第4話 ドワーフ王国との約束

 ドワーフ達がデルソーレ鉱山を中心に栄えていた時の話で、鉱山の最深部まで掘り進めていくと、刺激されたのか這い出てきたのは巨大なミルワーム。巨大なミミズで鉱石を食べては自らの皮膚を鉱物に削られないように外皮に鉱物油までもが分泌されて勇敢にも立ち上がるも手出しが出来ずに胴をくり貫かれ数人の犠牲者で村は血に染め上げられ廃鉱となったよう。






 騒動が起きたのは今から50年前の話で、当時の装備では太刀打ちできないほど強度も攻撃力も中の上レベルであるがそれでも倒すことが出来なかった彼らは仕方なく撤収を余儀なくされる。ドワーフも自分たちよりも強い者など居ないほど鉱石を利用して砲台や火炎放射器などを生成するほどの軍事力で圧倒してきたが同じように鉱石を利用されるとは彼らも思っていなかったようで。






「同窓会って言ってもドワーフ王国の王様と近衛兵が見に来るだけで、それほどない研究成果を見せびらかすだけなんだがな」


「サラッと凄いこと言わなかったか?王国の王様が見に来るって謁見するってことだけど、そんな情報どこにも張り出されていなかったぞ!」 




「阿保だな、張り出されてみろ?あっという間に敵に情報が知れて手の内がバレるだろうが。それほど彼らにとって重要なんだよ」






 面倒くさい表情を見せながらも配合計画書というより、これまでやってきた成果をまとめた7割完成された成分表を見るに右下の所が空白でこれから書きだす予定なのだろうとログは驚愕した。




 魔物のことを調べ上げて紙に書きだすはずが、人型で知能も文献を広めようとする主体性を持って行動することなどエルグランドの辞書には掲載していない新事実に他にもいるのではないかと期待が膨らんでいると…






「…!ログ、走れ!!ヤツが来るぞ」


「ヤツ??」






 ドラゴンの耳は地中深く10㎞圏内に近づいてくる音さえも拾い感知できる。


 ズゴゴ…と地割れのような音が段々と大きくなるとテカテカに水晶に秘められた光で反射されたあのミルワームである。体長3mの体重300㎏越えの巨大なミミズが口を大きく開けて回転する牙を向けながらこちらに突進してきたではないか。






『俺はともかくあの人間は助けないとな…』






 オレゴンは咄嗟の判断で俺の背中に飛び移れと命令し、離さないようにギュッと力を込める。ステップ捻りを作り正面で振り向いた時に手をミルワームにかざすと体全体に炎が突然発現した。たちまち3000度の炎は鉱物油を無効化して体の内部を焼き尽くし断末魔を上げながら地中へと帰っていく。地面には大量の血が流れておりオレゴンもホッとしたのか膝をついた。






「この体もだいぶガタが効き始めてきたな…」


「どこか具合でも悪いんですか?」


「これを見ろ――」






 白衣をバッと開けると龍の鱗で覆われた体の中心に大きな焦げ跡が残っていた。


 彼が鉱石の配合計画書を書き始めたのはミルワームが鉱山に現れて廃鉱が決まった数日後のこと――






 その時俺は気が付いた時は小屋の中ですでに手当を受けていたんだ。






「お前さん、大丈夫かえ?」


「あんたらは一体?」






 デルソーレ鉱山にやってきた目的は次なる住みかを捜すためにここに来たんだが到着した数秒後にミルワームに襲われて急所の一撃である強酸臭を喰らって、龍の鱗があるのにも関わらず皮膚の奥深くまで浸み込んで心臓に近い部位が黒ずんでいる。






 オレゴンはあまりのダメージに失神。


 騒ぎを聞きつけたドワーフ達が応急手当をして現在に至る。






「派手に色づいていた緋色の鱗が台無しになるとはな…」


「龍の者よ、あの酸性攻撃に儂らでは歯が立たない。撤退準備をしている所をあんたが暴れているのを仲間から聞いてな、すぐには治せんが共闘できないかと思うとる」






 ミルワームに今の装備では手も足も出せない。


 ここで出会ったのも何かの縁だと悟る一国のドワーフと1人のドラゴンの協力関係が築かれた。






 襲撃からホームである研究室に戻ってきたオレゴンとログ。


 転送中に50年前の話を打ち明けてデルソーレ鉱山を取り戻す為なら寿命を惜しまないと覚悟のある気持ちを伝えると研究の邪魔だと言われてその日は追いだされてしまう。1人、宿屋を借りて自室に戻ると作業机を広げて紙に記す。






 ドラゴンの住みかとドワーフ王国の為に鉱石研究を進める彼らについての記事を纏め上げる。彼らの研究は明日、王都のどこかで発表されるらしい。なにせ明日はエルグランドの王都生誕祭100周年を記念とした祭があるのでログはウキウキしていた。

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