスの警備部隊、青銅蹄鉄の一員に半ば強制で連れて来られたのは王都の入口から近い場所に設営されたキャンプというより警備拠点へと連行されたログ。
「あの…発表会の会場こっちなのにどうして連れて来る必要性があるんですか?」
「連れて来る必要があるからここに来たんだ。どうしてお前は魔物たちを記録している?」
どうしてと言われても単純な話。
やることがこれしか浮かばないからだ。
魔物たちの生活を記録に残すやつなど早々居ない、命の危険があるのかもしれないのにとケンタウロスの質問攻めに対しても知りたい、このエルグランドにある辞書に載っていないことを誰かに見せてみたいと感じたから記録を取っている訳だと話し終えると彼は僕を嘲笑う。
「人間であるお前が?なら逆に聞くがそんなものをして将来役立つのか答えてみよ」
“何の役に立つのか”
その問いに対して答えが見つからない。
そんなこと考えてもいなかった――
けれどもオレゴンの一件で魔物と恐れられている彼らは人間社会に溶け込めるように、他の種族と共闘する関係に至るように様々な動機が挙げられて事実強力な勢力となっている。引き換え、僕は文章で何かを纏めることしかできない僕がこれを進めて誰かの役に立つのだろうとケンタウロスの彼に言われるまでは考えもしなかった。
「僕はこの特技を自分のモノにしたいんです。それがあなたにとっては価値のないことかもしれません、誰かの生活や何かに没頭している魔物をこの目で確かめたいんです!」
「ほう。それはお前1人の力で出来る物なのか?」
「確かに僕1人での力では限界があります、連れ帰ったのも何かの縁だと思うので協力しませんか?ケンタウロスを良く知れば…」
「断る!!貴様なんぞに記録を付けてもらうなど思いあがるな人間めッ!」
周りにいるケンタウロス達も人間に威圧感を与える彼の姿を誇りに思う。
ログに味方する者は居ない。ケンタウロスの群衆を掻き分けて向こうから近づいてくる種族が現れる。その姿を見るや驚愕とどよめく声がキャンプ内に響き渡る。
「あんまり遅いんでどうしたと思えば、こんなことになっているとはな」
「お、お前は…」
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